国宝 国宝の概要

国宝

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/29 01:22 UTC 版)

神社建築:宇治上神社本殿覆屋(宇治市)
寺院建築:法隆寺金堂・五重塔(斑鳩町)
城郭建築:姫路城連立天守(姫路市)
絵画:源氏物語絵巻(徳川美術館
彫刻:臼杵磨崖仏(阿弥陀三尊像)
工芸品:天寿国繡帳中宮寺
書跡・典籍:秋萩帖(東京国立博物館)
古文書:弘法大師筆尺牘「風信帖」(東寺
考古資料:人物画像鏡(隅田八幡神社
歴史資料:慶長遣欧使節関係資料のうちローマ市公民権証書(仙台市博物館
※以下、本項は第2義について解説する。

国宝(第2義)は、日本の文化財保護法によって国が指定した有形文化財(重要文化財)のうち、世界文化の見地から価値の高いもので類いない国民たるものであるとして国(文部科学大臣)が指定したものである(文化財保護法第27条第2項)。建造物、絵画彫刻工芸品書跡典籍古文書考古資料および歴史資料が指定されている[3][4][5][6][7]

法的には、国宝は重要文化財の一種である[注 1]。国宝・重要文化財の指定手続、指定制度の沿革などについては、別項「重要文化財」を参照のこと。

なお、いわゆる「人間国宝」とは重要無形文化財に指定された芸能、工芸技術などの保持者として各個認定された者の通称であり、本項で解説する国宝とは異なる[8]

文化庁は毎年、国宝・重要文化財(建造物)や重要伝統的建造物群保存地区内の伝統的建造物などの保存修理事業に対し、補助を行っており、「修理現場から文化力」という萌黄色ロゴマークを作成し、1989年平成19年)6月以降、保存修理の現場公開事業や、保存修理に関する普及・広報活動などで使用している[9]

国宝の件数

国宝の指定件数

2023年1月1日付[10]の国宝の指定件数[注 2]は以下のとおりである。

  • 総数 1,132件
    • 建造物 230件(294棟)
    • 美術工芸品 902件
      • 絵画 166件
      • 彫刻 140件
      • 工芸品 254件
      • 書跡・典籍 229件
      • 古文書 62件
      • 考古資料 48件
      • 歴史資料 3件

国宝の所在不明件数

2023年令和5年)4月時点の文化庁の調査結果により、2014年7月時点で国宝を含む重要文化財に指定されていた美術工芸品10,524件のうち、個人所有者の転居・死亡・社寺などからの盗難などにより所在不明と判明したものが139件(国宝0件)、追加確認が必要なものが49件(国宝7件)となっている[11]。所在不明139件のうち文化財種別件数では、工芸品75件(うち刀剣72件、うち盗難5件)、書籍・典籍22件(うち盗難1件)、彫刻15件(うち盗難12件)、絵画15件(うち盗難6件)、古文書10件(うち盗難3件)、考古資料2件(うち盗難1件)で、理由別件数では、所有者転居41件、所有者死去36件、盗難28件、売却9件、法人解散2件、不明など23件だった。このうち1950年(昭和25年)の文化財保護法制定以前に所在不明になったのが97件、以後が42件であった[12]。文化庁は2023年4月時点で所在不明だった139件の詳細を公表している[13]

「旧国宝」と「新国宝」

「国宝」という語の指す意味は文化財保護法施行(1950年)以前と以後とでは異なっている。文化財保護法施行以前の旧法では「国宝」と「重要文化財」の区別はなく、国指定の有形文化財(美術工芸品および建造物)はすべて「国宝」と称されていた。

