その後の熊野川
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/04/22 04:57 UTC 版)
ダム完成後、下流には電源開発によって風屋ダム・二津野ダムが建設され、支流の北山川には池原ダム・七色ダム・小森ダムが完成。更に猿谷ダム下流で熊野川に合流する旭川・瀬戸谷川には関西電力によって旭ダム・瀬戸ダムが建設され認可出力1,206,000kWの大規模揚水式発電所・奥吉野発電所が完成。熊野川水系は日本有数の電源開発地帯となった。この中で猿谷ダムは水系唯一の多目的ダムとして異彩を放つ存在である。ダム建設によって国道168号が整備され、陸の孤島であった十津川村は交通アクセスが大きく改善された。現在は更なる改良工事が進められている。 だが治水という観点では、猿谷ダムを含めて何れも洪水調節機能を有していない。紀州大水害では流域の各所に天然ダムががけ崩れによって生成され、二次災害による多くの犠牲者を生んだ。その後も台風襲来時には国道は寸断され孤立されやすい状況には変わらない。こうしたことから下流住民からは、『いらない水だけ流してくる、欲しい水は全く流してくれない』等の不満が度々聞かれたという。これは発電専用ダムが発電所に水を供給するために河川には水を流さず、そのために流量が減少することへの不満と、洪水時には一斉に放流することへの不満である。治水機能を持たないダムしかない熊野川ならではの問題であり、ダム事業に対する啓蒙の必要性が問われている。流水減少に関しては1997年(平成9年)の河川法改正で河川維持放流がダムに義務付けられ、全てのダムで維持放流が行われた事により改善が図られている。一方洪水時の放流についてはサイレンなどの警戒装置や職員による巡回が行われ、放流事故防止に努力しているが、サイレンが鳴っても川原から退避しない河川利用者が居り、要請した職員に食って掛かる事もあるという。 ダムは国道沿いにあり、一般に開放されている。ダム右岸にはダムを一望できる展望台が1986年(昭和61年)に完成している。台風による法面崩壊で一時期立入禁止となっていたが、2012年10月現在立ち入ることができる。
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