特殊奏法
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特殊奏法(とくしゅそうほう)とは、楽器の通常の操作法によらない演奏法のことである。ここでの通常の操作法とは、一般に楽器の設計時に想定された操作法のことである。すなわち、設計時に想定された操作法を越える音の出し方を、一般に特殊奏法と呼ぶ。
- ^ 円谷プロダクション 『ウルトラセブンイズム』辰巳出版〈タツミムック〉、2002年。ISBN 978-4886417794。
- 1 特殊奏法とは
- 2 特殊奏法の概要
- 3 非西洋楽器、その他の特殊奏法
特殊奏法 (現代奏法)
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フルートは近代音楽や現代音楽において特に特殊奏法が数多く開発された楽器であるが、これらは作曲者や奏者によりさまざまな呼称、技法、記譜法があって、未だ発展途上にある。楽器や奏者により、あるいはそのときの調子によって、狙った通りの効果が得られないこともある。 エオリアン・トーン(英:aeolian tone) ブレス・トーンともいう。発音と同時に息が歌口や歯の間から漏れる噪音を発する奏法。通常の奏法からライザー部にあてる空気の柱を極端にぼかすことにより生じる。楽音は存在するが空気の流れる音の占める割合のほうが大きい。この割合が作曲者によって細かくパーセント記号で指示されている物もある。 キー・パーカッション(英:key percussion) キー・クリック、キー・クラップとも。キーを強めに叩くことにより、打楽器的効果を狙った奏法。エドガー・ヴァレーズの『密度21.5』で初めて用いられたが、この曲に登場する奏法は、厳密にはスタッカートの通常奏法とキー・パーカッションとの併用である。 口笛(英:whistle) 歌口内に口笛を吹くことによって通常の口笛よりもフルートの管に共鳴させた音を作り出す。その際発生する音は運指の自然倍音列上の音である。口笛を吹きながらフルートの通常音を鳴らすことは不可能であるが、口笛の音+エオリアン・トーンであれば可能である。 ジェット・ホイッスル(英:jet whistle) 歌口を唇で完全に覆い、息を激しく吐き出すことにより発生した息音を使用する奏法。唇、フルートの角度を瞬時に変化させることで息音内に含まれる楽音を自然倍音列に従い上昇、下降させることができる。発生する音は運指によっても変化する。 重音奏法(英:multiphonic) 特殊な運指によりふたつ以上の音を同時に出す奏法。運指により、調性的な和音に近いものから、割れたような荒々しい音も出すことができる。R・ディックのフライング・エチュードではこの重音奏法が全体にわたり使用されている。小泉浩、P・E・アルトー、A・ニコレの著書などに重音の運指が示されている。 循環呼吸(英:circular breathing) 口腔内の空気を吐き出して演奏しながら、鼻から息を吸うことによって、息継ぎによる中断なしに発音し続ける奏法。フルートは他の管楽器に比べて空気の消費が多い楽器であり、循環呼吸をマスターすることにより音楽的な質をより高めることができるとされる。A・ニコレ、P・ガロワ、R・ディック、W・オッフェルマンズ等の著書に「循環呼吸」について解説されている。 スラップ・タンギング(ピッツィカート)(英:slap tonging、伊:pizzicato) リップ・ピッツィカート、クアジ・ピッツィカートとも。弦楽器のピッツィカートに似た音響を発する奏法。通常のタンギングの圧力を高める方法の他、いくつかの方法がある。グランド・フルートではC4(H足部管つきでB3) - D#5までは通常の運指で、さらにオクターヴキーを開ける、その他の操作をすることによりD#6まで発音可能。 ダブルタンギング(英:double tonguing) 古くからある特殊奏法。タンギングにおいてTとKの子音を用い、速い舌突きの必要とされるパッセージをTKTKTKと奏する。全ての管楽器で可能なテクニックであるが、難易度はフルートがもっとも低く、ロマン派の技巧的な変奏曲や近代の作品を演奏するのに必要不可欠である。 