『カーテン』への批判
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/05/08 15:37 UTC 版)
「名探偵に乾杯」の記事における「『カーテン』への批判」の解説
ポアロ・マードックにより、『カーテン』に対して以下の矛盾点(不自然な点)が指摘されている。 まず、初登場の際に、マードックは以下の3点を疑問として挙げている。 ポアロは犯人Xの性格を把握しているのに、何の対策も講じていない。灰色の脳細胞が健在であるのだから、Xに罠をかけ、逮捕させることは容易だったはず。これは、事前に明智も小林に語っている。 Xがスタイルズ荘で新たな殺人に手を染めることを予想していたにも関わらず、そんな危険な場所にウソの手紙でアーサー・ヘイスティングズを呼び寄せたのはなぜか?しかもヘイスティングズの娘であるジュディスも滞在しているが、退去を迫っていない。 Xはスタイルズ荘以前に5件の殺人を犯している。なぜポアロはXが新たな殺人を犯すまで手を下さなかったのか? これに対し、マードックは「エルキュール・ポアロは、自分(ポアロ2世)のデビューをスタイルズ荘で飾らせたかったのではないか?」と述べている(この段階で、「ポアロとマードックは国際電話で会話をしたことがある」、と説明している)。「ジュディスは、ヒロインとしてかつてのシンシアに準えていた」とも推理している。しかし、「マードックはシンシアの看病で手が離せず、また国際電話がなかなか通じない上に、Xが殺人を実行してしまう。さらには「シンシア死す」という電報が、誤ってマードックの死、と打たれてしまい、「息子を失った」という失意の中、ポアロはXを裁き、自殺した」と結んでいる。 一方で、最後には、マードックは、以下の様に疑問点を挙げ、推理を展開している。 ポアロの遺稿(探偵作家論)の見出しが修正され、頭文字をつなげると「HE WILL KILL ME(彼が私を殺すだろう)」となっている。 ポアロは想像力を尊重していた。そんな彼が『レーン最後の事件』の二番煎じのような結末を用意するのはおかしい。 はたして犯人Xは、そんなに恐ろしい相手だったか? 例えば、『ひらいたトランプ』事件のポアロの手腕からいえば、逆にXを心理的に追い詰めて自殺させることも可能だったはず。 かつてポアロは「私がもし殺人を起こしても、誰も気づかない。事件があったことすら気づかれないだろう」と述べたが、Xの最期はそれに反している。これに関連し、事件の前に明智は「ポアロは死に場所を探していた」と小林に述べている。 ヘイスティングズは、なぜ、ポアロの変装(カツラ、つけヒゲ、車椅子に乗っているが実は歩ける)を見抜けなかったのか? 「わが友(モナミ)」と呼び合う仲なのに? ヘイスティングズは、「Xが誰か、最後まで判らなかった」と述べているが、これはおかしい。ポアロからXの前歴(5つの事件)を聞かされており、ポアロはXを知っている。5つの事件に関連する人物を調べれば、消去法で簡単に判るはずであるし、詮索好きのヘイスティングズが調べないはずはない。 6.により、ヘイスティングズはXを知っていたはずである。ならば暗示にかかるはずはない(アラートンを殺しかけるはずがない)。 ヘイスティングズは、ジュディスがフランクリンを愛している、と知っていた。しかし、彼には妻がいる。彼を殺せば、激情家のジュディスは絶望して自殺するかもしれない。そこでXのしわざに見せかけ、フランクリンの妻を毒殺した(フランクリンに妻殺しの容疑がかからないように、「本当はフランクリンが狙われたが、誤って妻が死んでしまった」と説明した)。 Xに罪を被せるため、Xを自殺に見せかけて殺した。しかし、ポアロには見抜かれている。そこでポアロをX殺人犯に仕立て上げ、自殺に見せかけて殺した。『レーン最後の事件』に似てしまったのは、ポアロの発案ではなく、ヘイスティングズの考えだったからである。ポアロがヘイスティングズに殺された理由は、「ヘイスティングズには体力的に勝てないから」、「老醜を晒したくないから」、「ヘイスティングズに殺されるなら本望だから」。 「車椅子は不要」という説明は「私(ヘイスティングズ)」によるものであり、実は車椅子は必要だった。だからこそ、Xに対抗するためには「有能ではないが頑健な」ヘイスティングズが必要だった。 これに先立ち、「ワトソンはホームズにコンプレックスや陰湿な気持ちを持つのではないか?」とヘイスティングズに尋ねている。 ポアロの死にヘイスティングズが落ち込んでいるのはおかしい。この段階では、「Xは別におり、ポアロもXに殺されたのではないか?」と思っていたはずである。ならば、復讐に燃えているべきではないのか? 以上に対し、明智、クイーン、メグレは「ノーコメント」だった。
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