りえんじにありんぐとは? わかりやすく解説

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リエンジニアリング【reengineering】

読み方:りえんじにありんぐ

ビジネスプロセスリエンジニアリング


リエンジニアリング

読み方:りえんじにありんぐ
【英】:re-engineering

概要

経営今日的最重要課題である原価削減, 品質サービスの向上, スピードアップなどを劇的に達成するために, 職能別に細分化されてきた旧来の分業体制廃して, 顧客志向・プロセスベース・情報技術活用職能横断的業務遂行(統合されオペレーション)体制抜本的に改革することをいう. 同義語として, ビジネスプロセスリエンジニアリング(BPR)がある.

詳説

 リエンジニアリング (reengineering) とは, 経営今日的最重要課題である原価削減, 品質サービスの向上, スピードアップなどを劇的に達成するために, 職能別に細分化されてきた旧来の分業体制廃して, 顧客志向・プロセスベース・情報技術活用職能横断的業務遂行 (統合されオペレーション) 体制抜本的に改革することである. すなわち, 従来標準大量生産適した, 徹底した分業職能階層組織による調整からなる仕事の進め方根本的に改めて, 多品種少量に適した職能横断的なプロセスベースの仕事の進め方革新することである. ビジネス・プロセス改革革新であることを明言するために, これをビジネス・プロセス・リエンジニアリングということもある.

1. 日米先進事例

 リエンジニアリングの典型例として, マイケル・ハマー (M. Hammer) らはその著書『リエンジニアリング革命』の中で, IBMクレジット, フォード自動車, およびコダックの3事例紹介している.

 IBMコンピュータシステム購入する顧客にその購入代金融資するIBMクレジットでは, この融資案件審査を, 顧客信用調査, 融資方式設定, 適用金利決定, 契約書作成など個別職務細分化し, それぞれ専門職能部門分担処理していたが, 審査期間の短縮化目指して, 1人案件担当者が, 顧客信用度データベースから, 金利算定システム, そして約款文書データベースによる契約書作成システムに及ぶコンピュータ意思決定支援システム活用しながら案件審査プロセス全体単独遂行する方式改革した. これにより, 1件の審査所用時間は, 7日間から4時間に短縮され, 従業員数不変のままで案件処理件数は約100倍増加した.

 フォード自動車は, 調達部品買掛金支払い業務を, 注文納品請求伝票の3票を突き合わせる伝統的な会計処理から, ペーパーレスコンピュータ処理改めた. 部品発注時に当該部品仕様注文データベース入力しておき, 納品の際に検品担当者納品仕様データベース上の注文仕様一致していることを確認した旨を入力すれば, 自動的に支払小切手発行される. このリエンジニアリングにより, フォード自動車北米地区買掛金支払い部門500人の従業員一挙に四分の一削減された.

 また, コダックは, 市場化富士写真フィルム先行されレンズ付きフィルム製品開発期間を短縮するために, 従来逐次型の設計方式を, 筐体, レンズ, シャッター, フィルム巻き上げ装置など各部分の設計部門統合設計データベース共有し, 同時並行的に設計作業進めコンカレント・エンジニアリング方式改めた. その結果, 通常70週間開発期間半分短縮され, 設計段階から製造工程への十分な配慮なされたことも相俟って製品製造原価25%削減された.

 日本にも, これら3事例優るとも劣らない典型例多数存在している. カンバン方式名高いトヨタ自動車, MAGMAシステム作り上げた日本精工, 従来からの融資業務加えて情報提供業務をも支援するRIPシステム創設し強力に推進している中小企業金融公庫事例[5]などは注目に値する.

2. リエンジニアリングの本質

 前述具体例から明らかなように, リエンジニアリングの源流は, 他ならぬ日本先進企業にあった. フォード自動車業務革新は, 提携先マツダ買掛金支払業務を僅か5名でこなしていたのを見習ったものであり, コダック新製品開発業務革新も, トヨタなど日本自動車メーカー新車開発の期間短縮目指し実行していたコンカレント・エンジニアリングの手法を採り入れたものに過ぎない.

 80年代後半, 多く米国企業内外市場日本企業との競争苦戦していた最中に, フォード自動車コダックなど, トヨタ生産方式QCサークル代表されるプロセス重視経営日本企業から学んで再生する企業が, 一部現れ始めていた. そして, このような米国企業変貌ぶりに注目したマイケル・ハマーやトーマス・ダヴェンポート (T. H. Davenport) らが, 再生果たしつつあったこれら米国企業業務革新から共通項抽出して, 一つ経営手法, あるいは変革指導原理として体系化し, 全く新しい名称を冠して登場させたのが, 他ならぬこのリエンジニアリングなのである.

