ウコン 栽培

ウコン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/16 09:44 UTC 版)

栽培

早春に種球の育苗を行い、春に植え付け、晩秋から初冬にかけて収穫する。栽培の難度はふつうで、輪作の年限は2年とされる[16]。根がはる作物なので、株間を広く取ってを植え付ける[16]。乾燥や寒さには弱いことから、夏に晴天が続くときは水やりをする[16]

ウコンの種球を植え付けする畑は、元肥堆肥などをすき込んでおき、を立てておく[16]。種球は小さいものはそのままでよいが、大きいものは50グラム (g) 程度の大きさに割る[16]。種球から芽出しして育苗するため、腐葉土を入れた育苗ポットに種球を植え、土が乾いたら湿る程度に水やりをして、発芽から10センチメートル (cm) 程度の苗になるまで暖かい環境で育てる[16]。苗を畑に植え付けるときは、ポットごと水につけて吸水させてから、株間80 cm以上とって植え付ける[16]。植え付けから2週間後から、ぼかし肥や鶏糞などで追肥を行い、以後2週間の1度のペースで追肥を行なっていくと、草丈が90 - 140 cmくらいまで生長していく[16]。夏に開花して、晩秋のころになると葉が枯れてきて根茎の収穫期を迎える[16]。葉が枯れてきてが降りる前に、まわりから掘って収穫する[16]

生産加工

インドのウコン畑
ウコンの根茎と粉末。粉末は黄金色をしている。

生産地はインド中国台湾日本、その他南アジア東南アジアなどで[13]、インドがウコンの生産量・輸出量ともに世界一である。ウコンの品種は現在、約50種類ほどあり、インドだけで30種類を越える新しい品種が育てられている。日本には18世紀(享保年間)に渡来し、南九州、沖縄、小笠原など温暖な地方で栽培されている[8][15][12]

地下に肥大した濃黄色の根茎を持つ。この根茎を水洗して皮を剥き、5 - 6時間煮た後2週間ほど天日で十分乾燥させて細かく砕き、使用する。沖縄県では煎じたものを飲料として用いる。県内では缶入りの「うっちん茶」も多くのメーカーから発売されている。

成分組成

ターメリック(スパイス、粉)
100 gあたりの栄養価
エネルギー 312 kcal (1,310 kJ)
67.14 g
糖類 3.21 g
食物繊維 22.7 g
3.25 g
飽和脂肪酸 1.838 g
一価不飽和 0.449 g
多価不飽和 0.756 g
9.68 g
ビタミン
チアミン (B1)
(5%)
0.058 mg
リボフラビン (B2)
(13%)
0.150 mg
ナイアシン (B3)
(9%)
1.350 mg
パントテン酸 (B5)
(11%)
0.542 mg
ビタミンB6
(8%)
0.107 mg
葉酸 (B9)
(5%)
20 µg
ビタミンC
(1%)
0.7 mg
ビタミンE
(30%)
4.43 mg
ビタミンK
(13%)
13.4 µg
ミネラル
ナトリウム
(2%)
27 mg
カリウム
(44%)
2080 mg
カルシウム
(17%)
168 mg
マグネシウム
(59%)
208 mg
リン
(43%)
299 mg
鉄分
(423%)
55.00 mg
亜鉛
(47%)
4.50 mg
(65%)
1.300 mg
マンガン
(943%)
19.800 mg
セレン
(9%)
6.2 µg
他の成分
水分 12.85 g

%はアメリカ合衆国における
成人栄養摂取目標 (RDIの割合。
出典: USDA栄養データベース(英語)

ウコンには約5 %前後の精油成分(エッセンシャルオイル)、と約5 %前後のポリフェノール類(クルクミン)が含まれている[17]

クルクミンは、ウコンの活性成分であり、別名で C.I. 75300、Natural Yellow 3 などの名称がある[注 2]。クルクミンは少なくとも2つの互変異性体 (tautomeric form)、ケト・エノール体が存在し、固相時にはケト体を、溶液中ではエノール体をとる。クルクミンはpHによる変色域を持つことが知られている。pH7.4以下の酸性~中性溶液下では黄色を呈す一方、pH8.6以上の塩基性(アルカリ性)溶液下では明るい赤色に変化する。

精油成分としては、ターメロン(胆汁分泌促進)、シネオール(胆汁・胃液の分泌の促進)、α-クルクメン(コレステロールを溶かし、高脂血症に有効)、クルクモール(抗がん作用)、β-エレメン(腫瘍予防の効果)、カンファー(健胃・殺菌効果)、テルペン類などが知られている(各成分の後ろの括弧内はこれまで報告されている、各成分での効果候補である)

クルクミンと精油成分の、各々の含有比率は、秋ウコンと類似種の春ウコン、紫ウコンで異なる。秋ウコンはクルクミン含有量が豊富で精油成分には乏しく、春ウコンは精油成分が比較的豊富である。紫ウコンはクルクミンに乏しく精油成分のみの組成になる。

上記にあげた、主な有効成分の他にウコン根茎には、ミネラル鉄分)などの微量元素や、食物繊維デンプンカリウムビタミンC、および、カロテンなどが含まれている。特に秋ウコンには鉄分が豊富に含まれており、ウコンをそのまま利用する場合に、ミネラルの豊富さが生体に影響を及ぼす場合がときおり報告されている。


