南極物語 音楽

南極物語

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/29 22:49 UTC 版)

音楽

音楽はヴァンゲリスが担当した。当時、ヴァンゲリスは映画『炎のランナー』のサウンドトラックビルボードのシングル/アルバムチャートで全米No.1を獲得、第54回アカデミー賞オリジナル作曲賞を受賞した直後で、『ブレードランナー』や『ミッシング』など世界中からオファーが殺到しており、依頼の際、マネージャーから報酬として当時の日本映画を数本撮れるほどの金額を提示された。一時は断念しかけたが、本人に参加を確約してもらい、マネージャーと粘り強く交渉してヴァンゲリスの音楽担当が実現した[17]

後述のテレビアニメ『さすがの猿飛』でのパロディ「肉丸南極物語」では、そのためにヴァンゲリスによって新曲も作曲されている[18]

宣伝と興行成績

フジサンケイグループの総力を挙げた宣伝とメディアミックスが行われた。『笑っていいとも!』にはタロとジロが出演[19]。1983年7月17日にはテレビアニメ『さすがの猿飛』でパロディ「肉丸南極物語」[18]、公開当日の7月23日には特別番組『南極物語スペシャル』を放送、制作秘話やエピソードを織り交ぜながら映画を紹介し、更に渡瀬恒彦植村直己の対談も放送[20]、さらにバラエティ番組オレたちひょうきん族』の「タケちゃんマン」で7月30日に「タケちゃんマンの南極物語の巻」が放送[21]。この他にもフジテレビとニッポン放送で連日大々的なキャンペーンが行われた。

映画公開自体をイベント化して大ヒットをもたらした大々的な宣伝は、当時の角川映画の方法論を踏襲してそのお株を奪うものであったが[22][23]、一方で電波の私物化であるとの批判も起こった[24]

全国キャンペーンには、タロとジロを演じた犬と、犬の飼い主役で3シーンのみ出演の荻野目慶子がキャンペーンガールとなって全国をまわった。荻野目はイメージソング愛のオーロラ」も歌い、フジサンケイグループのキャニオンレコードから発売された[25]。その他のメディアミックスについては、学研の『学習・科学』全誌で大々的に取り上げられ、学研とサンケイ出版から関連書籍が出された他、ポニーキャニオンからは当時の8ビットパソコン向けにゲームが発売された。

日本国内では1200万人を動員して61億円の配給収入を挙げた[26]1980年公開の黒澤明監督の『影武者』の記録を塗り替えて当時の日本映画の歴代映画興行成績配給収入)1位を記録し[27]、この記録は1997年公開の宮崎駿監督のアニメ映画もののけ姫』まで、あるいは実写映画としては2003年公開の『踊る大捜査線2』に抜かれるまで破られなかった。フジサンケイグループを中心に当時としては記録的な240万枚の前売り券が販売[28]。共同製作の学習研究社と協力して全国の家庭も対象に前売券を販売した[29]

上映時間など

本編

日本の劇場公開版の上映時間、ビデオテープレーザーディスクVHD、2001年にDVD)本編の収録時間は、いずれも約143分。初めてのテレビ放送で一度未公開シーンを追加し、2日に分け2時間・計4時間枠で放送された他は、編成上の都合により短縮編集版がテレビ放映されたこともある。

後年に、米国(英語吹替・112分)・オーストラリア(前同)・イタリア(イタリア語吹替・モノラル・90分)・フランス(フランス語吹替)の各国で「ANTARCTICA」のタイトルでビデオが発売された。日本版との差異の大半はシーンのカットによる時間短縮であるが、そのほかにシーンの脈絡が日本版と前後する部分(米国版)や、日本版(特別編含む)で全く使用されていない音楽(日本版ラストシーンの続きに当たるメイン・テーマのCD未収録部分約1分50秒間)を使用している部分(イタリア版)などがある。

特別編

公開1年後の1984年(昭和59年)10月5日6日に、製作元のフジテレビ系列で、前・後編に分け正味約180分の「南極物語 特別編」(劇場公開版に未収録の場面を加えた現在でいう「ディレクターズ・カット版」)が放送された。なおこの特別編は、以後再放送もビデオ・DVDなどで販売もされていない。

予告編

2001年(平成13年)11月21日に発売されたDVD(日本版)の特典ディスクには予告編が収録されている。日本版1編(1分20秒)と米国版2編(2分30秒と3分30秒)であり、日本版は初期のもので南極物語の曲は用いられていない。米国版のほうは(米国公開が日本公開の翌年であったこともあり)南極物語の曲が使用されており、2分30秒版ではグレゴリー・ペックナレーションをしている。

実際には、日本版にもきちんと南極物語の曲を使用、「文部省特選」である旨も表示し、後に「第二回予告篇コンクール<邦画部門>金賞」を受賞している完成度の高い後期版(3分20秒)の予告編(画面では「予告篇」と表示)があったが、このDVDには収録されていない。


