アケビ 栽培

アケビ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/02 00:04 UTC 版)

栽培

挿し木で繁殖することができ、鉢植えや、棚を作りアーチ状に仕立てて庭にも植えられる[16][4]

商業栽培では、品質に優れたミツバアケビ由来の品種が多く用いられる。安定した結実のため、人工授粉を行うことがある。自家不和合性があり、他品種との混植などが必要である。アケビとミツバアケビは交雑しやすいため、ミツバアケビ由来の品種に対し、アケビを授粉樹として用いることもある。3葉種と5葉種では熟期が2 - 4週間程度異なる。

人間との関わり

アケビは、ミツバアケビ同様に蔓、葉、根、果実には薬草としての効能があると言われている。葉や果実、若芽は食用にする[16]。観賞用に、庭木盆栽に仕立てられる[8]。成熟した蔓は、を編むなどして工芸品の素材として利用される。

食用

秋(9 - 10月ごろ)に熟した果実の果皮と、黒い種子を包む白い果肉(胎座)は食べられる[8][12]。秋に開裂した果実を採って、昔から山遊びする子供の絶好のおやつとして親しまれてきた[18]。食べるときは、白い寒天質(胎座)をそのままほおばり、果肉を味わったあと、中の種子を吐き出す[14]。食味は、半透明の白い果肉はとろりとした爽やかな甘みがあり、黒い種子は苦味があるので除かれる[19][13]。種子を含む果肉をそのままホワイトリカーに漬けて、果実酒(健康種)にもできる[20][13]

厚い肉質の果皮(果壁)はほろ苦く、内部にひき肉味噌マイタケなどのキノコナスを刻んで詰めたものを蒸し焼きや油で揚げたり[5][14]、挽肉の味噌炒めを詰めて焼いたり[19][12]、刻んで味噌炒めにするなど[20]、こちらは山菜料理として親しまれている。アケビの皮の詰め物は、はじめにいったん茹でこぼしてアクを抜いておかないと苦みが強い[18]。強いアクを抜くため、保存食として一晩酢に漬けて梅酢漬けにしたり[13]、いったん塩漬けにして、塩抜きして利用する方法もある[18]。詰め物のほか、果皮を短冊に切って天ぷら唐揚げにも利用できる[18]

春の若芽も食用になる[8]。採取時期は暖地が3 - 4月ごろ、寒冷地では4 - 5月ごろが適期とされる[12]東北地方などでは[注 2]、春に20 - 30 cmほどに伸び始めたつるや、4月ころの若い葉を摘んで山菜として利用し、塩ひとつまみ入れた湯で軽く茹でて水にさらし、おひたし和え物、汁の実、バター炒め混ぜご飯などにする[19][5][12]。若芽も果皮もアクが強いため、茹でて冷水にさらすが、ほろ苦さと歯ごたえがアケビのおいしさの身上であるので、さらしすぎないように調理する[12]。その他、民間では葉を乾燥させてアケビ茶にする[16]。栄養的には、果肉にはビタミンC、果皮にはカリウムが含まれている[17]

秋田県ではアケビの種子搾油し、食用油としていた地域がある。アケビは油分が豊富で、種子20リットルから油3リットルが採れていた[21]。かつては「食用油の王様」と呼ばれる高級品であったが、昭和初期には安価な食用油が広まり衰退した。2017年からは旧西木村(現仙北市)が中心となり復活が試みられ、2017年にふたたび商品化されるに至った[22][23]

生薬

茎(蔓)、果実ともに内臓の熱を取って尿を出す薬草である[10]。ただし、妊婦や胃腸が冷えやすい人への使用は禁忌とされる[10]。木質化した蔓には、配糖体のアケビンやカリウムイオンなどを含んでおり、カリウムイオンが人間の体内に残ったナトリウムイオン(塩分)を排除するとともに、尿の出をよくする利尿作用があることが知られており、利尿薬として用いる[19]

つる性の茎を輪切りにして乾燥させたものは、漢方木通(もくつう)という生薬である[16]日本薬局方に記載の定義による)。葉が落ちる11月頃に、直径1 - 2 cmの太さに木質化した蔓を採集して、厚さ2 - 3ミリメートル (mm) ほどに輪切りにして天日で乾燥させて調製される[19][16]。木通は、利尿作用、抗炎症作用、通乳作用などがあり、竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)、当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)などの漢方方剤に使われる[24]民間療法では、熱感があるときの急性腎炎、妊娠腎、脚気膀胱炎など、身体にむくみがあるようなときに、木通1日量5 - 20グラムを水500 - 600 ccで半量になるまで煎じて、食間3回に分けて服用する用法が知られている[19][16]

