舵 基本形状

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/21 01:39 UTC 版)

基本形状

基本的な舵の形状は、水中での抵抗を最小にするために流線型になっている。流体の特性に合わせて、舵の水平断面形状は前方が丸く後半部はなだらかな曲線となり後端部は鋭くとがっている。このため、最も厚みがある場所がやや前方寄りとなる。飛行機の翼にも似た形状であるが、飛行機の翼が揚力を得るために上下に非対称なのに対して、船の舵は抵抗を減らすために左右対称となっている。大型船では、左右2枚にしたり、大小に分けて前後に配置したりすることもある。船首にも舵を設けることが実験的に行われたが、あまり効果がなく実用化されていない。

力学

揚力

舵の揚力係数と迎角
1.揚力係数 2.迎角 3.失速点 4.失速後の平衡点

舵が作る揚力は以下の式で表される。

F : 揚力
CL : 揚力係数 舵の形状によって決まり、迎角の関数となる。
ρ : 水の密度
U : 水の流入速度
S : 舵面の面積

剥離

舵の左右両面は「舵面」(だめん)と呼ばれ、舵面が作る角度によって、舵面に当る水流を右または左に偏向する役割を果たす。舵面全体の角度、つまり「迎角」(げいかく)が大きいほど大きな揚力が得られるが、流れに対する裏面側で流れが舵面に沿わずにはがれて流れる剥離が起きると揚力は逆に小さくなる。これが失速であり、飛行機の翼で起きる現象と同じである。

剥離が起きると舵の利きが悪くなるので一般的な舵の舵角は最大で35度程度になっている。フラップ付きの舵はこの剥離を抑えながら舵の角度を大きくとる工夫である。

失速(ストール stall)と剥離(キャビテーション cavitation)

翼から空気の流れが剥がれ渦が生じて、失速する現象をストールという。また、舵面から水の流れが剥がれて真空の泡が生じて、剥離する現象をキャビテーションという。圧縮性流体と非圧縮性流体の差異によるもので、いずれも有害である。

船体に働くモーメント

舵によって生み出される横方向の力は船全体の質量に比べて小さいために、効果的に船体に回転力を与えるためには、できるだけ船体の重心から遠い位置にする方が良い。船体へ働く回転力は「回転モーメント」と呼ばれ、回転の中心となる重心位置からの距離(=モーメントレバー) × 舵の生み出す横方向の力(=揚力)で求められる。このためもあって、舵は船の最後部付近に位置している。

面舵と取舵

進路方向を右に取る場合は「面舵(おもかじ)」、左に取る場合は「取舵(とりかじ)」と言う。単に「面舵」なら右に15、「面舵一杯」となれば民間船では右に30度、軍艦では35度となり、「取舵」、「取舵一杯」ならその反対である。「一杯」という語源は、前述した剥離によってこれ以上の舵角には変角効果がなく、最大舵角であることからきている。

また、船は舵を戻しても惰力により舵を取った方向に動き続ける(大日本帝国海軍と海上自衛隊では「行き脚」という)ため、取った舵と反対方向に舵を切って、船体が振れるのを止める「当舵(あてかじ)」を行う(自動車でいうカウンターステアに似る)。角度は5度が普通だが軍艦の場合だと戦艦は7度、その他輸送船などは10度が多く用いられるように、船体重量によって異なる。“右に当舵”なら航海士は操舵手に対し「面舵に当て」と指示する。

これらの表現は航空機にも共通である。


  1. ^ 川崎、196-197頁
  2. ^ 欧州域で舵が生み出されなかったのは、当時の竜骨を備えた(欧州の)船体構造では中央に舵を取り付け難かったと考えられている。
  3. ^ 川崎、162-163頁


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