接合菌とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > デジタル大辞泉 > 接合菌の意味・解説 

せつごう‐きん〔セツガフ‐〕【接合菌】

読み方:せつごうきん

有性的に接合胞子をつくる菌類栄養状態良い環境では胞子嚢中に胞子をつくり無性的に増殖する。ケカビ・クモノスカビ・ハエカビなど。


接合菌類

同義/類義語:接合菌
英訳・(英)同義/類義語:zygomycete, Zygomycota

クモノスカビのように多菌糸作る菌類
「生物学用語辞典」の他の用語
生物の名前総称など:  担子胞子  担子菌  指標生物  接合菌類  放射相称動物  新口動物  旧口動物

接合菌門

(接合菌 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/05 00:12 UTC 版)

接合菌
分類
: 菌界 Fungi
: 接合菌門 Zygomycota

接合菌門(せつごうきんもん)は、界の中の分類群で、接合胞子嚢を形成するのを特徴としている。古くから認められた分類群ではあるが、現時点では解体されることが提案されている。従って、以下の記述はそれ以前の体系によるものである。

体制

もっとも身近に見られるのは、ケカビクモノスカビである。いずれもカビとしては大柄で、太い菌糸からなり、基質中に菌糸をのばして栄養を摂取する。菌糸には隔壁がなく、多核体である。菌糸のあちこちから、細く分枝した仮根状菌糸をのばす。

基質上の菌糸体から生じて空中にのびた柄の先にふくらみが生じて、その内部が多数の胞子となる。これを胞子のうと呼び、胞子が成熟すると、外壁が破れて胞子のう胞子が散布される。

その他の接合菌では、菌糸体は多核体のものから、規則正しい隔壁を持つものまで様々である。ハエカビ目のものは菌糸体の発達が良くない。トリモチカビ目のものは、非常に細い菌糸を形成する。特に菌寄生のものは、相手菌糸内に吸器を侵入させる。

胞子のうの形にはいろいろあり、仲間によっては少数の胞子のみを含み、胞子のう全体が散布体として働く小胞子のう、細長い袋に1列に胞子が入り、胞子のう全体が節に分かれるようにして散布される分節胞子のうなどがある。小胞子のう内の胞子が一つだけのものでは、不完全菌分生子との区別が難しい場合がある。また、ハエカビ目のものなどは分生子と考える見方もある。

アツギケカビ(エンドゴーン)目とグロムス目のものは、胞子のう胞子や厚膜胞子などを菌糸が包んで、肉眼的な大きさの球形の子実体を地下に生じる。

生活環

無性生殖は胞子嚢胞子などによる。胞子のう胞子は発芽して、菌糸体を形成する。

胞子嚢は菌糸の先端がふくらんで、内部が体細胞分裂によって細分されたもので、表面の胞子嚢壁が崩れるか割れることで胞子の分散が行われる。多くのものでは胞子嚢柄の形などに様々な特殊化が見られ、また、ごく少数の胞子を含んでそのまま分散体となる小胞子嚢や、内部に一列に並んだ胞子を含み、胞子一個ずつに折れて分散する分節胞子嚢など、特殊な形になった例もある。胞子一個だけを含むものは時に分生子と言われた。真性の分生子を持つ群もある。

有性生殖は、接合胞子のうが形成されることで行われる。ケカビの場合、好適な菌と出会った場所で、両者の菌糸が接近し、菌糸の先端がふくらみ、その両者が接合して、中間に球形の接合胞子のうが作られる。接合胞子のうは成熟すると黒っぽくなり、堅くでこぼこした壁を持つが、その内部には1つの接合胞子を含む。

減数分裂は、接合胞子の中で行われる。接合胞子は発芽すると、直接に胞子のう柄をのばし、胞子のう胞子を形成する。菌糸体は単相で、世代交代はない。

なお、多くの種では、互いに接合できる株が決まっていて、通常+-と表現されるが、符号が同じもの同士では接合できない。これを自家不和合性 (Heterothallic) という。自家和合性 (Homothallic) のものでは、同一株内でも接合胞子が形成される。

なお、接合胞子のう形成に際して、ケカビの場合には平行した2本の菌糸から、互いに配偶子のうをのばして接合するため、全体としてはH字型になる。これに対し、コウガイケカビやトリモチカビ目では両菌糸がいったん接触を持ち、それから配偶子のうが一度離れて再び接触をとる形になって、そこに接合子のうができる。全体としてはやっとこで接合子のうを挟んだような形になる。キクセラ目やハエカビ目では通常の菌糸が接合して、接合部の側面に出芽する形で、接合胞子のうが形成される。

また、ケカビでは配偶子のうに性的な分化が見られないが、ツガイケカビ(Zygorhynchus)などでは大小の分化を生じている。

分類

伝統的にはケカビのような菌類を中心に立てられた門である。後にトリコミケス類がこれに含められた。2000年代までは、以下の二綱を含む体系が取られた。

  • 接合菌綱:2000年代初頭において約1000種ほどが知られる。様々な群を含むが、菌糸を形成する糸状菌的な形態のものである。以下の目が認められる。
  • トリコミケス綱:すべてが単純な形の菌体を持ち、昆虫などの小動物の消化管内などに附着。寄生であるかどうかは不明。4目がある。
    • ハルペラ目:菌体の先端部分が単細胞に分かれた後、各細胞の側面にやや細長い細胞が出芽するようにして胞子を形成する。
    • アセラリア目:菌体先端部分から出た枝が単細胞に分断されて胞子となる、分節胞子を形成する。
    • エクリナ目:菌体内部が胞子に分かれ、胞子嚢となる。
    • アメビディウム目:通常は菌体内部全部が胞子に分かれる胞子嚢胞子で繁殖する場合と、菌体内部が分断されて形成されるアメーバ状細胞による場合とがある。

