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物語要素事典 |
乗客
『押絵と旅する男』(江戸川乱歩) 「私」が乗った汽車の二等車には、「私」のほかに一人の老人が乗っているだけだった。老人は額(がく)入りの大きな押絵を持っており、「三十数年前、二十五歳の青年だった兄が、この押絵になった」と言って、不思議な物語を語った→〔絵〕2。
『クロイツェル・ソナタ』(トルストイ) 長距離列車の車室で、結婚と愛について数人が議論するのを「わたし」は聞く。一人の男が「結婚制度は肉欲の正当化にすぎない」と主張し、「私は妻を殺した男だ」と告白する。男の妻は音楽家トルハチェフスキーと、ベートーベンのクロイツェル・ソナタを合奏するなどして親密な関係になった。男は嫉妬に苦しみ妻を刺殺したが、無罪になったのだという。男は「性愛は悪である」と、語り続けた。
『高野聖』(泉鏡花) 「私」は帰省のため、新橋から敦賀へ向かう汽車に乗った。尾張の駅で多くの客が下り、車両の中には四十五~六歳の僧と「私」の二人だけになった。それから「私」と僧は言葉を交わすようになり、その夜は二人で敦賀に同宿した。僧は青年時代に飛騨の山越えをした折の、不思議な体験談を語った→〔宿〕7b。
*偶然汽車に乗り合わせたように見せかけ、実は意図的に集まった十二人の乗客→〔演技〕6の『オリエント急行殺人事件』(クリスティ)。
『蜜柑』(芥川龍之介) 冬の日暮れの汽車の中、「私」の前に十三~四歳の小娘が座り、トンネルの直前で窓を開けた。黒煙が入り、「私」は小娘を叱ろうとした。その時汽車はトンネルを抜け、小娘は窓から数個の蜜柑を投げた。これから奉公先に赴く小娘は、蜜柑を投げて、踏切まで見送りに来た弟たちの労に報いたのだった。
『雪国』(川端康成) 十二月初旬、雪国へ向かう汽車の中で島村は、病気の青年を世話する娘葉子を見た。これから島村が逢いに行く芸者駒子は、その青年のいいなずけだった。何日か後、島村が雪国から東京へ帰る日に、青年は危篤に陥り、死んだ→〔異郷訪問〕9。
『網走まで』(志賀直哉) 八月の暑い日の夕方、「自分」は上野から汽車に乗った。二十六~七歳の女の人が赤児を背負い、七歳ほどの男児を連れて、そばの席にすわった。赤児はおむつを濡らし、男児はわがままを言って、女の人(=母)を困らせた。女の人は、夫が大酒をすること・これから遠い網走まで行くこと、などを語った。女の人は車中で二枚の葉書を書き、宇都宮で降りる「自分」に、ポストへの投函を頼んだ。
*汽車に乗り合わせた人妻から誘惑される→〔閨〕4bの『三四郎』(夏目漱石)。
『銀河鉄道の夜』(宮沢賢治) ジョバンニとカムパネルラが、銀河鉄道に乗って星界を旅する。乗客の一人「鳥を捕る人」は、瞬時に外の河原へ降り、鷺を捕って、また瞬時に車室に戻って来る。家庭教師の青年が男女二人の子を連れて乗り込み、「海難事故で海に沈んだと思ったら、ここに来た」と言う。カムパネルラは窓外の野原を指さし、「あすこにいるの僕のお母さんだよ」と言って、姿を消す。ジョバンニは丘の上で目を覚まし、「夢を見たのだ」と思う。走って町まで行くと、「カンパネルラが水死した」と聞かされる。
『ブラック・ジャック』(手塚治虫)「人生という名のSL」 機上のブラック・ジャックが、うたた寝をして夢を見る。彼はSLに乗っている。乗客の中に、かつて恋人だった如月恵(*→〔病気〕3a)や、老人を安楽死させようとするドクター・キリコがいる。亡くなったはずの恩師本間丈太郎先生が、子供時代のブラック・ジャックを手術しようとしている。ピノコが八頭身の美女となって、ブラック・ジャックに寄り添う。彼は目覚め、「死ぬ前には過去の夢を見るというが・・・・」とつぶやく。
『蠅』(横光利一) 真夏の宿場から街に向けて、馬車が出発する。危篤の息子のもとへ急ぐ農婦、駆け落ちの若い男女、母親と男の子、大金を手にした田舎紳士の、合計六人が馬車に乗る。一疋の蠅が馬車の屋根に止まり、馭者の頭や馬の背に飛び移る。馭者は居眠りをし、馬車は崖下へ墜落する。蠅は馬車から離れ、悠々と青空を飛んで行く。
『脂肪の塊』(モーパッサン) フランスの民間人たちを乗せた一台の馬車が、プロシア軍占領下の町から脱出する。道中の宿駅でプロシア士官が、乗客の一人・「脂肪の塊」とあだ名される娼婦に目をつけて、馬車出発の許可を与えない。乗客たちは、「どうせ娼婦なんだから」と言って、「脂肪の塊」がプロシア士官と寝るよう仕向ける。「脂肪の塊」の犠牲的行為によって馬車は出発するが、乗客たちは礼を述べることもせず、「脂肪の塊」はすすり泣く。
*古来、荒れる海を静めるため船中の一人が海に入って犠牲になる物語がいくつもあり(*→〔くじ〕2aの『ヨナ書』、*→〔入水〕4の『古事記』中巻など)、『脂肪の塊』はその近代的変型といえる。
★7.消えた乗客。
『バルカン超特急』(ヒッチコック) 東欧からロンドンへ旅するアメリカ娘アイリスは、特急列車内で老婦人ミス・フロイと親しくなる。しかしアイリスがうたた寝をして目覚めると、ミス・フロイの姿がない。まわりの乗客たちは口をそろえて「そんな人は、はじめからいなかった」と言う。ミス・フロイはイギリスのスパイで、対立国の諜報員たちが彼女を捕らえて隠し、金で雇われた乗客たちが、ミス・フロイの存在を否定したのだった〔*アイリスは音楽学者ギルバートと協力して、ミス・フロイを救出した〕。
『夜行列車』(カワレロウィッチ) 満員の夜行列車。若い娘マルタと中年男が、一等車の二人用客室に乗り合わせる。マルタの愛を求める青年が別の車両に乗り、連絡を取ろうとするが、マルタは無視する。彼女は昔の恋人から手紙をもらい、逢いに行くのである。警官隊が現れ、中年男を殺人犯と誤認する(*真犯人は別にいて、列車から飛び降りたところを逮捕される)。中年男は外科医で、その日、手術中に患者を死なせてしまったことを思い悩んでいた。朝になり、列車は終点に到着する。駅には、中年男の妻が迎えに来ていた。マルタには出迎えの人はなかった。
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旅客
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2009/12/24 08:33 UTC 版)
(乗客 から転送)
旅客(りょかく)とは、目的地に移動するために航空機(旅客機)・鉄道・バス・タクシーや船(旅客船)等の交通機関に搭乗・乗車・乗船する人間のこと。
- 1 旅客とは
- 2 旅客の概要
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