トリプルタンギング(英:triple tonguing)は、ダブルタンギングから派生したもので、3つ単位の音符をTKTTKTなどのように区分けする。 ダブルトリル(英:double trill) 通常は2音間を行き来するトリルを2本の指で行うことにより往復の速度が倍になったもの。左手は楽器を保持する必要がある為、右手で行われることが多い。運指によりアグレッシブな効果から不思議な音響まで出すことができる。リングキーかカバードキーかで可能なダブルトリルの種類は異なる。フルート音楽においてのダブルトリルの使用例はサルヴァトーレ・シャリーノの『感謝の歌 Canzona di ringraziamento 』に多用され、後述のタングラムの項に挙げる『魔法はどのように生み出されるか Come vengono prodotti gli incantessimi? 』と連続して演奏される。『感謝の歌』では二つのトリルキーを交互に連打することにより不思議な音響空間を生み出している。 タングラム(英:tongue ram) 唇全体で歌口を覆い、舌をライザー部に当てることにより、打撃音を生み出す。空気を吸いながら行う事も可能。これによりフルートは閉管構造として共鳴するため、運指よりも長7度低い音が出る。グランド・フルートでは運指上でC4(H足部管つきでB3) - D#5まで可能、実音ではC#3 (C3) - F4までの音が出る。サルヴァトーレ・シャリーノは『魔法はどのように生み出されるか Come vengono prodotti gli incantessimi? 』でこの奏法を積極的に用いており、太鼓の連打音のような音響を生み出している。 ドッペルトレモロ(独:Doppeltremolo) 通常のトレモロに息の圧力を加減してオクターヴの上下を加えたもの。作品内ではポルタメントや発声奏法も併用されている。 ハーモニクス(英:harmonics、倍音奏法) フラジオレット(英:flageolet)とも。低音域の運指のまま高い倍音を出す奏法。第2倍音(1オクターブ上)、第3倍音(1オクターブと完全5度上)、第4倍音(2オクターブ上)、第5倍音(2オクターブと長3度上)、第6倍音(2オクターブと完全5度上)などが出せる。まれに第7倍音(2オクターブと短7度上、平均律より6分音つまり約33セント下)も指定される。曲によって力強い音を出したり、弦楽器やハープのハーモニクスのような虚ろな音響効果を要求したりとさまざまである。フランツ・ドップラーがハンガリー田園幻想曲の第1楽章の終わりに用いている他、ハーモニクスの和音がストラヴィンスキーの春の祭典にも登場する。倍音成分の度合いを変化させることで重音を出すことも可能。 バズィング(英:buzzing) トランペット・アンブシュール(trumpet embouchure;英仏混合語)とも。歌口に対し唇を閉じた状態で押し付け金管楽器のバズィングと同じやり方で唇を振動させ音を鳴らす奏法。舌を両唇に挟むことで金管楽器でいうペダルトーンに似た効果も出せる。息の圧力や指を変えることで色々な音域が出せるが、フルートのマウスピースや管はバズィングには向いていないためスケールは安定しにくい。非常に高い圧力が必要なため唇の負担が大きいので、長時間のバズィング奏法は注意が必要である。 発声奏法(英:playing with voice) 通常演奏と同時に声を出すことにより差音がハウリングを伴い発生する奏法。フルートの一音程の通常音と同時に奏した場合に、高声と低声では発生する差音に違いが生じるため男女でこの奏法の内容は大きく異なる。フルートと違う音程を同時に歌うことにより和音が、リズムをずらすことにより二重奏が可能である。 グロウル(英:growl)は発声奏法の一つで、フルートの旋律と同じ動きで歌う奏法。ややグロテスクな音質になり、サックスやギターにも負けない音圧、音量に変化できるためジャズのアドリブなどで好んで使われる。 ビートボクシング・フルート(英:beatboxing flute) フルートウィズボイスパーカッションとも。フルートの特殊奏法とは厳密には異なるが、2007年ごろyoutube上で、アメリカのフルーティスト、G・パティロによるヒューマンビートボックス(ボイスパーカッション)をしながらフルートを演奏する動画が話題となった。