依用
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/08/19 05:20 UTC 版)
依用(えよう)とは、法域外の法律を、別の法域においてそのまま適用することをいう。
大日本帝国統治下の外地(台湾、朝鮮、樺太、関東州、南洋群島)において、内地の法律の一部が当該外地に依用された。また、韓国においては、独自の法律が施行されるまでの間、日本の法律が引き続き依用されていた[1]。
法制の概要
外地のうち、台湾、朝鮮及び樺太は、完全に大日本帝国統治下であり、大日本帝国憲法が適用されるとされつつ、既に存在する慣習法や制度を無視できない等の事情から、内地と同一の法令をそのまま適用することが困難であったため、外地法と呼ばれる法体系が形成された[2]。
外地に施行すべき法令に関する法律である「外地法令法」が、台湾[注釈 1]、朝鮮[注釈 2]、樺太[注釈 3]についてそれぞれ制定された。この「外地法令法」のように外地に特に施行する目的で制定された法律は、直接外地に施行され、そのほかの外地に施行する必要がある法律については、勅令によりその全部又は一部を施行することとされた。
一方、関東州及び南洋群島においては、これらが租借地ないし委任統治地域である関係上、大日本帝国憲法が適用されず、そのため「外地法令法」は制定されず、専ら勅令により立法権が行使された。
台湾、朝鮮においては外地法令法に基づく委任立法として台湾総督・朝鮮総督は、法律の効力を有する命令(台湾:律令、朝鮮:制令)を発する立法権が付与された。樺太では、委任立法の制度は認められず、内地の法律が勅令により施行されたが、特定の事項については勅令で特別の定めをすることができるとされた。
法律の依用
このように、外地においては内地の法令が例外的に適用される場合を除き、勅令又は委任立法である律令、制令において、実質的に内地の法律と共通性を有する内容を規定する場合には、内地に行われる法律に「依る」べき旨を定めることがしばしば行われた。これが「法律の依用」であり、外地法独自の規定の仕方である。
「法律の依用」を行った律令・制令、勅令は、内容が同一であっても依用される内地の法律とは別個の存在であり、法律の効果が直接外地に及ぶものではないとされた。このため、内地の法律に改正があった場合には、特別な規定がある場合を除き、改正後の法律が適用されることとする律令・制令、勅令がそれぞれ定めらた。
・「律令ノ規定ニ依リ本島ニ適用セラルル法律ノ改正アリタルトキノ効力ニ関スル件」(明治32年律令第21号)
・「制令ニ於テ法律ニ依ルノ規定アル場合ニ於テ其ノ法律ノ改正アリタルトキ効力ニ関スル件」(明治44年制令第11号)
・「関東州ニ於ケル勅令ニ於テ法律ニ依ル規定アル場合ニ於テ其ノ法律ノ改正アリタルトキノ効力ニ関スル件」(明治44年勅令第249号)
・「南洋群島ニ行ハルル勅令ニ於テ法律ニ依ルノ規定アル場合ニ於テ其ノ法律ノ改正アリタルトキノ效力ニ関スル件」(大正11年勅令第130号)
また、勅令で内地法令を適用するとした場合は、その適用を廃止することはできないが、依用は、その後に依用をやめることができた。
脚注
注釈
- ^ 台湾ニ施行スヘキ法令ニ関スル法律(明治29年法律第63号、明治39年法律第31号、大正10年法律第3号として3回制定された。)。
- ^ 朝鮮ニ施行スヘキ法令ニ関スル法律(明治44年法律第30号)。前身として朝鮮ニ施行スヘキ法令ニ関スル件(明治43年勅令第324号)がある。
- ^ 樺太ニ施行スヘキ法令ニ関スル法律(明治40年法律第25号)。昭和18(1943)年4月1日に「明治四十年法律第二十五号(樺太ニ施行スヘキ法令ニ関スル件)廃止法律」(昭和18年法律第85号)が施行され、樺太は内地と原則として同一の法制となり内地に編入された。
出典
- ^ 韓国では1960年1月1日に独自の民法が施行されたことにより、朝鮮民事令の規定により依用していた日本民法をようやく廃止した。なお、既に旧法に依って生じた効力には影響を及ぼさないとされており、朝鮮民事令と日本民法は、特に家族法の分野では現在も法源として用いられることがある(韓国民法附則2条)。
- ^ 日本-旧外地法令の調べ方
外部リンク
依用
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/01 08:43 UTC 版)
真言にはそれぞれ出典となる経が存在し、成立の過程が異なる『大日経』 (胎蔵界) と『金剛頂経』 (金剛界) では、真言が異なる。真言の中でも仏尊の名号・種子・本誓を真言にしたものは、比較的容易にその意味が解読されているが、加持に用いる真言などで全く意味不明なものも存在する。しかし、理解できなくても一種の不可思議な霊力がある呪文として取り扱われている。 口誦、念誦 真言は、バラモン教やヒンドゥー教のマントラに由来するため「反復」が重視されており、数限りなく唱えられたときに絶大な威力を発揮すると説かれている。遍数には三遍・七遍・百八遍・千遍、十万遍(洛叉)などがあり、例えば、不動明王の真言を30万回(三洛叉)唱えると不動明王の姿を見ることができる、准胝観音の陀羅尼を90万回唱えると一切諸々の罪業が余すところなく消滅する など、数多く真言を唱えることで効果を発揮すると説かれている。空海も実践したと伝えられる「虚空蔵菩薩求聞持法」は、虚空蔵菩薩の真言を100日間ないし50日間で100万遍唱えるもので、修行が成就すれば抜群の記憶力と限りない智慧を獲得できるとされる。 唱え方には以下のものがある。 声生念誦 - 心の蓮華の上に法螺貝を観想しそこから声を出すように唱える。 蓮華念誦 - 自分の耳に唱える声が聞こえる。 金剛念誦 - 唇歯を合わせて舌端を少し動かして唱える。 三摩地念誦 - 舌も動かさず、心のみ念ずる。 光明念誦 - 口から光明を発しながら唱える。
※この「依用」の解説は、「真言」の解説の一部です。
「依用」を含む「真言」の記事については、「真言」の概要を参照ください。
- >> 「依用」を含む用語の索引
- 依用のページへのリンク