『資本論』の中の共産主義論
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「資本論」の記事における「『資本論』の中の共産主義論」の解説
『資本論』は、資本主義的生産様式とそれに照応する生産・交易諸関係を研究した著作であり、共産主義の未来モデルを描いた著作ではない。ただし、マルクスは資本主義の諸特徴を、資本主義以前の生産様式(封建制、奴隷制など)の場合や、未来の協同社会(共産主義社会)の場合としばしば対比している。 『資本論』全3部の中で「共産主義社会」と記載されている箇所は第一部の「共産主義社会では、機械は、ブルジョワ社会とはまったく異なった躍動範囲をもつ」と第二部の「共産主義社会では社会的再生産に支障が出ないようあらかじめきちんとした計算がなされるだろう」のわずか2箇所である。マルクスは資本主義とは異なる協同的な生産様式を、「結合的生産様式」、「結合した労働の様式」、「協同的生産」、「社会化された生産」などと表現している。より詳細な規定としては、「協同的生産手段で労働し自分たちの多くの個人的労働力を自覚的に一つの社会的労働力として支出する自由な人々の連合体」(第1部第1編)、「労働者たちが自分自身の計算で労働する社会」(第3部第1編)、「社会が意識的かつ計画的な結合体として組織」(第3部第6編)などがある。 また、『資本論』において国家は重要ではなく、「意識的計画的管理」(第1部)「意識的な社会的管理および規制」(第3部)といった形で市場の「無政府性」を理性によって規制するという一般論が述べられているだけである。 マルクスは『資本論』第3部で、「自由の国」(自由の王国とも)と「必然の国」の問題に触れ、共産主義革命の目的を述べている。すなわち、経済が資本主義=剰余価値(もうけ)の追求から解放され、社会の合理的な規制の下に服して社会の必要に対する生産という経済本来のあり方を回復するが、それでも生産は人間が生活していく上で必要な富をつくりだすための拘束的な労働(必然の国)が要る。しかし、この時間は時間短縮によって次第に短くなり、余暇時間(自由の国)が拡大する。『資本論』第3部では、この時間の拡大によって人間の全面発達がおこなわれ、人間が解放されるとマルクスは主張した。
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