その他の水疱症
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/30 15:33 UTC 版)
先天性表皮水疱症 遺伝性疾患であり、昭和62年1月1日に難病指定された特定疾患である。遺伝形式と水疱を初発する部位によって、単純型・ヘミデスモソーム型・接合部型(致死型)・栄養障害型に分けられる。臨床症状および責任遺伝子について下に記す。単純型表皮水疱症 (ESB, epidermolysis bullosa simplex) 単純型はケラチンKRT5, KRT14やプレクチンの遺伝子変異により表皮内水疱を生じる。ケラチンの変異による同症は、KRT5/KRT14のヘテロ二量体 (KIF, keratin intermediate filament) の形成に重要なドメインに変異が入っており、ケラチン二量体が正常に形成できないことが原因であると考えられている。優性遺伝の場合と劣性遺伝の場合がある。臨床像でさらに3型に分類される。 ヘミデスモソーム型表皮水疱症 (hemidesmosomal variant of EB) ヘミデスモソーム型は主にα6/β4インテグリンの変異が原因となるが、~500kDaの大きな接着分子をコードしているプレクチン遺伝子PLEC1の変異によって発症するケースもある。ヘミデスモソーム型に属するGABEB(generalised atrophic benign EB)では、XVII型コラーゲン/180kDa Bullous pemphigoid抗体(BP180抗原に対する抗体)遺伝子COL17A1/BPAG2の変異により生じる。プレクチン遺伝子異常による同症の場合は筋ジストロフィーを、α6/β4インテグリン遺伝子異常による同症の場合は先天性幽門閉塞症を合併することが知られる。BP180遺伝子異常(ときにラミニン5遺伝子部分異常)による同症は「非致死型接合部型…」と言われる。これを接合部型に含めて称されることも多い。劣性遺伝により遺伝する。 接合部型表皮水疱症 (JEB, junctional epidermolysis bullosa) 接合部型は、表皮真皮境界部を構成するラミニン5遺伝子LAMA2, LAMB3, およびLAMC2の変異・欠損により生じ、爪や粘膜も侵されるが、萎縮は残すものの比較的稗粒腫や瘢痕を残さない。Herlitz(致死性)接合部型では、N末端付近にストップコドンが生じており、同遺伝子産物は大きく欠損してしまっている。劣性遺伝によって遺伝する。 栄養障害型表皮水疱症 (the dystrophic form of EB) 栄養障害型は遺伝形式によりさらに優性栄養障害型、劣性栄養障害型に分かれる。稗粒腫や瘢痕が残る。優性栄養障害型は係留線維形成不全により基底板下に水疱を形成する。劣性栄養障害型は、VII型コラーゲンの欠損・減少により基底板下に水疱を形成する。粘膜侵襲が強い。劣性遺伝の場合と優性遺伝の場合がある。多くは新生児期から乳幼児期にかけて発症し、症状が持続する傾向がある。 後天性表皮水疱症 緊張性水疱を形成する。基底膜部(厳密には基底板より深部の係留線維)を構成する成分であるVII型コラーゲンに対する自己抗体による自己免疫疾患と考えられている。1モル食塩水剥離皮膚を用いた蛍光抗体間接法で、基底膜部真皮側に陽性となり、水疱性類天疱瘡との鑑別点となる。アミロイドーシス、糖尿病、悪性腫瘍を伴っている場合がある。
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