Debian
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/01 19:35 UTC 版)
Debian 10 (buster) Cinnamon デスクトップ | |
開発者 | Debian Project |
---|---|
OSの系統 | Unix系,Linux |
開発状況 | 開発中 |
ソースモデル | FLOSS |
初版 | 1993年8月16日 |
最新安定版 | 12.5[1] [±] |
リポジトリ | |
使用できる言語 | 75言語[2] |
アップデート方式 | LTS |
パッケージ管理 | APT, dpkg (その他数種類のフロントエンド) |
プラットフォーム | i386 (i486以降のx86)、AMD64、PowerPC(64ビット版のみ)、ARM、MIPS、S390[2](以下は非公式: IA-64, SPARC, m68k, Alpha, HPPA) |
カーネル種別 | モノリシック (Linux, FreeBSD (テクノロジープレビュー)), マイクロ (GNU Hurd (非公式)) |
ユーザランド | GNU Core Utilities |
既定のUI | GNOME, KDE, Xfce, LXDEなど |
ライセンス | DFSG (GNU GPLその他)[3] |
ウェブサイト |
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名前の通り、GNUプロジェクトの精神の尊重と(そのため、システム全体も一般には単にLinuxと呼ばれる事が多いのに対し、Debianでは「GNU/Linux」という呼称を積極的に使っている。呼称が分かれる経緯についてはGNU/Linux名称論争を参照。)、同プロジェクトによるプロダクトの積極的な採用などが特徴である。
Linuxディストリビューションの他、カーネル(核)をLinuxカーネルからGNU HurdやFreeBSDのカーネルに置き換えた、Debian GNU/HurdやDebian GNU/kFreeBSDなどがある。
概要
Linuxカーネル、必須なユーティリティ類のutil-linux、プログラムのビルドに必要なGCCやGNU Binutils、coreutilsなどのその他のUnix系ユーティリティをはじめ、その他デスクトップ環境向けやサーバ運用向けなど多数の、計51,000以上のパッケージを提供している[4]。対象環境として現在10のアーキテクチャ(環境)向けに開発されており[4]、インテルやAMDの32ビット・64ビットプロセッサ、組み込み機器で使われるARMアーキテクチャなどがそれには含まれている。低水準のパッケージ管理システムはdpkg、高水準のパッケージ管理システムはAPTである。デスクトップ環境は各種のものがパッケージにあるが、Debian 8では導入時に選べるのはGNOME、Xfce、KDE、Cinnamon、MATE、LXDE、LXQtである。
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Debian 7 (wheezy) KDE4.8 Plasmaデスクトップ
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Debian 7 (wheezy) Xfce4.8デスクトップ
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Debian 10 (buster) GNOME デスクトップ
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Debian 9 (stretch) XFCE デスクトップ
その他の特徴として、Debianを母体として、さらに調整や変更を加えた派生Linuxディストリビューションの作成が考慮されている、という点がある。派生先にはUbuntu他多くの派生ディストリビューションが存在する。
インストーラ用のCD/DVDイメージはWebからのダウンロード、BitTorrent・jigdo・uNetBootInなどで取得できる。さらに、インストーラーをオンライン再販業者から購入する事も可能である[5]。
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Debian 10 のインストール・メニュー
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Debianインストーラのテキスト版
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Debianインストーラのグラフィカル版