注釈

  1. ^ 渡瀬恒彦は、2011年放送のテレビドラマ『南極大陸』にも主人公の父親役として出演している。
  2. ^ 「森島」はパンフレット等の誤植。
  3. ^ 特別出演※特別出演のクレジット表記なし。
  4. ^ a b 助監督を兼任。
  5. ^ 宮忠臣著『タロ・ジロの犬教育基本法「南極物語」のドッグ・トレーナーが明かす名演技の秘密』(学研、1984年)に詳しい。『いつもとなりに犬がいた』(PHP研究所、2009年)でもふれている。映画公開後の1991年には環境保護に関する南極条約議定書英語版が採択され、南極大陸への犬の持ち込みは禁止されている。
  6. ^ 村山は1968年(昭和43年)に第9次越冬隊を率い、日本人として初めて南極点に到達した。
  7. ^ 本書は改訂改題し、北村泰一『南極越冬隊 タロジロの真実』(小学館文庫、2007年)として再刊された。
  8. ^ 本書は改訂され、『タロ・ジロは生きていた 南極・カラフト犬物語』(菊池徹監修、銀の鈴社、2004年)で再刊された。

出典

  1. ^ a b c d Antarctica”. IMDb(Company Credits). Amazon.com. 2020年6月2日閲覧。
  2. ^ a b c d e Antarctica”. IMDb(Release Info). Amazon.com. 2020年6月2日閲覧。
  3. ^ Les films japonais sortis en France en salle(フランスの劇場で公開された日本映画)”. 電気館 Denkikan ─ Le blog du cinéma japonais. 2020年6月2日閲覧。
  4. ^ ANTARCTICA(20 mars 1985)”. ALLOCINÉ(アロシネ). 2020年6月2日閲覧。
  5. ^ 歴代ランキング - CINEMAランキング通信” (2014年7月7日). 2014年7月12日閲覧。
  6. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac ad ae af ag ah ai aj ak al 「『熱討スタジアム』 『南極物語』を語ろう」『週刊現代』2022年8月6日号、講談社、140-143頁。 
    "健さんは絶句、監督は骨折…映画『南極物語』のヤバすぎる撮影秘話プロデューサーとキャストが語り尽くす". 現代ビジネス. 講談社. 2022年8月6日. 2022年8月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年7月9日閲覧
  7. ^ 1983年配給収入10億円以上番組 - 日本映画製作者連盟
  8. ^ 「映画人生50年・永遠の青春・古川勝巳」編集プロジェクトチーム編集『映画人生50年 永遠の青春 古川勝巳』古川爲之・古川博三、1987年、p.88
  9. ^ 大高宏雄『日本映画のヒット力 なぜ日本映画は儲かるようになったか』ランダムハウス講談社、2007年、p.56
  10. ^ 映画の神さま 2012, p. 284.
  11. ^ 映画の神さま 2012, pp. 38–39.
  12. ^ a b c d e f 角谷優「野上龍雄、追悼 『野上さんのこと』」『「映画芸術」』2013年秋 第445号、編集プロダクション映芸、88-94頁。 
  13. ^ 映画の神さま 2012, pp. 105–106.
  14. ^ 映画の神さま 2012, p. 109.
  15. ^ 斉藤 守彦 [@morihikosaitou] (2015年11月12日). "映画界でもよくある話で、フジテレビが「南極物語」の配給を打診しに東映に行った際、岡田茂が「犬がウロウロするだけで客が来たら、ワシらが苦労して映画撮る必要ないやろ!!」と、門前払いしたのは有名な話です。". X(旧Twitter)より2023年7月9日閲覧
  16. ^ 谷口一久・大出庸子『いつか、オルカ』アワーズ、2007年、p.115
  17. ^ 映画の神さま 2012, pp. 131–133.
  18. ^ a b 首藤剛志第61回 ここまで言っていいのか『さすがの猿飛』」 WEBアニメスタイル シナリオえーだば創作術 2006年8月9日
  19. ^ 斉藤守彦「斉藤守彦の映画経済スタジアム」『インビテーション』2006年6月号
  20. ^ 1983年7月23日付「朝日新聞ラジオ・テレビ欄の番組紹介
  21. ^ 高田文夫責任編集『笑芸人』1999冬号VOL.1、白夜書房、1999年、p.29
  22. ^ 『キネマ旬報ベスト・テン全史1946-1996』キネマ旬報社、1984年初版、1997年4版、p.269
  23. ^ 平辻哲也「『アマルフィ女神の報酬』とフジテレビ映画小史」『キネマ旬報』2009年7月下旬号。pp.31-32
  24. ^ ザテレビジョン編『2000年のテレビジョン 放送メディア大激変のシナリオ』角川書店、1993年、p.20
  25. ^ 荻野目慶子『女優の夜』幻冬舎、2002年、pp.110、117
  26. ^ 映画の神さま 2012, pp. 135–137.
  27. ^ 朝日新聞』1983年8月22日付夕刊(東京)、15頁。
  28. ^ 日経産業新聞』1983年8月31日付、14頁。
  29. ^ 大高宏雄『日本映画のヒット力 なぜ日本映画は儲かるようになったか』ランダムハウス講談社、2007年、p.19
  30. ^ a b c 週刊東洋経済』1986年8月2日号、122頁。
  31. ^ 「南極観測隊OB会報」2008年11月第5号、p.10-11タロジロ再会時の疑問(前編)北村泰一、
  32. ^ 毎日新聞 縮刷版毎日新聞社、1984年10月5日・10月6日付ラジオ・テレビ欄。 
  33. ^ 情に厚い男だった渡瀬さん「南極物語」タロとジロ 共演後も飼い続けた”. Sponichi Annex (2017年3月16日). 2017年3月17日閲覧。






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