総裁 総裁の概要

総裁

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/17 02:46 UTC 版)

元々は、後述する幕末の江戸幕府の役職名として使用され、その後、明治時代における新政府の長の名称として用いられ、以後様々な組織や団体における「長」たる職の名称として用いられている。また、諸外国における英語directorまたはpresidentに相当する語の訳語として用いられている。

江戸幕府

幕末文久2年(1862年)、勅命により幕政改革が実施された(文久の改革)。将軍の補佐役である将軍後見職徳川慶喜(当時の姓は「一橋」)、大老に相当する政事総裁職松平慶永京都所司代の上にあって京都の治安維持にあたる京都守護職松平容保をそれぞれ任命した。この「政事総裁」が、字が役職に用いられた最初の例と見られる。

さらに、慶応2年(1866年)には、最後の将軍・徳川慶喜によって、幕政改革が行われ(慶応の改革)、この改革で老中は各省大臣のように専任制となり、陸軍総裁海軍総裁、国内事務総裁、外国事務総裁、会計総裁がおかれた。明治元年(1868年)、勝海舟が第2代陸軍総裁に就き、江戸城無血開城を主導した。

幕府自体ではないが、明治元年12月(1869年1月)、蝦夷地箱館)において一部の旧幕臣が政府(いわゆる蝦夷共和国)を組織するために選挙(公選入札)をおこない、その結果、最多得票を得た榎本武揚が「総裁」となっている。

明治政府

明治政府
総裁
そうさい
任命天皇
明治天皇
創設慶応3年12月9日
1868年1月3日
初代有栖川宮熾仁親王
廃止明治元年閏4月21日
1868年6月11日
職務代行者副総裁
三条実美岩倉具視
俸給月額 1000両

慶応3年12月9日(1868年1月3日)、王政復古の大号令が発表され、明治維新の政体改革が始められた。摂政関白を中心とする摂関政治と、征夷大将軍を中心とする幕府政治を廃し、「総裁」・「議定」・「参与」の「三職」を設置し、諸事神武創業の昔への復帰などを宣言し、天皇中心の新政府樹立を目指した。「総裁」は、三職の最高官職として、「萬機ヲ統ヘ、一切ノ事務ヲ裁決ス」[1]とされて政務を統括し、有栖川宮熾仁親王が就任した。月給は金1000両と定められた(明治元年3月制定。なお、議定は金800両、参与は金500両)。

三職は、小御所会議(三職会議)を開催して、徳川慶喜の辞官納地(内大臣の辞任と領地の一部返納)などを決定した。その後、総裁の熾仁親王が、すぐに戊辰戦争における東征大総督として関東に出征してしまったため、実際には政務の中心となることはなかった。翌明治元年1月17日、三職の下に神祇・内国・外国・海陸軍・会計・刑法・制度の七科を置いて三職七科とし、同年2月3日には科を局として総裁局を設置し三職八局とした。また、このとき、総裁局に副総裁を置いて三条実美岩倉具視をこれに任命し、実際の政務を執ることとなった。副総裁の月給は、総裁に準じて金1000両と定められた。

明治元年閏4月21日(1868年6月11日)、五箇条の御誓文に基づく政治の基本組織を定めた政体書を発表した。政体書では、太政官を中心とした政治体制を採り、それまでの総裁をはじめとする三職は開始から半年足らずで廃止された。

官庁

官庁における役職名としての総裁は以下がある。

また、戦前から終戦直後においては、「本部」「庁」の長を総裁とする例(経済安定本部、特別調達庁など)もあり、「本部」が、内閣総理大臣直轄で設置される場合は総理大臣が、各省に設置される場合は各省大臣が総裁となっていた。なお、後に防衛施設庁となった特別調達庁(Government Corporation=政府公団)の場合は、当初より国家行政組織では無く、GHQの指示で政府部局に編入された後も公社化に至らず、防衛省への統合で廃止された。




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