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Debian 10 のコンソール・ログイン画面
歴史
開発・公開履歴
- 1993年8月16日 イアン・マードックにより開始。
- 1996年6月16日 Debian 1.1(コード名 buzz)を公開。
- 1996年12月12日 Debian 1.2(rex)を公開。
- 1997年6月5日 Debian 1.3(bo)を公開。
- 1998年7月24日 Debian 2.0(hamm)を公開。
- 1999年3月9日 Debian 2.1(slink)を公開。
- 2000年8月14−15日 Debian 2.2(potato)を公開。
- 2002年7月19日 Debian 3.0(woody)を公開。
- 2003年8月16日 プロジェクト発足10周年を迎えた。
- 2005年6月6日 Debian 3.1(sarge)を公開。
- 2007年4月8日 Debian 4.0(etch)を公開。
- 2009年2月14日 Debian 5.0(lenny)を公開。
- 2011年2月6日 Debian 6.0(squeeze)を公開。
- 2013年5月4日 Debian 7.0(wheezy)を公開。
- 2015年4月25日 Debian 8.0(jessie)を公開。
- 2017年6月17日 Debian 9.0(stretch)を公開。
- 2019年7月6日 Debian 10.0(buster)を公開。
- 2021年8月14日 Debian 11.0(bullseye)を公開。
- 2023年6月10日 Debian 12.0(bookworm)を公開。
Debian の各版に付けられている開発用コード名は、ディズニー映画「トイ・ストーリー」の登場人物の名前に基づいている。Debian の不安定版は、おもちゃをいつも壊す悪ガキのキャラクターである Sid (シド)にちなんでいる。
1993年〜1998年
Debianは1993年8月16日に当時パデュー大学の学生であったイアン・マードックにより創設された。 マードックは当初"Debian Linux Release"という名称を付けた[6]。当時"Softlanding Linux System (SLS)"という初のGNU/Linuxディストリビューションが公開されていたが、SLSは保守がお粗末であったり不具合が頻発したためマードックは全く新しいディストリビューションを立ち上げた。
1993年、マードックは"Debianマニフェスト"というこの新しいオペレーティングシステムについての概要を公表した。その中で、このディストリビューションの保守は、LinuxおよびGNUの精神に基づき公開された手法で維持されることを求めた。彼はこのディストリビューションの名称を、ガールフレンド(後の妻)の名前Debra Lynnと自身の名前IanからDebianとした[7][8]。
Debianプロジェクトからは、1994年から1995年にかけて0.9版のシリーズが初めて公開された。この期間、フリーソフトウェア財団のGNUプロジェクトが支援を行った。1995年には、インテルi386以外の環境に対しても対応が開始されることとなり、1996年に最初の1.x版が公開された。
1996年にはブルース・ペレンズがDebianプロジェクトのリーダーとしてマードックの後任に就いた。同年開発者のEan Schuesslerは、Debianプロジェクトがその利用者に対して社会的な契約を交わすべきであるとの提案を行った。これに関してDebianプロジェクトのメーリングリストで行われた議論は、プロジェクトについての「Debian社会契約」と「Debianフリーソフトウェアガイドライン (DFSG)」にまとめられた。ペレンズは、Software in the Public Interest (SPI) というDebianプロジェクトを公式に支え、プロジェクトを統括する非営利組織の創設にも関わった。
ペレンズは、glibc移行後初めての版となったDebian 2.0が公開される直前にDebianプロジェクトを引退した。
1999年〜2004年
この時期、Debianプロジェクトは新たなリーダーを選出し、2.x を公開した。この時期にAPTが初めて導入され、Debian GNU/HurdというLinuxカーネル以外の開発も始められた。1999年にはDebianを母体とするディストリビューションも現れ始めた。Libranet (2006年に開発停止[9])、Corel Linux そして StormixによるStorm Linuxである。 特筆すべきは、2000年に公開された2.2版(コードネーム: potato)で、この版はlibc等重要なパッケージの保守で、デュシェンヌ型筋ジストロフィーのため亡くなった、Joel 'Espy' Kleckerに捧げられた[10]。
