阿呆 阿呆の概要

阿呆

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/01/13 04:08 UTC 版)

阿呆の使われる状況

「阿呆」は「馬鹿」とともによく使われる言葉だが、まったく同じ意味ではない。例えば、「学者馬鹿」というような、一本気さ、愚直さを表す用法は「阿呆」にはない、強調語として使う場合の「馬鹿」は「馬鹿でかい」「馬鹿にでかい」のように副詞的に使われるが、「阿呆」の場合は「阿呆ほどでかい」のように接続詞を伴う、などの用法の違いがある。

「阿呆」と「馬鹿」では、受け取られるニュアンスに地域差がある[1]。関東などの「馬鹿」を常用する地域の人に「阿呆」と言うと、「馬鹿」よりも侮蔑的であると受け取られる場合がある[1]。逆に関西など「阿呆」を常用する地域の人に「馬鹿」と言うと、「阿呆」よりも見下されたと受け取られる場合がある[1]

「阿呆」を用いた複合語として「どあほう」や「あほたれ」・「あほんだら」がある。「あほんだら」の語源については「阿呆太郎」であるとの説もあるが[2]、罵倒語の「だら」・「たくら」が「阿呆」と結びついた可能性も考えられる[3]方言周圏論によれば、言葉や風習は発生した中心から時間差をおいて周囲に広がるため、中心から遠い地域により古いものが残るとされる。これを当てはめると、「だら」や「たくら」は「阿呆」以前に生まれた罵倒語であり、発生源である近畿地方では廃れたが周辺の北陸・中国地方に定着し、「阿呆」と結びついた用法のみが近畿地方に残った、と考えることも出来る。

そのほか「阿呆」を用いた言葉として、『広辞苑』は以下のものを挙げている(『広辞苑』では「あほう」の漢字表記を「阿房」としている)。

  • 阿房芋・阿房烏・阿房臭い・阿房口・阿房狂い・阿房死に・阿房力・阿房面・阿房鳥・阿房払い・阿房律儀
  • 阿房が酢に酔ったよう・阿房桁叩く・阿房に付ける薬なし・阿房の足元づかい、阿房の三杯汁・阿房の鼻毛で蜻蛉をつなぐ・阿房の話ぐい・阿房の一つ覚え

また前田勇の『上方語源辞典』は、「阿呆」を用いた言葉として以下のものを挙げている。

  • 阿呆陀羅経・阿呆だら口・阿呆らしい・阿呆らしゅうもない
  • 阿呆に法が無い・阿呆は風邪を引かぬ・阿呆は長生きをする

分布状況

「馬鹿」と「阿呆」は日本の東西で分かたれている言葉だと思われがちだが、「阿呆」は主に近畿地方と四国東部(たとえば徳島県阿波踊りの歌詞「踊る阿呆に見る阿呆」など)、岡山県といった限定的な地域で使われており、関東以北およびさらに西の四国西部や中国地方(岡山県や島根県出雲地方以外)では「馬鹿」が使われている。

「阿呆」の発音は、京阪神では「アホ」、その周辺の地域では「アホー」であり、最外縁の地域には「アハウ」という発音が残っている。文献上でも「アハウ」→「アハア」→「アホウ」→「アホ」と変化しており、この表現が京阪神を中心として周辺地域に広がっていることを示している。

現代では上方漫才のテレビ進出にともなって、日本全国どの地域でも「阿呆」を使うようになっている。

視聴者参加型テレビバラエティ番組『探偵!ナイトスクープ』において、「アホとバカの境界線はどこか」という視聴者投稿に端を発した本格的な調査と研究がなされており、この制作過程を記した『全国アホ・バカ分布考 はるかなる言葉の旅路』(松本修著)に詳細な結果と考察がまとめられている。


  1. ^ a b c 松本修 1996, p. 21.
  2. ^ 松本修 1996, p. 36.
  3. ^ 松本修 1996, pp. 335–336.
  4. ^ a b 松本修 1996, pp. 421–454.
  5. ^ 松本修 1996, pp. 101–105.
  6. ^ 松本修 1996, pp. 404–420.
  7. ^ 松本修 1996, pp. 407.
  8. ^ 松本修 1996, pp. 450–454.


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