家制度 廃止された理由等

家制度

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/11/30 21:17 UTC 版)

廃止された理由等

前述のように、婚姻・縁組・居所移転を阻止できないという意味では、戸主権の実効性は極めて脆弱である[11]

しかし、立法者が楽観視した離籍権は意外の弊害を生じた。条文上行使の方法に制限が無かったため、扶養義務免除など不正の利益を得るためや、嫌がらせ目的による行使が相次いだのである。そこで早くから判例は権利濫用法理を発達させ、恣意的な離籍を無効にする努力を講じており、戸主権を必要とする社会的実態の欠如が古くから指摘され続けてきた[12]

そこで早くも大正時代には法律上の家族制度緩和論が支配的となり[13][14]、離籍権行使に裁判所の許可を要するとの改正が昭和16年に成立。保守派からの反対論は特に出なかった[15]

戦後には家制度が憲法24条等に反するとして、「日本国憲法の施行に伴う民法の応急的措置に関する法律」(昭和22年法律第74号、昭和22年4月19日施行)により、日本国憲法の施行(1947年5月3日)を以って廃止された。牧野英一らの強い主張もあり「家族の扶養義務」などの形で一部残されたが(民法877条)、戦後の改正民法が当時の社会事実としての家制度や、道徳上の家庭生活を否定し積極的に破壊する趣旨に出たわけではなく、法律上の家制度を廃止することで道徳・人情・経済に委ねた趣旨を表すものであり、同時施行された家事審判法(2013年廃止)の第1条が「家庭の平和と健全な親族共同生活の維持を図ることを目的とする」としていたのと同趣旨だとも説明されている[16]。一方で、法律上の家制度が解体された以上、道徳上のそれも解体されるべきという主張も、主に進歩派を自認する論者によって有力に唱えられている[17]


注釈

  1. ^ このうち広島新田藩浅野家は廃藩後に華族となることを辞退した。
  2. ^ 松崎家(松崎万長家)・玉松家(玉松操家)・岩倉具経家(岩倉具視の三男)・北小路家北小路俊昌家)・若王子家(聖護院院家若王子住職家)
  3. ^ 徳川御三卿のうち2家(一橋徳川家田安徳川家)、徳川御三家附家老家5家(成瀬家・竹腰家(尾張徳川家)、安藤家水野家紀伊徳川家)、中山家水戸徳川家))、毛利氏の家臣扱いだった岩国藩吉川家、1万石以上の所領を持つ交代寄合6家(山名家池田家山崎家平野家本堂家生駒家)、1万石以上の所領を持つ高家だった大沢家。ただし大沢家は所領の水増し申告が露見し1万石以下であることが確認されたことから、後に華族の身分を剥奪され士族に編入された。
  4. ^ 徳川御三卿の清水徳川家は当主不在であり、翌年華族に列せられた。
  5. ^ 旧民法が効力を持っていた戦前期(及び2021年現在でも各家庭・地域によっては)「家系の祭祀」を継ぐことが名誉ある責務と考えていたため、この規定が定められていた。

出典

  1. ^ 中村清彦「我国の家政と民法(三)」『日本之法律』4巻8号、博文館、1892年
  2. ^ 村上一博「『日本之法律』にみる法典論争関係記事(4)」『法律論叢』第81巻第6号、明治大学法律研究所、2009年3月、 289-350頁、 ISSN 03895947NAID 120001941063
  3. ^ 公爵11、侯爵24、伯爵76、子爵327、男爵74に授爵 伊藤博文伝 春畝公王頌会編
  4. ^ 岩田新『親族相続法綱要』(同文館、1926年)59-61頁
  5. ^ 宇野文重「明治民法起草委員の「家」と戸主権理解 : 富井と梅の「親族編」の議論から」『法政研究』第74巻第3号、九州大学法政学会、2007年12月、 523-591頁、 doi:10.15017/8837ISSN 03872882NAID 120000984402
  6. ^ 大蔵省印刷局『官報第4535号』。国立国会図書館。
  7. ^ 梅謙次郎『民法要義 巻之四親族法』和佛法律学校、1902年、50、111頁
  8. ^ 栗原るみ「ジェンダーの日本近現代史(3)」『行政社会論集』22巻2号、福島大学行政社会学会、2009年、90頁
  9. ^ 平野義太郎『日本資本主義の機構と法律』明善書房、1948年、52-53頁
  10. ^ 梅謙次郎『民法要義 巻之四親族法』和仏法律学校、1902年、35-36頁
  11. ^ 我妻榮『民法研究VII 親族・相続』有斐閣、1969年、131頁、中村敏子『女性差別はどう作られてきたか』集英社、2021年、125頁
  12. ^ 杉之原舜一『親族法の研究』日本評論社、1940年、3-8頁
  13. ^ 我妻栄遠藤浩川井健補訂)『民法案内1私法の道しるべ』(勁草書房、2005年)103-104頁, isbn 978-4326498444
  14. ^ 山本起世子「民法改正にみる家族制度の変化 : 1920年代~40年代 (PDF) 」 『園田学園女子大学論文集』第47号、園田学園女子大学、2013年1月、 119-132頁、 NAID 110009534405
  15. ^ 我妻榮『民法研究VII 親族・相続』有斐閣、1969年、149頁
  16. ^ 穂積重遠『百萬人の法律学』(思索社、1950年)112頁
  17. ^ 我妻榮編『戦後における民法改正の経過』日本評論新社、1956年、42頁
  18. ^ 「夫婦同姓も中絶禁止もその価値観を他人に強制することではない」、iRonna、2015年12月16日
  19. ^ a b 「時代遅れの戸籍制度」、週刊金曜日、第838号、2011年3月11日


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