「進行中の心的外傷体験」
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/12 05:32 UTC 版)
「カサンドラ症候群」の記事における「「進行中の心的外傷体験」」の解説
アスペルガー症候群の夫とその妻との間に起こる葛藤の多くは、自閉症スペクトラム障害(ASD)の人が持つ、社会性の未熟さ、コミュニケーションの苦手さ、想像することの苦手さという特徴からくる葛藤だ。それは夫のコミュニケーションがうまくいかない、気持ちが伝わらない、子育ての不安や悩みなどを共有してもらえない、夫の言動に傷つくなど、妻にとっては日常的で継続的なものだ。アスペルガー症候群のパートナー、特に夫がアスペルガー症候群で妻がそうでない場合、夫との情緒的交流がうまくいかないことが、妻の無力感、孤独感、絶望感につながり、抑うつ状態を引き起こしていることが知られるようになってきた。 アスペルガー症候群によって影響を受ける成人家族の会(Families of Adults Affected by Asperger’s Syndrome:FAAAS)は、カサンドラ症候群を心的外傷状態と理解し、「進行中の心的外傷体験に関連した症候群」(Ongoing Traumatic Relationship Syndrome)と説明している。心的外傷体験というと、PTSD(心的外傷後ストレス障害)という言葉がよく知られている。災害や事故、被害といった、人生や生命に強い衝撃的な出来事に遭遇することを「外傷(トラウマ)体験」と呼び、その体験後の精神的変調を「トラウマ反応」と呼び、時にそれが精神的後遺症と呼べるほどの状態に至った場合、PTSDと診断される。カサンドラ症候群がPTSDと異なるのは、過去のトラウマ体験に今も苦しむということではなく、継続進行している日々の体験に苦しみ続けるということだ。FAAASは、このトラウマ体験が何十年にもわたり潜行する可能性を示唆している。児童精神科医、臨床心理士の田中康雄は、「進行中の心的外傷体験」は虐待され続けている子どもの心理状況と若干重なると述べ、虐待を受け続けた子どもの心の特徴がカサンドラ症候群と重なる点を次のように挙げている。 人に対して不信感、被害感を強く持ち、攻撃的になることもある。 自分を悪い人と認識(誤解)してしまいやすい。 満たされない愛情欲求に苦しみ、相手との距離が適切にとれず困っているのに、周囲に援助を求めることもできない。 素直に自己表現ができず、感情コントロールが難しい。 配偶者に現実的でない期待を抱きやすい。 「進行中の心的外傷体験」に苦しむ現状に「カサンドラ症候群」と名前をつけることで、状況の外在化をはかることは得策であるとしている。
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