「オスタルギー」の実際
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/01 05:47 UTC 版)
「オスタルギー」の記事における「「オスタルギー」の実際」の解説
オスタルギーを資本主義の否定として見る向きもあるが、これは誤りである。映画『グッバイ、レーニン!』の紹介やレビューで使われた「昔だって悪くなかったじゃないか」という種のコピーがあるが、これは日本における「古き良き時代」と同じ意味合いのものであって、情緒的・郷愁的思いを込めたものであり、決して東ドイツ体制への回帰を望んでいるものではない。 オスタルギーの由来のひとつは、統一後の短い時間に政府が性急な「東ドイツの西ドイツ化」を行ったことに対する反発である。共産主義時代を象徴するような建造物などを(資本主義体制における運用に支障があるかどうかを問わず)一気に、しかも旧西ドイツの規格品で置き換えたことによる。これは現在も続けられており、2004年には東側市民の6割が反対という状況の中、旧人民議会や少ない娯楽施設が入居していた共和国宮殿の取り壊しが決行された。 道路標識が旧西ドイツ規格に統一されたのは止むを得ないことであるが、色灯の種類が同じで、ドライバーのちょっとした心がけで併用できるはずの信号機まで、旧東ドイツ規格の物はすべて旧西ドイツ規格の物に交換するといった徹底ぶりだった。この時は東ドイツの歩行者用信号機に使用されていたアンペルマンのファンが「アンペルマンを救う会」を結成、断固とした抗議活動を行ったため、アンペルマンは全滅を免れた。その後、西ドイツ規格の信号機をベースにアンペルマン・アンペルフラウを使用した信号機も旧東ドイツ領域に姿を現した。 このアンペルマンの作者であったカールハインツ・ペグラウは、「誰も東ドイツの政治体制を恋しいなどとは思わないが、政治家の連中を見ていると、東ドイツのすべてを否定し敵視しているようで、われわれ東ドイツ人の尊厳を踏みにじっている」と発言している。旧西ドイツ・ベースの現政府を批判しつつも、それは東ドイツ体制への回帰を意味するものではない。 また、アンペルマンや建造物を性急に撤去することには、旧東ドイツ市民のみならず、旧西ドイツ出身の識者からも「貴重な文化財の喪失」として反対意見が多い。「オスタルギスト=オッシー」とは限らないのも現状である。
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