果実は8 - 9月に成熟したものを採って天日乾燥したものが、八月札(はちがつさつ)と称される生薬になる[10]。民間療法では、熱感がある尿管結石睾丸腫瘍に対する薬効が期待されて、乾燥果実1日量10グラムを水600 ccに入れて煎じ、3回に分けて服用する用法が知られる[10]。また果実は、果実酒にもなる[19]。熟した果実から果肉だけを取り出して、35度の焼酎720ミリリットルに対して果実300グラム分の果肉と、1個分の果皮を漬け込んで3か月密封保存して果実酒をつくり、1日盃1杯ずつ飲むと、肝臓炎、利尿、むくみ、頭痛によいといわれている[7][18]

アケビが、漢方薬として使う中国の「木通」と同じものであるかについては疑問とする意見もある[14]。まぎらわしいものに関木通(かんもくつう)というものがある。これはアケビ類とは別の植物(ウマノスズクサ属)であり、腎臓障害を起こすおそれのある成分アリストロキア酸が含まれている。名前が似ている上、中国などでは関木通を「木通」としていることもあるので十分な注意が必要である。「木通」を利用する場合は日本薬局方のものが無難である。

近縁種など

同属のものとしては日本には以下のものがある。いずれも新芽や果実が食用になる[9]

ミツバアケビ Akebia trifoliata
小葉が3枚(3出複葉)でアケビより幅が広く、縁には大きな波状の鋸歯があり、雄花雌花ともに濃紫色であることで見分けられる。往々にしてアケビと混じって生育しており、区別せずに果実や新芽が食用として利用されることが多い。北海道・東北の地域にはアケビよりもミツバアケビが多く、つるも太い[9]。新芽は、特に山菜名で「木の芽」とよぶ[5]。アケビ同様に利用できる[12]。つるはアケビ細工にも使われる[9]
ゴヨウアケビ Akebia × pentaphylla
アケビとミツバアケビの雑種(自然交配種)[11]。小葉は5枚だがミツバアケビのように幅が広く、縁に大きな波状の鋸歯を持つなど、両種の特徴を受け継いでいる。また、雑種のため果実はできない。ただし、アケビを別名で「ゴヨウアケビ」と呼んでいる場合もある[9]

また日本には、アケビ属以外のアケビ科植物として常緑ムベ(ムベ属)が分布し、トキワアケビの別名をもつ[5]。ムベは小葉が5~7枚と多く、葉が常緑で厚みがあること、雄花雌花はほぼ同形で淡黄白色で半開し、内側に淡紅紫色の筋があり、果実は熟しても裂開しないことなどでアケビと簡単に見分けることができる[5][14]


注釈

  1. ^ 横から見ると右方向に巻き上がる[4]
  2. ^ 東北地方では、アケビよりもアクが少ないミツバアケビの若芽を「キノメ」とよんで珍重している[12]

出典

  1. ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Akebia quinata (Houtt.) Decne. アケビ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2020年5月23日閲覧。
  2. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Akebia quinata (Houtt.) Decne. f. polyphylla (Nakai) Hiyama アケビ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2020年5月23日閲覧。
  3. ^ a b c d e f 西田尚道監修 学習研究社編 2009, p. 12.
  4. ^ a b c d e f g h i j 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 2014, p. 227
  5. ^ a b c d e f g h i 高橋秀男監修 2003, p. 122.
  6. ^ a b 戸門秀雄 2007, p. 67.
  7. ^ a b c d e f g 田中孝治 1995, p. 121.
  8. ^ a b c d e f 平野隆久監修 永岡書店編 1997, p. 241.
  9. ^ a b c d e f g h 戸門秀雄 2007, p. 69.
  10. ^ a b c d e f g h 貝津好孝 1995, p. 118.
  11. ^ a b c 大嶋敏明監修 2002, p. 31.
  12. ^ a b c d e f g h i 金田初代 2010, p. 66.
  13. ^ a b c d e f 篠原準八 2008, p. 88.
  14. ^ a b c d e f g h i j 田中潔 2011, p. 86.
  15. ^ a b c d 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 2012, p. 200.
  16. ^ a b c d e f g h i j k l m n o 馬場篤 1996, p. 16.
  17. ^ a b 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編 『かしこく選ぶ・おいしく食べる 野菜まるごと事典』成美堂出版、2012年7月10日、214頁。ISBN 978-4-415-30997-2
  18. ^ a b c d e f 戸門秀雄 2007, p. 70.
  19. ^ a b c d e f g 田中孝治 1995, p. 122.
  20. ^ a b 高橋秀男監修 2003, p. 123.
  21. ^ 渡辺資仲「アケビ」『林業百科辞典』p7 日本林業技術協会 1984年
  22. ^ 池本敦「地域活性化を目指したアケビ種子抽出油脂研究会の活動」『ビックあきた』第300巻、財団法人あきた企業活性化センター。 
  23. ^ 仙北の高級「あけび油」復活 100本限定で発売”. 朝日新聞 (2017年2月7日). 2020年4月29日閲覧。
  24. ^ 大塚敬節『漢方医学』(第3版)創元社〈創元医学新書〉、1990年(原著1956年)、229・238・253頁頁。ISBN 4-422-41110-1 






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