注釈

  1. ^ 例えば、ハウス食品の二日酔い対策ドリンク「ウコンの力」など。
  2. ^ またIUPAC名では、(1E,6E)-1,7-ビス(4-ヒドロキシ- 3-メトキシフェニル)-1,6- ヘプタジエン-3,5-ジオン;(1E,6E)-1,7-bis (4-hydroxy-3-methoxyphenyl) -1,6-heptadiene-3,5-dione となる。

出典

  1. ^ a b c 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Curcuma longa L. ウコン(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年1月7日閲覧。
  2. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Curcuma domestica Valeton ウコン(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023-+01-07閲覧。
  3. ^ a b c d e f g h i j k l m n 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編 2012, p. 103.
  4. ^ a b c d e f Herbs at a Glance - Turmeric (Report). アメリカ国立補完統合衛生センター. 30 November 2016.
  5. ^ 小曽戸洋「『日本薬局方』(15改正)収載漢薬の来源」『生薬学雑誌』第61巻第2号、2007年、p.69、ISSN 00374377NAID 40015616633 
  6. ^ 『清異録 江淮異人録』上海古籍出版社、2012年。 
  7. ^ a b c d e f g h i j k l m n ウコン Curcuma longa L.”. 熊本大学薬学部 薬草園 植物データベース. 熊本大学薬学部. 2023年1月7日閲覧。
  8. ^ a b c d e f g h i j k 貝津好孝 1995, p. 120.
  9. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Curcuma aromatica Salisb. キョウオウ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年1月7日閲覧。
  10. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Curcuma phaeocaulis Valeton ガジュツ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年1月7日閲覧。
  11. ^ ガジュツ Curcuma phaeocaulis Valeton”. 熊本大学薬学部 薬草園 植物データベース. 2023年1月7日閲覧。
  12. ^ a b c d e f g h i j 磯田進. “今月の薬草:ウコン Curcuma longa L. ( ショウガ科 )”. 薬学豆知識. 日本薬学会. 2023年1月7日閲覧。
  13. ^ a b c d e f 新常用和漢薬集:ウコン(鬱金)”. 東京生薬協会. 2023年1月7日閲覧。
  14. ^ a b c d 薬草の花:ウコン(鬱金)【10月】”. 生薬ブログ. 日野製薬 (2019年10月1日). 2023年1月7日閲覧。
  15. ^ a b c d 季節の花(東京都薬用植物園):ウコン(ショウガ科)”. 東京生薬協会. 2023年1月7日閲覧。
  16. ^ a b c d e f g h i j k 金子美登 2012, p. 165.
  17. ^ “Turmeric--chemistry, technology, and quality”. Crit Rev Food Sci Nutr 12 (3): 199–301. (1980). doi:10.1080/10408398009527278. PMID 6993103. 
  18. ^ 日本のハーブ事典 村上志緒 東京堂出版
  19. ^ 日本のハーブ事典 村上志緒 東京堂出版P85
  20. ^ 大澤俊彦、「がん予防と食品」『日本食生活学会誌』 2009年、20巻 1号、11-16頁、doi:10.2740/jisdh.20.11
  21. ^ 水野瑞夫「ウコン」『日本薬草全書』新日本法規、2000年、74-76頁。
  22. ^ 石田 聡他:健康食品による薬物性肝障害,肝胆膵48(6):747-755,2004
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  25. ^ Isawa M.,et al.(2010)Restriction of calorie and iron intakes resuluts in reduction of visceral fat and serum alanine aminotransferase and ferritin levels in patients with chronic liver disease. Hepatol Res.2010 Dec;40(12):1188-94(PMID 20880065)
  26. ^ Jun-ichi NAGATA and Morio Saito (2005) Evaluation of correlation between amount of curcumin intake and its physiological effects in rats. Food Sci. technol. Res.,11(2), 157-160,2005
  27. ^ 健康・栄養ニュース第15号P5(独立行政法人 国立健康・栄養研究所)
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  29. ^ 中本譲 「う金(ウコン)の人体に及ぼす影響及び副作用についての検討」 日本栄養・食糧学会総会講演要旨集 巻:49th 頁:206
  30. ^ 矢島 純 「Database of side effect cases. New trial of presentation of drug information. Dermatological medicines. A case of allergic contact dermatitis by external-use drug containing curcuma」 診断と治療 巻:84頁:760 特殊号:増刊号
  31. ^ ウコン摂取で、肝機能障害、悪化し死亡”. 医学雑談. 三田国際ビルクリニック. 2012年7月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年10月3日閲覧。
  32. ^ ウコン摂取で肝障害 肝硬変の60代女性、症状悪化し死亡 「産経新聞」2004年10月19日
  33. ^ 伊藤弘康「臨床医の立場から見た肝臓(肝障害)と健康食品について」(PDF)『生物試料分析』第32巻、第1号、生物試料分析研究会、66頁、2009年。 オリジナルの2014年4月14日時点におけるアーカイブhttps://web.archive.org/web/20140414225725/abs2009.umin.jp/summary/sf3.pdf2010年10月3日閲覧 
  34. ^ 小池麻由, 大津史子, 榊原仁作 ほか、「「原著」健康食品・サプリメントによる健康被害の現状と患者背景の特徴」 『医薬品情報学』 2013年 14巻 4号 p.134-143, doi:10.11256/jjdi.14.134
  35. ^ 小島裕治 「健康食品, 特にウコンによる肝障害の検討」『日本消化器病学会雑誌』 101 : 607, 2004


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