がんカテーテル治療の分類
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/01/23 19:43 UTC 版)
「がんカテーテル治療」の記事における「がんカテーテル治療の分類」の解説
がんカテーテル治療は手術や放射線治療と同様の局所治療であるため、全身抗癌剤治療と比べて治療効果の及ぶ範囲が限られている反面、使用する抗癌剤の量が少ないことで副作用が少ない、治療部位の効果は全身抗癌剤治療よりも強い場合が多い、という利点がある。主に下記のように分類される。 TAE(経カテーテル的動脈塞栓術:Transcatheter Arterial Embolization) がんは動脈血流で栄養されて増大することが多い。故に栄養動脈を塞栓材料で塞き止め、がんを兵糧攻め(虚血状態)にする治療をTAEと呼ぶ。一般的にTAEの名称が使用される場合は、抗癌剤は併用されない場合が多い。ただしがんを虚血状態にすることで、悪性細胞は腫瘍の血管新生を促す増殖因子(血管内皮増殖因子)を放出し、再発の原因になりうる。そのため、TAE後の血管新生を抑制するためにTAE後に血管新生阻害剤を併用する臨床試験も一部で実施されている。また全ての腫瘍が虚血だけで弱体化するわけではないため、TAE単独での抗がん作用は限定されており、有効な治療効果が得られる場合は一部の肝細胞癌や多血性転移に限られている。 TAI(経カテーテル的動脈注入療法:Transcatheter Arterial Infusion) 抗癌剤は全身投与(経口ないし経静脈)された場合、腫瘍に届くまでに血液によって希釈される。一部の殺細胞性抗癌剤は、濃度が高いほど、腫瘍曝露時間が長い程、高い抗腫瘍効果を発揮すると言われている。TAIは、カテーテルを対象腫瘍の近傍の栄養血管に留置し、抗癌剤を濃度の高い状態で一定時間をかけて選択注入する局所化学療法の総称。抗癌剤の投与方法としては、カテーテルを体内に埋め込む(リザーバー持続動注療法)と、カテーテルを抗癌剤注入毎に体内外に入れ出しする(ワンショット動注療法)の2種類に大別される。前者は大腸癌肝転移に対する治療オプションとして一世を風靡したが、現在では全身化学療法の進歩に伴い実施される症例は減少した。後者は患者の治療拘束時間が短いことやカテーテル管理が容易であることから、現在でも進行した肝細胞癌や一部の肝転移に対して実施されている。 TACE(経カテーテル的動脈化学塞栓術:transcatheter arterial chemoembolization) 切除不能肝細胞癌に対して生存寄与が証明されて以来、標準治療の1つとなった。30年ほど前に日本で開発された同治療は、リピオドールという液体塞栓物質(油性造影剤)と、ゼラチンスポンジというサイズ不均等の1mm大ほどの再溶解性塞栓材料を抗癌剤と併用して使用されてきた。当初、リピオドールは塞栓材料だけでなく併用する抗癌剤を数時間かけて腫瘍内で放出する薬剤溶出機能があると信じられてきたが、海外の複数の基礎実験によってこれは否定された。またゼラチンスポンジはサイズの不均等の点で、がんに対する塞栓材料として問題となった。 現在、海外のTACEの主流は、ビーズ(球状塞栓物質)、それも薬剤溶出機能を持った薬剤溶出性ビーズ(Drug-delivery bead: DEB)を用いたDEB-TACEが主流となっている。日本でも2014年2月より一部の施設でこれが使用可能となり、今後切除不能肝癌の新しい治療オプションになると考えられる。
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