自動装填装置 概要

自動装填装置

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/09/23 07:56 UTC 版)

概要

「装填」の語が軍事関係で多用されている事から、自動装填装置は砲弾またはミサイルを、またはランチャーに装填する装置を指す事が多い。

艦砲

艦砲口径が大きく、砲弾重量も大になるため、早くから機力装填が行われていた。機力装填は砲塔内部で行われる揚弾、閉鎖機の開放、砲弾の装填、薬嚢の装填、閉鎖機の閉鎖の工程のうち、弾薬庫から砲側まで砲弾を運搬する揚弾と、砲弾を砲へ押し込む装填動作のみを機械の力を使って行うもので、残りの工程は人力か、あるいは人間が機械を操作して行っていた。したがって装填装置ではあっても自動装填装置とは異なる。

当時の装填装置の動作は決して早くなく、その結果、単位時間当りに発射される砲弾の合計重量は、より小口径で装填速度の早い砲のほうが多くなる可能性がある。日清戦争黄海海戦日本海軍が得た勝利は、副砲として採用されていたアームストロング速射砲のつるべ撃ちが挙げた戦果によるところが大きいといわれる。

また、装填にあたってラマー[1]の力量の不足や装備位置の関係から、砲を特定の角度(装填角度)に戻さねばならない物が多く、このことが発射速度の向上を妨げる原因となっている。大口径艦砲の自動装填装置と呼び得る機構は、第二次世界大戦の末期にアメリカ海軍が建造したデモイン級重巡洋艦の203ミリメートル(8インチ)三連装砲Mk.16で採用されているが、時代はすでに大口径砲の撃ち合い自体を非現実的なものとしていた。

しかし装備する砲熕兵器が第二次世界大戦中に平射砲(対水上目標専用)から両用砲(対空中・水上目標兼用)へ変わっていく中で、艦砲はしだいに単なる機力装填から自動装填へと機構が改良されていった。ミサイル万能論の時代には砲を装備しない艦艇も現れたが、その後の戦訓やコストの観点から砲熕兵器が再装備されるに至る。現代でも依然として対空目標への砲の使用が想定されており、そのため現代の艦砲はおおむね全て自動装填装置を備えた自動砲となっている。

オート・メラーラ 76mm砲が代表的な存在であり、砲塔内が無人化されている砲も多い(ただし、非常時に備えて手動での操作を可能としている物もある)。また、海水を使った砲身の強制冷却による連射性能の向上もあって連射速度は第二次大戦中の機関砲に相当するまでになった。

高射砲

高射砲弾幕を形成する必要から連射速度向上の要求が強く、高角度の状態であっても装填・射撃を続けねばならない。機力を利用して装填を行う機構は、第二次世界大戦中のベルリンに建設された高射砲塔に装備された12.8cm連装対空砲FlaK40などにも装備されている。戦後の高高度対空兵器はミサイルが中心になっていったため、野戦高射砲自体が消滅してしまい、進化した高射砲用自動装填装置もまた現れなかった。


  1. ^ ラマー(Rammer)とは砲弾を砲へ押しこむ装置、またはそのアーム部分を指す。前装式の銃砲のみならず、後装式の火砲でも用いられる。人力装填の時代にはただの木の棒だった。火縄銃などの前装銃では「かるか」、または槊杖と呼ばれる
  2. ^ Ivo Pejčoch, Oldřich Pejs - Obrněná technika 6, Střední Evropa 1919-1945 I.část, vydavateľstvo ARES, Praha 2005
  3. ^ Vladimír Francev, Charles K. Kliment - Československá obrněná vozidla 1918-1948, vydavateľstvo ARES, II. vydanie, Praha 2004
  4. ^ 斎木伸生「M4からM26へ」『PANZER』1993年2月号、54-55頁。
  5. ^ 古峰文三「ドキュメント 日本戦車開発構想史」『[歴史群像]太平洋戦史シリーズVol.34 帝国陸軍 戦車と砲戦車 欧米に比肩する日本の対戦車戦闘車両の全容』学研, 2002年, 110頁
  6. ^ 鈴木邦宏「第4章 三式、四式、五式中戦車 Chapter 4 : Type 3, 4 and 5 Medium Tanks」『ストライクアンドタクティカルマガジン2010年11号別冊2010年10月13日(水)発売・第7巻第9号(通巻48号) 日本陸軍の戦車 IMPERIAL JAPANESE ARMY TANKS 完全国産による鉄獅子、その栄光の開発史』カマド・SAT編集部, 199頁・203頁
  7. ^ 国本康文「TECHNICAL REPORT 日本の戦車砲・対戦車砲 PART-2 長砲身75ミリ戦車砲」『[歴史群像]太平洋戦史シリーズVol.34 帝国陸軍 戦車と砲戦車 欧米に比肩する日本の対戦車戦闘車両の全容』学研, 2002年, 134頁
  8. ^ なお、日本の文献ではT-64より採用されたソビエト/ロシア戦車の自動装填装置は"コルジナ"及び"カセトカ"の名称で記述されていることがあるが、これらはどれも砲弾の収納方式や装填方式からつけられた通称であり、そのような制式名称の自動装填装置が存在しているわけではない。「コルジナ(корзина)」は"籠"、「カセトカ(кассетка)は"小箱のようなもの" "個別に分けられたもの"を意味する(カセータ(кассета):の縮小辞形)ロシア語で、それぞれ「弾薬を砲塔バスケットに搭載する」「装薬カートリッジを個別に装填する」ことから生まれた通称と見られる
  9. ^ 防衛生産委員会特報 2014, p. 60.





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