 米国では, 過去100年以上, 農業生産性の向上に支えられ国内市場加速度的拡大により, 工業製品サービスへの需要大勢的に急増し続け, 企業また, 大量見込み生産による規模の経済性追求しつつ安価な標準品の大量供給をおこなって, 市場拡大寄与してきた. これは, 西欧先進諸国および日本でも大同小異であった. ところが, 80年代に入ると, 第二次産業革命とも言われるオートメーション, メカトロニクス等の急速な発達により, 工業生産力がさらに飛躍的に上昇すると共に, 人々購買力高まり, ある程度品質標準であれば, 市場消費しきれないほど大量製品安価に供給できる状況生じた. 顧客は, 大量生産された標準品ではもはや満足せず, 自分ニーズ合った製品・サービスタイミングよく提供されることを要求するようになった. 「多品種少量時代到来である.

 ここに至って, 標準品の大量見込み生産合致した仕事の進め方, すなわち, 分業により細分化され専門化された職務を, 調達, 製造, 営業, サービス, 経理など, それぞれ職能部門別組織化して調整するという仕事の進め方では, 以前フォード自動車部品調達に伴う買掛金支払い業務購買, 検品, 買掛金支払3部門が関与してたように, 一般に, どの基本的な業務にも多数職能部門関与することになり, 多品種少量市場環境要求される柔軟性即応性を満たし得なくなる. これが米国企業基本的業務遂行劣っていた理由である, とハマーらは主張する.

 では, 新し市場環境合致する仕事の進め方とは, どのようなものか. それは, 細分化され過ぎた職務統合するなどして新たに設定される, ある程度まとまりのある一連の業務 (ビジネス・プロセス) を, なるべく少人数自律的な職能横断的業務チームによって, 最新情報技術活用しつつ遂行していく, といった進め方である. リエンジニアリングは, この意味で, まさに業務革新である.

3. 分業調整

 アダム・スミス以来, 分業労働生産力増強する最善方策であると信じられてきた. 事実, 分業による生産性の向上によって, 製品価格が下がり, それに連れて需要増大する. 当然, この製品生産拡大され, さらに多く労働者製造従事することになるから, 仕事がいっそう細分化専門化されて分業進み, さらなる生産性の向上もたらされる. このような因果連関で, 大量生産とそこにおける分業とが, 相互促進的進み, 規模の経済性がますます発揮されることになる. これが極限にまで到達した姿が, 20世紀後半標準品の大量見込み生産大量販売であり, 巨大企業における徹底した社内分業体制であった. 分業は, このように, 労働生産力大幅に向上させるが, 良いとばかりあるとは限らず, 短所もある. 調整の必要が生じることがそれである.

 企業内で徹底した分業おこなわれ, 人々細分化され専門化された職務分掌している場合調整方法としては, それらの職務製造, 販売, 経理など職能別部門にまとめ, 職能部門別階層組織確立して調整するのが最も効率的であると言われている. したがって, 大量生産時代徹底した分業に対しては, 職能階層組織による調整適していたのである. しかし, 市場環境転換して品種少量時代に入ると, 話が完全に逆転する. 多品種少量場合には, 標準品の大量生産異なり, 同じ作業反復極端に減少するから, 分業体制敷いても, 熟練による能率向上や製品の品質向上はさほど期待し得ない. その一方で, 調整負担想像を絶するほど大きなものとなる.

 一般に, 徹底した分業体制で多品種少量生産をおこなおうとすると, 仕事一つひとつ異なるのに対応して, 細分化専門化された職務自体も一つひとつ異なったものにならざるをえず, 熟練による能率向上が効きにくくなる. さらに, あい前後する職務工程繋ぎ部分あるいは階層組織隣接職能部門間で, 仕事停滞したり, 情報伝達齟齬生じたり, いろいろな不具合生じてくる. 職能階層組織は, それぞれの職能部門固有の目標達成向けては非常に効率的であるが, 部門間の組織の壁を越えて個別顧客ニーズ個々的に対応する, という志向性は, 本来持ち合わせていないのである.

 今後の多品種少量時代適した仕事の進め方, すなわち分業をどの程度おこない, それをどのように調整していくかに影響を及ぼす一つ重要なファクターは, 情報技術活用である. リエンジニアリングが, 高度の分業否定するだけなら, それは, 単にアダム・スミス時代への逆戻り説いているに過ぎない. 21世紀新たな産業社会構築向けて指導原理たりうるためには, 急速に発達しつつある情報技術活用が, まさに不可欠の手段となるであろう.


参考文献

[1] T. H. Davenport, Process Innovation: Reengineering Work through Information Technology, Harvard Business School Press, 1993.

[2] M. Hammer, "Reengineering Work: Don't Automate, Obliterate", Harvard Business Review, July-August, 1990.

[3] M. Hammer and J. Champy, Reengineering the Corporation: A Manifesto for Business Revolution, Harper Business, 1993. (邦訳:『リエンジニアリング革命』, 日本経済新聞社.)

[4] M. Hammer, Beyond Reengineering, Harper Business, 1996.

[5] 梅沢豊,「日本型リエンジニアリング成功条件-上, 下」, 『日経ビジネス』, 1994年6月 20日, 27日.




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