フルートを構えバスドラム、スネアドラム、ハイハットのような音と同時にメロディやアドリブを演奏するというものである。 ビスビリャンド・トリル(伊:bisbiliando trillo) カラートリルとも。運指から離れた下のほうのキーを開閉することにより、同音上で微妙に異なる音色によるトリルが可能。運指によっては替え指が微分音下方になることもある。武満徹が1980年代以降の作品で多用したのはビスビリャンドに似た四分の一音下を含むホロートーントリルであり、特に『海へ(Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ)』において効果的に聞くことができる。トリスタン・ミュライユはトリルではなく非常にゆっくりとした長い音符の交替による音色の変化を好んで用いる。 フラッターツンゲ(独:Flatterzunge、巻き舌) フラッター、フラッター・タンギング(英:flutter tonguing)とも。巻き舌やうがいをするように喉を震わせることにより、トレモロ的効果を生み出す奏法。舌だと荒めに、喉ではマイルドになる。オーケストラではリヒャルト・シュトラウスが用いたのが最初とされている。ショスタコーヴィチの交響曲第8番の第4楽章の冒頭、イベールのフルート協奏曲の第3楽章カデンツァなどに使用例が見られる。遺伝的な理由によって舌でのフラッタータンギングを苦手とする奏者もいることに注意が必要である。その場合は喉で代替される。 マウスピースを唇で覆いながらフラッターをすることにより管内に響く音を造り出すという奏法も存在する。運指よりも長7度下の音が鳴り、タングラムに似た効果が巻き舌で持続する。 ホイッスル・トーン(英:whistle tone) ウィスパー・トーンとも。息を送る具合を調節することにより、高音域において倍音音列に基づく非常に虚ろな音を出す奏法。フルートの特殊奏法の中でもとりわけ音量の小さいものに分類され、大きなホールの後部座席まで十分に届くほどの音量はない。 歌口を唇で完全に塞ぎ口内の内径を変化させることによりホイッスルトーンと似た音を奏することもできる。 ホロートーン(英:hollow tone) バンブートーン(英:bamboo tone)とも。特殊な運指によって通常の奏法では出せないくぐもった音を出す奏法。ホロートーンは武満徹のフルートソロに必ずといって良いほど登場する。木管の民俗楽器に似せるため、あえてスケールや音程、音質が不安定になる運指とする。運指表はオランダの奏者W・オッフェルマンズの物がある。 むら息(英:breath noise、尺八奏法) 上記のエオリアン・トーンをより激しくし、アクセントを加えた奏法。曲によっては日本の尺八を想起させる。尺八奏法というとこのむら息と同時に激しいビブラートも組み合わせる。 上記の特殊奏法を組み合わせ、新たな音響を作り出すこともできる(例:フラッター+発声奏法、重音奏法+スラップ・タンギング)。
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特殊奏法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/05 06:23 UTC 版)
クラリネットには様々な特殊奏法があり、主にジャズや現代音楽などに用いられている。 重音奏法 同時に複数の音を出す奏法。クラリネットの場合、「きれいな音」にはならないことが多い。 フラッターツンゲ(フラッタータンギング) 巻き舌のごとく "r r r r r r" と発音する奏法。 循環呼吸 鼻から肺へ空気を吸引する間に口腔内に溜めた空気により楽器を鳴らし続ける奏法。 微分音程度のグリッサンドまたはポルタメント グリッサンドは2音間を等速に指を滑らせて移行する奏法、ポルタメントは次の音に移る瞬間に渡りをつけるように指を滑らせて移行する奏法。このとおりに、両者は異なる技法である。グリッサンドは、ガーシュウィン作曲「ラプソディ・イン・ブルー」の最初のソロで用いられていることでよく知られている。
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