地中海 経済

地中海

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/10 01:31 UTC 版)

経済

地中海は世界で最も海上交通の盛んな地域の一つである。古代から船と港を自然の脅威から守り貿易を支えてきた。沿岸の諸都市間を結ぶ近距離航路、ジブラルタル海峡やスエズ運河、ミディ運河を通り東西を結ぶ貿易航路によって常に混雑している。

近代からは海底ケーブルが多く敷かれ、戦後はスーパーグリッドが一帯を電化させた。そこへスマートグリッドを応用したスーパースマートグリッドが今は世界的な開発市場となっている。

また、地中海沿岸は特に夏に快晴に恵まれ、冬の寒さもそれほど厳しくないため、夏は海水浴、冬は避寒を目的に、陽光の少ない北ヨーロッパ諸国を中心とした世界各国から観光客の集まる大リゾート地が数多く存在する。こうしたリゾート開発は18世紀後半に王侯貴族のものとして始まったが、鉄道や蒸気船の開発によって交通の便が著しく向上した19世紀には富裕層全般に拡大。1970年代に入ると西欧諸国の労働条件の改善やバカンス制度の導入により、一般市民にも手の届くものとなり、一大産業となった[27]

地中海は観光地やリゾート地、大都市などが点在するため、こうした街々を結び、さらに地中海に美しい風景を楽しむためのクルーズ船も多く就航している。地中海クラブと呼ばれる観光企業も存在する。

主要な島

地中海で面積の広い島の上位10島は、以下のとおりである。

面積(km2 人口
シチリア島 25,460 5,048,995
サルディニア島 23,821 1,672,804
キプロス島 9,251 1,088,503
コルシカ島 8,680 299,209
クレタ島 8,336 623,666
エウボイア島 3,655 218,000
マヨルカ島 3,640 869,067
レスボス島 1,632 90,643
ロドス島 1,400 117,007
キオス島 842 51,936

沿岸の国家と主要都市

他にイギリスの海外領土イベリア半島ジブラルタルキプロス島アクロティリおよびデケリア)が存在する。また、キプロス島北部はトルコのみが承認する北キプロス実効支配している。

地中海では各国の排他的経済水域(EEZ)が接するが、東地中海においては主張が一致せず対立が発生している。トルコ政府は、アナトリア半島沿岸に点在するギリシャ領の島々周辺や、クレタ島やキプロス島などとの中間線を越えた海域を自国のEEZを主張している。背景としては2009年以降、東地中海でガス田が発見されて開発が始まり、パイプライン敷設による輸送を含めたイスラエル、キプロス、ギリシャによる協力枠組みにトルコと北キプロスが含まれていないことがある。トルコはキプロスが主張するEEZ内で海底探査を行ったり、連携を求めて対岸にあるリビアの内戦に介入したりしている[28][29]

地中海に面する人口20万人以上の都市は、以下のとおりである。

都市
 アルバニア ドゥラス
 アルジェリア アルジェアンナバオラン
 クロアチア スプリトリエカ
 エジプト アレキサンドリアポートサイド
 フランス マルセイユニース
 ギリシャ アテネイラクリオンパトラステッサロニキ
 イスラエル アシュドッドハイファテルアビブ
 イタリア バーリカターニアジェノヴァメッシーナナポリパレルモローマターラントトリエステヴェネツィア
 レバノン ベイルートトリポリ
 リビア ベンガジホムスミスラタトリポリザーウィヤズリテン
 モロッコ テトゥアンタンジェ
 スペイン アリカンテバダロナバルセロナカルタヘナマラガパルマバレンシア
 パレスチナ ガザ
 シリア ラタキア
 チュニジア ビゼルトスファックスチュニス
 トルコ アンタルヤイスケンデルンイズミールメルスィン

注釈

  1. ^ 厳密にはもう一箇所、スエズ運河を介しても外海と接続しているが、海況に与える影響は極僅かと言える。

出典

  1. ^ Pinet, Paul R. (2008). Invitation to Oceanography. Jones & Barlett Learning. p. 220. ISBN 0763759937. https://books.google.co.jp/books?id=6TCm8Xy-sLUC&pg=PA220&lpg=PA220&redir_esc=y&hl=ja 
  2. ^ a b 世界の代表的な閉鎖性海域環境省せとうちネット」(2020年8月22日閲覧)
  3. ^ 弓削達『地中海世界 ギリシア・ローマの歴史』(講談社学術文庫)。
  4. ^ Pinet, Paul R. (1996), Invitation to Oceanography (3rd ed.), St Paul, Minnesota: West Publishing Co., p. 202, ISBN 0-314-06339-0 
  5. ^ Pinet 1996, p. 206.
  6. ^ Pinet 1996, pp. 206–207.
  7. ^ Pinet 1996, p. 207.
  8. ^ ベルテルスマン社、ミッチェル・ビーズリー社編『ビジュアルシリーズ 世界再発見1 フランス・南ヨーロッパ』(同朋舎出版、1992年5月20日第1版第1刷)p84。
  9. ^ Marseille Climate and Weather Averages, France
  10. ^ Gibraltar Climate and Weather Averages
  11. ^ Malaga Climate and Weather Averages, Costa del Sol
  12. ^ Athens Climate and Weather Averages, Greece
  13. ^ Barcelona Climate and Weather Averages, Spain
  14. ^ Iraklion Climate and Weather Averages, Crete
  15. ^ Venice Climate and Weather Averages, Venetian Riviera
  16. ^ Valencia Climate and Weather Averages, Spain
  17. ^ Valletta Climate and Weather Averages, Malta
  18. ^ Alexandria Climate and Weather Averages, Egypt
  19. ^ Naples Climate and Weather Averages, Neapolitan Riviera
  20. ^ Larnaca Climate and Weather Averages, Cyprus
  21. ^ Limassol Climate and Weather Averages, Cyprus
  22. ^ Tel Aviv Climate and Weather Averages, Israel
  23. ^ 石坂昭雄、壽永欣三郎、諸田實、山下幸夫著『商業史』(有斐閣、1980年11月20日初版第1刷)p.67。
  24. ^ 園田英弘『世界一周の誕生――グローバリズムの起源』(文春新書、 2003年)p62。
  25. ^ 加賀美雅弘『ハプスブルク帝国を旅する』(講談社現代新書、1997年6月20日)p99 
  26. ^ “地中海で「近年最悪の海難事件」、難民500人水死の恐れ”. AFPBB News. (2014年9月16日). https://www.afpbb.com/articles/-/3025947 2016年11月28日閲覧。 
  27. ^ 『地球を旅する地理の本4 西ヨーロッパ』(大月書店 1993年2月19日第1刷)p.43-44
  28. ^ 「トルコ・ギリシャ対立激化 東地中海ガス田開発」『読売新聞』朝刊2020年8月26日(国際面)
  29. ^ 佐々木伸(星槎大学大学院教授)【中東を読み解く】トルコ、リビア内戦に“私兵軍団”背景に天然ガスめぐる資源争い WEDGE Infinity(2019年12月28日)2020年8月26日閲覧
  30. ^ Limits of Oceans and Seas, 3rd edition”. International Hydrographic Organization. p. 15-18 (1953年). 2011年10月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年4月20日閲覧。






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