2000年後半には、プロジェクトはパッケージアーカイブとリリースマネージメントに関する大きな変革を行い、「パッケージプール」方式と次期stable版の土台となる"testing"版の導入が開始された。また同年には全世界のDebian開発者・技術者を集めて年1回開催されるDebConf(Debianカンファレンス)が開かれるようになった。
この頃CorelはLinux部門を売却 (後にXandrosとなっている) 、Stormixは2001年破産を宣告されている。
2002年7月、Debian 3.0 (コードネーム: woody)が公開された。(遡ることver.1.1から、Debianは公開の際に映画トイ・ストーリーのキャラクター名をコードネームとして採用し現在に至る。)
3.0(woody)公開後、次期版3.1(sarge)まで、およそ3年という長期に渡る空白期間が存在する。主な理由として、potatoからwoody以後にかけて、パッケージ数が2倍程に増加、またwoodyでの対応環境も増加したため、公開直後からこれに伴うバグが飛躍的に増大した点がある。とりわけリリースクリティカルバグが事実上すべて解消されない限り公開できないため、公開日程に多大なる影響を与えた。パッケージメンテナのバグに対する考え方は温度差があり、たとえば特定の言語のみ発生するバグならば、そのメンテナがバグ対象の言語圏でも無い限りバグを修正することに対する意欲を持つことは少ない。コミュニティによるボランティアを作業基盤とするDebian特有の問題とも言える。
しかし、長くなっていく公開間隔について、フリーソフトウェアコミュニティから疑問の声が上がった。Debianのsargeリリース直前には、実際にDebian開発者の1人であったShuttleworthが主導してUbuntuというプロジェクトを派生させた。Shuttleworthが雇っているUbuntu開発者の多くは、かつてはDebianボランティアだったか、または今もDebianに関わっている人々である。多くの場合、Ubuntu開発者として(Canonicalを通して)雇われた人々はDebianでも同じパッケージの管理をしている[11]。この点については本人も公式サイト[12]で「Debian の開発者の中には、Ubuntu で仕事のほとんどをするようになった人も確かにいます。また、Ubuntu と Debian で同じように仕事をしている開発者もいます。」としてそれを認めている。Debian の創立者、Ian Murdochは、Ubuntu の人気が Debian 派生のディストロのために良い兆しだとは考えていない。それは、Ubuntu 用に作られたパッケージが Sarge上で動作しないことが多いことを挙げている。Murdockは、Ubuntuが本当にDebianと互換性があった場合、開発のための作業のエネルギーの全てをSargeに向けられる可能性があり、それが本当に全体として見た場合、Debianの開発システムに利益をもたらすと主張している[13]。したがって、当時のこうした混乱状況がsargeの開発をさらに遅らせることになったといえる。
その後、Debianから派生したUbuntuは多数の常勤の開発者によって開発されるところとなり、次第に影響力を増していった。しかし、ブラジル人のDebian開発者、Otavio Salvador は、「「ユーザはUbuntuを信用しているが、ユーザには安定したパッケージを提供する必要がある」 という考えにUbuntuがコミット (バージョン管理)しているかどうか、確信が持てない。」と述べている。また彼は、Shuttleworth個人に対しても不信感を抱いており、露骨に「言動が一致していない」と非難し、「品質対公開日程の問題で溝が深まったことでUbuntuとDebianの関係はひどいものになっている。」と語っている[11]。このように、Ubuntuに対する評価は分かれている。
Debianのstable開発の長期化と派生であるUbuntuの誕生は、Debianコミュニティに対する意識を変化させ、Debian 4.0(コードネーム: etch)以降の版に対しての公開日程を含むいくつかの改善をもたらしたのは確かである。2011年現在では両コミュニティにおいて、バグ修正の取扱いなど相互交流もある[14]。
2005年以降
2005年6月、Debian 3.1(コードネーム: sarge)が公開された。小規模な改良(バージョン番号が小数部の増加に留まる)にも関わらず、この正式版では数多くの変更が実施されたが、それは一つ前の版woodyからsarge公開までの期間が長かったことが原因である。この版では70%以上のソフトウェアが更新の対象となっただけではなく、ソフトウェアの容量も増加した。新規のインストーラーが導入され、40ヶ国語にも及ぶ言語に対応するようになった。
