うきうき飛車
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/17 06:33 UTC 版)
金開きやアヒル囲いへの出だしで、初手▲2六歩から 振り飛車党の△3四歩として、以下▲2五歩△3三角▲2六飛は「浮き浮き飛車」と呼ばれる嵌め手(図3-1)。△8四歩ならば▲9六歩で△8五歩以下、金開きやアヒル囲いを目指せば構わない。また△8五歩に▲3六飛△8四飛▲3八銀から▲4八玉~▲7八金と▲7六歩~7五歩~7六飛で、ツクツクボウシ型ひねり飛車模様にする指し方もある。 一方、振り飛車党であって△3二飛とすると、すかさず▲7六歩とされる。以下△4二銀ならば角交換から▲6五角等や△4二銀にかえて△4四歩ならば▲4六飛△4二飛▲3六飛で後手3筋の歩が捕獲できる(図3-2)。 △持ち駒 なし ▲持ち駒 なし 図は▲2六飛まで図3-1 うきうきの狙い1 △持ち駒 なし ▲持ち駒 なし図は▲3六飛まで図3-2 うきうきの狙い2 振り飛車側がこの順を避けたい場合は▲2六飛の浮きに△2二飛とする。それでも▲3六飛であれば△2四歩がある。以下▲3四飛は△2五歩▲4四飛△4二銀▲4六飛△2六歩の展開である。したがって先手も▲4八銀とし、あとは△4二銀▲7八金以下、展開の一例として図4-1から図4-2のような相振り飛車に似た局面に進展することが多い。 △持ち駒 歩 ▲持ち駒 歩 図は▲8五歩まで図4-1 うきうきの進展1 △持ち駒 角歩 ▲持ち駒 角歩 図は▲8四歩まで図4-2 うきうきの進展2 △持ち駒 なし ▲持ち駒 なし図は▲3六飛まで図4-3 うきうきの狙い3 このほか△3二飛▲7六歩には△8八角成▲同銀△4四角▲2八飛と浮き飛車を回避させる順もある。△3二飛にこの順を避ける▲7八金ならば以下△6二玉▲7六歩△7二玉▲3六飛に、△4四角には▲4四同角△同歩▲2四歩に△同歩ならば▲2三角△3一飛に▲4一角成△同飛▲3二金、△2二飛とすると▲3四飛△2四歩▲2三歩△1二飛▲2四飛△3二金に▲3四角が利き、以下△7二銀▲2二歩成△同飛▲同飛成△同金▲6一角成△同銀▲4一飛△5一角▲2三歩から▲5一角成△同銀▲2二歩成を狙うなどの展開である。戻って△4四角に代えて△4四歩▲3四飛△4二銀に▲5八玉としておき、△4三銀であると▲3三飛成△同桂▲2一角△4二飛▲2二歩成で、△3二歩ならば▲1一と~▲1二角成、△5四銀ならば▲2三と△4五桂▲3三と△5二飛▲4四角と捌いていく順がある。▲5八玉に他の指し手であっても、図4-3の展開などがその一例。 これはNHKの将棋講座でも取り上げられ、講座をまとめた豊川孝弘著「パワーアップ戦法塾」(2004年、日本放送出版協会発行)にも掲載されているほか、2016年8月の講座「ハメ手」特集でも採り上げられた。豊川の同書では、図3-1から、後手が△8四歩と居飛車の場合には▲3六飛△8五歩で、先手▲3四飛であると△8六歩があるため、△8五歩以下は▲9六歩△8四飛▲9七角△6二銀▲7五角△7四飛▲6六角の順を紹介している。以下△2二銀なら▲3三角成△同銀▲8二角があるので、△6六同角▲同飛△8四飛▲2六飛△4四角▲2八飛と戻っておき、以下後手が△8六歩▲同歩△同飛ならば▲8八飛とぶつけていく順がある。 後手番であると、図5-1のように▲4八玉が先に入るので、△3二金では▲3八玉が入り、△6四飛に悠々と▲6八銀があり、△6六飛は▲同角△同角▲7七桂のあとに△4五角はない。 △持ち駒 なし ▲持ち駒 なし 図は▲4八玉まで図5-1 うきうきの狙い4 また、図6-1のように後手が▲2六飛に△4四角とする場合もあり、▲2八飛であると一手損かつ△3三角からの千日手もあり得る。したがって△4四角の場合は先手は▲5六飛とし、以下図6-2のように進むと、後手△2四同歩ならば▲4四角△同歩▲7一角△7二飛▲5三角成△同金▲同飛成△5二金に▲4三金△同金▲6三龍△8二飛▲7四歩△同歩▲7二歩が進行例。この他に▲3六飛に△3五歩なら▲2六飛△3三角▲3六歩や△3二飛▲7六歩△7二金▲3八金から金開きに構える指し方もある。 △持ち駒 なし ▲持ち駒 なし 図は△4四角まで図6-1 うきうきの変化1 △持ち駒 なし ▲持ち駒 なし 図は▲2四ふまで図6-2 うきうきの変化2 他に、図7-1のようにゴキゲン中飛車の出だしでは以下▲3四飛△5五歩▲3六飛△4二銀などで一局。図7-2は先手中飛車の例で、先手番なので△5四歩▲同歩△同飛が入る。これには後手△6二玉とし、以下▲8四飛ならば△7二玉と右玉にして▲8五飛に後手も△5六飛として▲4八玉に△5一飛▲6八銀△4二銀から△3一角~△7五銀を狙う順と、△5六飛に代えて△4二銀から△5三銀~△7四飛~△3一角~△7五銀~△8四歩と活用する順がある。 △持ち駒 なし ▲持ち駒 なし 図は△5二飛まで図7-1 中飛車対うきうき飛車1 △持ち駒 歩 ▲持ち駒 歩 図は△6二玉まで図7-2 中飛車対うきうき飛車2 将棋世界2007年9月号「イメージと読みの将棋観」では、渡辺明は同戦法を子供時代に振り飛車党相手に指していたという。またプロで指すなら振り飛車党相手しかなく、そう簡単に咎められないとしている。一方谷川浩司はこの飛車浮きは悪手であるとしている。なお、プロの実践では▲7六歩△8四歩▲2六歩△8五歩▲7七角で後手側が△8四飛とした例が1987年の順位戦A級で森雞二が青野照市に対して採用した1局など、3例あるとするが、いずれも後手が破れている。 なお、プロでは『イメージと読みの将棋観2』(2010年、日本将棋連盟)によると、△3三角に▲2五歩と早めに突いて形を決める指し方は平成以降から2010年までに313局あり、先手138勝175敗7千日手となっているが、羽生善治は先に作戦を決めすぎやる気はしない、藤井猛は相手が振り飛車党なら構わないが、ゴキゲン中飛車や横歩取りを嫌っての若干のうしろめたさなどを感じるという。さらに渡辺明は相手の作戦を狭める意味においてはこの手もあって決して損ではないけど精神的に恥ずかしく、あとで棋譜を見た人に笑われるとしている。さらに森内俊之はプロとしては長く活躍するのは難しいとしている。そして藤井や渡辺、谷川浩司らは▲7六歩に△2二銀の角換わりに移行すると突き越しが損であるとしている。こうしたところは佐藤康光によると、将棋観の問題であるとしている。
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