廃止された理由等
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/16 14:33 UTC 版)
前述のように、婚姻・縁組・居所移転を阻止できないという意味では、戸主権の実効性は極めて脆弱である。 しかし、立法者が楽観視した離籍権は意外の弊害を生じた。条文上行使の方法に制限が無かったため、扶養義務免除など不正の利益を得るためや、嫌がらせ目的による行使が相次いだのである。そこで早くから判例は権利濫用法理を発達させ、恣意的な離籍を無効にする努力を講じており、戸主権を必要とする社会的実態の欠如が古くから指摘され続けてきた。 そこで早くも大正時代には法律上の家族制度緩和論が支配的となり、離籍権行使に裁判所の許可を要するとの改正が昭和16年に成立。保守派からの反対論は特に出なかった。 戦後には家制度が憲法24条等に反するとして、「日本国憲法の施行に伴う民法の応急的措置に関する法律」(昭和22年法律第74号、昭和22年4月19日施行)により、日本国憲法の施行(1947年5月3日)を以って廃止された。牧野英一らの強い主張もあり「家族の扶養義務」などの形で一部残されたが(民法877条)、戦後の改正民法が当時の社会事実としての家制度や、道徳上の家庭生活を否定し積極的に破壊する趣旨に出たわけではなく、法律上の家制度を廃止することで道徳・人情・経済に委ねた趣旨を表すものであり、同時施行された家事審判法(2013年廃止)の第1条が「家庭の平和と健全な親族共同生活の維持を図ることを目的とする」としていたのと同趣旨だとも説明されている。一方で、法律上の家制度が解体された以上、道徳上のそれも解体されるべきという主張も、主に進歩派を自認する論者によって有力に唱えられている。
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