このリリースでは、woody以前のインストーラである、"boot-floppies"をDebianインストーラと呼ばれるモジュラー設計の新しいインストーラで置き換えた。この新しいインストーラは高度な導入方法に対応しており、RAID、XFS そしてLVMにも対応している。またハードウェア検知能力に優れるため、Linuxのインストールに不慣れな者でもインストールできるようになっている。インストーラは約40ヶ国の言語で完全なソフトウェアレベルでの国際化を実現している。インストールマニュアルと包括的なリリースノートはそれぞれ10と15の言語に翻訳され公開されている。
このときの公開では、Debianプロジェクトの各サブプロジェクトの取り組みも含まれており、Debian-Edu (Skolelinux)、Debian-Med、Debian-Accessibilityがそれに当たる。Skolelinuxは学校教育において有用なソフトウェアのパッケージを作成しDebianアーカイブに収録、また教育現場へのDebianの利用促進を行うプロジェクトである。Debian-Medは医療現場におけるDebianの利用促進や医療用ソフトウェアの作成、パッケージ化を担っている。Debian-AccessibilityはDebianシステムやDebianプロジェクトのWebサイトの利便性向上や障害者に対するDebianの利用を支援するプロジェクトで、その一部は視覚障害者のためのブライユ端末上における導入支援などがある。
2006年、ウェブブラウザやメーラーといった Mozilla関連のソフトウェア名が商標上の問題によって変更された。Firefox は、Iceweasel へ、Thunderbird は Icedove へといったように変わった。これはMozilla Foundationの要請によりDebianプロジェクトでMozilla Firefoxの名称が使えなくなったことによる。
2007年4月8日、Debian 4.0(コードネーム: etch)が公開された。GUIインストールが公式に対応されている。この公開版では新たにAMD64に対応した一方、Debian初のx86以外の対応環境であったm68kは公式に非対応となった(但し非公式ながら動作する)。
2009年2月14日、Debian 5.0(コードネーム: lenny)が公開された。開発期間は22ヶ月。25000以上のソフトウェア・パッケージが収録された。新たにマーベル・テクノロジー・グループが販売しているARM基盤のNAS、OrionプラットフォームとAsus Eee PCのようなネットブックに対応した。この版はMIPSアーキテクチャメンテナで2008年12月26日に交通事故で亡くなったThiemo Seuferに捧げられた[15][16]。
2010年9月5日、公式にバックポートサービス (Debian Backport) を開始した。
5.0公開からほぼ2年経った2011年2月6日、Debian 6.0(コードネーム: squeeze)が公開された。FreeBSDカーネル(Debian GNU/kFreeBSD)が「テクノロジープレビュー」としてこの版から正式に対応されたが、その一方でalphaとhppa、armの3つの環境がこの版から公式に非対応となった。
6.0公開から2年以上経過した2013年5月4日、Debian 7.0(コードネーム: wheezy)が公開された。この版からarmhfとs390xの2つの環境に正式対応されることとなった。
2014年4月24日、Debian 6.0の保守が2016年2月まで延長されることが発表され[17]、2014年6月16日より長期サポート(LTS)期間に入った[18]。
2015年4月25日、Debian 8.0(コードネーム: jessie)が公開された。この版よりAArch64(64ビット版ARM環境)とPOWER 64 ビットリトルエンディアン版が正式対応された。またs390 環境の対応が終了し、s390xに置き換えられた。なお、ia64 および sparc が、開発者不足から、正式版に含まれなくなった。
2017年6月17日、Debian 9.0(コードネーム: stretch)が公開された。この版より64 ビットリトルエンディアン MIPSが対応環境に追加された。逆に32ビット版PowerPCがサポートされる対応環境から外れた(PowerPC 64ビット版は引き続き保守が継続される)。
2019年7月6日、Debian 10.0(コードネーム: buster)が公開された。
2021年8月14日、Debian 11.0(コードネーム: bullseye)が公開された。[19]
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