「国宝」(national treasures, 国民/民族の宝物)の概念はアーネスト・フェノロサが考えたものだが、法令上、「国宝」の語が初めて使用されたのは1897年明治30年)の古社寺保存法制定時である。同法の規定に基づき、同年12月28日付けで初の国宝指定が行われた[14]。その後1929年昭和4年)には古社寺保存法に代わって国宝保存法が制定され[15]、同法は文化財保護法が施行される1950年(昭和25年)まで存続した。古社寺保存法および国宝保存法の下で指定された「国宝」は1950年時点で宝物類(美術工芸品)5,824件、建造物1,059件に及んだ。これらの指定物件(いわゆる「旧国宝」)は文化財保護法施行の日である同年8月29日付けをもってすべて「重要文化財」に指定されたものと見なされ、その「重要文化財」の中から「世界文化の見地から価値の高いもの」で「たぐいない国民の宝」たるものがあらためて「国宝」に指定されることとなった。混同を避けるため旧法上の国宝を「旧国宝」、文化財保護法上の国宝を「新国宝」と通称することがある。文化財保護法による、いわゆる「新国宝」の初の指定は1951年(昭和26年)6月9日付けで実施された。

以上のように「旧国宝」「新国宝」「重要文化財」の関係が錯綜しているため、「第二次世界大戦以前には国宝だったものが、戦後は重要文化財に格下げされた」と誤って理解されることが多い。旧法(古社寺保存法、国宝保存法)における「国宝」(旧国宝)と新法(文化財保護法)における「重要文化財」は国が指定した有形文化財という点で同等のものであり、「格下げ」されたのではない。また、文化財保護法によって国宝(新国宝)に指定された物件のうち、重要文化財に「格下げ」された例は1件もない。


注釈

  1. ^ 文化財保護法第27条第2項に、国宝は「重要文化財のうち」から指定することが明記されている。同法第37条第2項には「国宝以外の重要文化財」という文言がある。
  2. ^ 以下の情報は指定の「件数」であって、「点数」ではない。福岡県・宗像大社所有の宗像大社沖津宮祭祀遺跡出土品約8万点、京都・醍醐寺の醍醐寺文書聖教(もんじょしょうぎょう)69,393点、京都府立京都学・歴彩館が保管する東寺百合文書(とうじひゃくごうもんじょ)24,067通のように員数の多いものも件数としては「1件」と数えている。

出典

  1. ^ a b c 小学館『デジタル大辞泉』. “国宝”. コトバンク. 2020年5月30日閲覧。
  2. ^ a b c 三省堂大辞林』第3版. “国宝”. コトバンク. 2020年5月30日閲覧。
  3. ^ a b c 平凡社百科事典マイペディア』. “国宝”. コトバンク. 2020年5月30日閲覧。
  4. ^ a b 日立デジタル平凡社世界大百科事典』第2版. “国宝”. コトバンク. 2020年5月30日閲覧。
  5. ^ a b 小学館『精選版 日本国語大辞典』. “国宝”. コトバンク. 2020年5月30日閲覧。
  6. ^ a b ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』. “国宝”. コトバンク. 2020年5月30日閲覧。
  7. ^ a b 村重寧、小学館『日本大百科全書(ニッポニカ)』. “国宝”. コトバンク. 2020年5月30日閲覧。
  8. ^ 無形文化財”. 公式ウェブサイト. 文化庁. 2017年2月26日閲覧。
  9. ^ 修理現場から文化力”. 文化庁. 2023年11月23日閲覧。
  10. ^ 文化財指定等の件数 文化庁
  11. ^ 盗難を含む所在不明に関する情報提供について~取り戻そう!みんなの文化財~”. 文化庁 (2023年4月7日). 2023年4月26日閲覧。
  12. ^ 所在不明文化財(国指定)の内訳 文化庁 2023年4月7日
  13. ^ 所在不明になっている国指定文化財(美術工芸品)”. 文化庁 (2023年4月7日). 2023年4月26日閲覧。
  14. ^ 官報1897年12月28日 『告示 / 内務省 / 第88号 / 古社寺保存法ニ依ル國寶ノ資格アル物件/p378』
  15. ^ 官報1929年03月28日 『法律 / - / 第17号 / 國寶保存法/p759』
  16. ^ 宮内庁三の丸尚蔵館の今後の保存・公開の在り方に関する提言 第4回 宮内庁
  17. ^ 蒙古襲来絵詞(もうこしゅうらいえことば)収蔵作品詳細 宮内庁三の丸尚蔵館
  18. ^ 春日権現験記絵(かすがごんげんげんきえ)収蔵作品詳細 宮内庁三の丸尚蔵館
  19. ^ 唐獅子図屏風(からじしずびょうぶ)収蔵作品詳細 宮内庁三の丸尚蔵館
  20. ^ 動植綵絵(どうしょくさいえ)収蔵作品詳細 宮内庁三の丸尚蔵館
  21. ^ 蒙古襲来絵詞など国宝に 宮内庁保管で初―文化審議会 時事通信 2021年7月16日
  22. ^ 令和3年9月30日文部科学省告示第161・162号。
  23. ^ 皇居内の三の丸尚蔵館、収蔵品管理を宮内庁から文化庁へ移管 朝日新聞 2022年8月23日
  24. ^ 文化審議会答申 (国宝・重要文化財(美術工芸品)の指定等)Ⅱ.解説1.国宝(美術工芸品)の指定 文化庁
  25. ^ 『月刊文化財 664号』 2019, p. 8.
  26. ^ 文化財指定等の件数”. 公式ウェブサイト. 文化庁 (2019年3月1日). 2020年5月30日閲覧。



