Ⅰ区の動物遺体
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/12/27 03:01 UTC 版)
Ⅰ区から出土した動物遺体はすべて哺乳類で、イヌ・ウマ・イノシシ(ブタの可能性も含まれる)・シカの4種が出土している。他の地区には見られない弥生時代の資料を含むことが特徴とされる。出土した層位は鎌倉時代の1面と、弥生時代中期後半にあたる3面であると判断されている。Ⅰ区には弥生時代後期の2面も確認されているが、この面から出土した資料は見られない。 弥生時代の資料はイノシシ3点・シカ8点、鎌倉時代はウマ・シカが各1点ずつ出土している。ウマは鎌倉時代に属すると考えられている。イヌは1点が出土しているが、時期は不明。 イノシシ・シカは弥生時代の3面から検出され、未同定種の哺乳類もいずれかに属すると考えられている。このうち、シカ大腿骨は人為的な破砕による打点と、骨髄の抽出が行われていた可能性を示すスパイラル破砕が見られる。また、イノシシ犬歯も焼けた変色が見られ、土器片や石器・木材・牙鏃などの遺物を伴なうことから、これらの動物遺体は人為的所産によるものであると考えられている。 弥生中期のシカは8点が出土しており、部位では角・頭・脊椎・前肢・後肢が確認される。資料は風化・剥落が著しいが、解体痕・加工痕は確認されていない。角が若獣と成獣の2点が存在するため、最小個体数は2体と判断されている。大師東丹保遺跡ではⅣ区からも弥生時代のシカ成獣の角が出土している。若獣の鹿角は春頃の落角で、角坐骨を伴なう成獣の鹿角は秋・冬頃の狩猟時期が想定されるが、若獣の鹿角は角のみが採取された可能性も指摘される。 シカは有用性の高い肩甲骨・大腿骨・脛骨などが出土していることから、当地において解体や消費が行われていたと考えられている。部位組成では歯が少ない点が指摘される。 Ⅰ区からはイノシシ犬歯製の牙鏃1点が出土している。無茎で、器体部下方に穿孔を有する。形状は二等辺三角形状で、長さ3センチメートル、最大幅0.9センチメートル、厚さ0.24センチメートル。 イノシシ犬歯製の牙鏃は狩猟具であり、1980年代後半までは弥生時代における類品が少なく、縄文時代に特有で縄文後期・晩期に多く見られる。1990年代に群馬県や長野県において弥生時代の類品が報告されるようになる。大師東丹保遺跡から出土した牙鏃は中部高地・関東地方に特徴的なものであり、中部・関東地方では弥生時代にも縄文後・晩期以来の狩猟伝統が持続していた日のす映画指摘される。
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