各国での楽しみ方
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/11 01:07 UTC 版)
日本以外の国・地域のファンも日本と同様、旅行、撮影、模型、コレクションなどを楽しんでいる。 欧米では、鉄道事業者の協力の下で、保存鉄道や保存車による貸切列車が大々的に運転されることもある。 保存鉄道以外では、航空ショーの鉄道版のような形で鉄道施設の線路際に特設の観客席を設け、往年の名車や名列車(編成ごと)が動く姿を楽しめる催しもある。 欧州 欧州の独特の趣味として「車両を見る(トレイン・スポッティング)」という趣味がある。駅などのホーム端部で行き来する列車の車両番号をノートに記録、または車両を見ながら車両番号を読み上げそれを録音する。これは地続きのヨーロッパにおいては、他国から直通運転される国際列車が日常的に見られることや、一つの列車に複数の国・地域の車両が連結されていることも多く、ファンの心をくすぐるためである。ただし「トレイン・スポッティングをする人」を意味するTrainspotterは、上記のように侮蔑的な意味を含む。 また、実際の営業路線で動態保存の蒸気機関車や列車を、団体臨時列車・イベント列車として走らせるグループ・組織や、実際に列車運転を体験できる鉄道もあり、その楽しみ方は多彩である。 アメリカ合衆国・カナダ 国土が広大で、貨物列車主体の鉄道であるため列車のスケジュールは一定ではなく、列車を撮影する際には無線機を携帯し、列車無線を聞いて列車の現在位置を把握することが多い。単に目撃した機関車の番号を記録するだけのファンもいる。 非常に裕福なファンも存在し、個人で列車を借り切ることもある。また、線路上を走行可能なように整備された寝台車や豪華なソファーに会議室、厨房など移動を更に楽しくさせる要素を含んだプライベートカーが存在し、それらの車両をアムトラックなどの定期旅客列車に併結させることもある。 旅客輸送の全盛期の備品のコレクションが盛んである。なかでも、「レイルウェイ・チャイナ」と呼ばれる食堂車で使われた高級食器の収集は他地域ではあまり見られない。また、鉄道会社の発行する株券にはそれぞれの鉄道会社の特徴を表すイラストが載っていることが多いため、株券を収集するファンも存在し、消滅した鉄道会社の株券を売買するコレクター・ショップも存在する。 自宅の庭に大型の鉄道模型である「庭園鉄道」を敷設するファンも存在する。 中央アメリカ・南アメリカ 中南米地域の国々では、鉄道は欧米諸国の大企業によるプランテーション(農業)や鉱山開発から発生する作物を輸送するために敷設された路線が多く、輸送する作物の価格動向や生産高、代替手段としての道路交通の発達などの影響を受けて旅客輸送はおろか路線自体が「休止」となっているケースも多々見られる。また情勢が不安定な国々も多く、「安全上の問題」により列車の写真を撮影出来ない場合もある。それらにより、中南米地域全体では鉄道ファンと呼べる人々はさほど見られない。 しかし、中南米地域の中では経済に加え鉄道網も最も発展しているとされるブラジルとコーノ・スール(アルゼンチン・ウルグアイ・チリ)では、鉄道車両や鉄道模型が製造され、鉄道に関する沢山のホームページや同好者組織が作られ、特にブラジルとアルゼンチンでは数種類の鉄道雑誌が定期的に発行され、ブラジル保存鉄道協会(ABPF)やフェロクルブ・アルヘンティーノ(スペイン語版)などの鉄道保存団体が多数存在するなど鉄道趣味が浸透している。リオプラテンセ・スペイン語やスペイン語のチリ方言には鉄道ファンを指す"Ferroaficionado"(アマチュア鉄道人)という言葉があるほどである。アルゼンチンの首都の大切な足として親しまれているブエノスアイレス地下鉄では日本の中古地下鉄車両が使用されており、日本から撮影や乗車をするために現地へ向かう鉄道ファンも存在する。 共産主義圏 共産主義圏においては、鉄道およびその関連施設の多くが軍事施設の扱いとされることから、資本主義圏に比べて鉄道撮影に対する制約が強い傾向が見られるが、主にインバウンド来訪者を対象として、鉄道事業者が蒸気機関車の体験運転を実施する例もある。 台湾 台湾では1987年まで戒厳令が施行されていたため、鉄道施設・車両に対する撮影に制限があったが、近年徐々にファンが増えてきている。特に台北捷運・台湾高速鉄道の開通後は増え方が加速している。日本同様に鉄道研究会がある大学もある。1995年に鉄道愛好者の団体である「鉄道文化協会」(鐵道文化協會)が結成され、鉄道趣味雑誌鐵道情報が発行されている。 市民運動の盛り上がりを受け、2017年に台北機廠跡を国立の「台北機廠鉄道博物館園区」として整備する計画が決定し、部分公開を行いつつ開館準備が進められている。 韓国 準戦時体制下にある韓国では、鉄道は軍事上重要な位置を占めており、鉄道施設・車両に対する撮影には制限がある。鉄道を趣味とする人は少ないため、情報発信は韓国に在住、あるいは韓国を訪問したインバウンド来訪者によるものが多い。近年は、以前よりも撮影規制などが緩和傾向にある。しかし韓国では、鉄道は「嫌悪施設」という概念が強く、東海南部線や京義線・ソウル郊外線で蒸気機関車による観光列車が走ったことがあるが、いずれも長続きしていない(「ムグンファ号」の項目参照)。一方で豪華寝台列車「ヘラン」号や海列車、旌善線などの廃線跡を活用したレールバイクの運行など、鉄道ファンを増やす試みも見られる。 インドネシア オランダの植民地時代から存在し、インドネシア語で狂人を意味するエダン(edan)とオランダ語で鉄道を意味するスポール(sepur)をあわせてエダンスポール(edan sepur)と呼ばれる。英語風にレールファン(railfan)と呼ばれることもある。2009年にインドネシア・エダンスポール・クラブが設立され、鉄道専門店の「プラサスティ」でグッズなどの展開を行っている。 モンゴル モンゴルは、民主化後は鉄道施設・車輌に対する撮影の制限が緩和されている。また、NHKの番組「行くぞ!最果て!秘境×鉄道」では、同国に3人しかいないという「撮り鉄」が紹介されたほか、ウランバートルには鉄道博物館も設置されている。 中国 改革開放以降も中国では撮影ルールに関して非常に厳しく、駅の入場時間に制限が設けられていたり、撮影しようとして拘束されるケースなどがある。近年は鉄道趣味が普及しつつあり、いくつかの大学には鉄道研究会もある。 ロシア ソ連時代、鉄道車両や施設などは軍事情報とされ、撮影等は基本的に禁止されていた。現在では基本的に撮影可能であり、鉄道ファンが情報交換するサイト(trainpix.org)やインスタグラムにも鉄道写真が多数投稿されている、動画投稿サイトや個人ブログなどでは日本人によるシベリア鉄道乗車記などが見られる。 また、ミャンマー国鉄、タイ国鉄、インドネシア(KRLジャボタベック)、フィリピン国鉄では日本の事業者より譲渡された鉄道車両が運用されているため、すでに日本国内で引退した車両を乗車・撮影する目的でそれらの国へ渡航する日本の鉄道ファンも存在する。
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