國寶 (映画)

(国宝 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/09/17 05:33 UTC 版)

國寶』(こくほう、英語: Lucille Love, Girl of Mystery, 「ルシール・ラヴ、神秘の少女」の意)は、1914年(大正3年)製作・公開、ユニヴァーサル・フィルム・マニュファクチャリング・カンパニー(現在のユニバーサル・ピクチャーズ)製作・配給によるアメリカ合衆国サイレント映画シリアル・フィルムである[1]。同社初のシリアルとして知られる[1]。日本では、本作の後に製作された『マスター・キイ』、『名金』の大ヒットの後で公開された[2][3]。日本での別題『ルシル・ラブ[3]、また戦後の文献では、旧漢字・略字とりまぜての『國宝』とも表記される[3]


  1. ^ a b c d e f g Lucille Love: The Girl of Mystery, Internet Movie Database (英語), 2010年7月12日閲覧。
  2. ^ a b c d 日本映画発達史 I 活動写真時代』 、田中純一郎中公文庫、1975年12月10日 ISBN 4122002850, p.254-255.
  3. ^ a b c d e 『20世紀アメリカ映画事典』、編・畑暉男、カタログハウス、2002年4月、ISBN 4905943507, p.47.
  4. ^ a b c Lucille Love: The Girl of Mystery, Allmovie, (英語), 2010年7月12日閲覧。
  5. ^ The Perils of Pauline - IMDb(英語), 2010年7月12日閲覧。
  6. ^ Grace Cunard - IMDb(英語), 2010年7月12日閲覧。
  7. ^ The Broken Coin - IMDb(英語), 2010年7月12日閲覧。
  8. ^ 『20世紀アメリカ映画事典』、p.35.
  9. ^ 『日本映画発達史 I 活動写真時代』、p.257.
  10. ^ Lucille Love, Girl of Mystery, silentera.com (英語), 2010年7月12日閲覧。
  11. ^ Edgar Keller - IMDb(英語), 2010年7月12日閲覧。
  12. ^ Alfred Hickman - IMDb(英語), 2010年7月12日閲覧。
  13. ^ Burton Law - IMDb(英語), 2010年7月12日閲覧。
  14. ^ Jean Hathaway - IMDb(英語), 2010年7月12日閲覧。
  15. ^ William White - IMDb(英語), 2010年7月12日閲覧。
  16. ^ Lionel Bradshaw - IMDb(英語), 2010年7月12日閲覧。
  17. ^ Lew Short - IMDb(英語), 2010年7月12日閲覧。


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