生息環境

接合菌綱
ケカビ類(ケカビ目とその周辺のもの)は、多くは有機物を分解して生活する腐生菌である。成長が早く、糖分など分解しやすい成分を主に利用する。腐敗物や排泄物の分解過程や糞生菌遷移では、初期に出現する場合が多い。地上の土壌中には広く生息する。動物からも興味深い種が多数知られている。また、植物に被害を与えるものもある。
また、ハエカビ、トリモチカビの仲間には、昆虫や小動物、菌類に寄生するものが多い。特異なものとしては、土壌中に菌糸を広げ、その表面で線虫ワムシをとらえて栄養を吸収する生活をするものも知られている。線虫を捕らえるものは、線虫捕食菌とよばれる。
エンドゴーン(アツギケカビとも)、グロムス(最近は Glomeromycota門として独立させることが多い)の仲間は、多くの陸上植物の根に菌根を形成して、共生関係にあり、植物の生長に重要な役割を持っていると考えられている。
トリコミケス綱
この綱に属する菌は、すべてが、昆虫多足類などの節足動物の腸内に生活している。その体は紐状など、単純な形の菌糸体のものが多く、その端で腸壁に着くようになっている。寄生しているのかどうかなど、詳細は判明していないことが多い。

利用

一部の菌が発酵食品に用いられる。紹興酒には普通コウジカビを使わず接合菌類(クモノスカビRhizopus) 属、ケカビMucor) 属)を使う。またテンペインドネシア納豆風の食品)もRhizopus oligosporus で発酵させる。Rhizomucor miehei からはチーズ製造に用いるレンニンが得られる。

その解体

2007年、英国菌学会報に提案された菌類全体の分類体系の見直し [1]では、接合菌門そのものが認められていない。これは、ここに含まれていた個々の群が、それぞれに独立性が強い上に、それらの間の類縁関係が確定できない、との判断によっている。そのために、それらは門を指定しないままに亜門としてある。おおよそは以下のようなものである。

  • グロムス目のものは昇格させてグロムス門とする。
  • 接合菌綱のそれ以外のものは四つの亜門に。詳細は接合菌綱を参照。
  • トリコミケス綱のうち、ハルペラ目とアセラリア目は接合菌綱のキックセラ目などとともにキックセラ亜門に。それ以外のアメビディウム目とエクリナ目はメソミケトゾアに含まれるものとして、菌界から切り離された。

その後も検討は続き、情報が集まるにつれてその系統関係も次第にはっきりしてきた結果、2023年時点ではケカビ亜目、クサレケカビ亜目、グロムス亜目をケカビ門 Mucoromycota に、トリモチカビ亜門、ハエカビ亜門、キックセラ亜門をトリモチカビ門 Zoopagomycota に纏める説が定着しつつある[2]。ただし、2011年現在においても専門分野でこの名(Zygomycota)が使われている事例もあり[3]、今後もしばらくは見るものと思われる。

出典

  1. ^ David S. HIBBETT et al. (2007). “A higher-level phylogenetic classification of the Fungi”. Mycological Research 111: 509-547. 
  2. ^ 瀬戸(2013) p.26
  3. ^ Jiang et al.p.43

参考文献

  • Alexopoulos C. J. et al.Introductory Mycology 4th ed.,1996
  • 細矢剛責任編集、『菌類のふしぎ-形とはたらきの驚異の多様性』、(2008)、東海大学出版、国立科学博物館叢書9
  • Xianzhi Jiang, Hanying Yu, Meichun Xiang, Xianyung Liu, & Xingzhong Liu, 2011. Echinochlamydosporium variabile, a new genus and species of Zygomycota from soil nematodes. Fungal Diversity,46:pp.43-51.
  • 瀬戸健介、「真菌類基底部系統群の分類・系統学的研究の現状」、(2023)、日菌報 64: p.25-40.

接合菌

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/26 08:34 UTC 版)

線虫捕食菌」の記事における「接合菌」の解説

トリモチカビ目には、線虫寄生菌とともに線虫捕食菌含まれている。接合菌の多くは、ほかの生物細胞原形質を主に摂取して生活しており、接合菌に所属する線虫捕食菌は、線虫自体主たる栄養源として生活していると考えられる。Acaulopage 属などのトリモチカビ科いくつかと、ヘリコケファルム科のものが線虫捕食菌として振る舞う。これらはいずれも非常に細い菌糸をのばし、特に何も構造作らないか、簡単な突起状の捕獲器を作るいずれも純粋培養された例がないかあるい培養困難なものであり、線虫のみを栄養源として成長するらしい。ヘリコケファルム科のものは、高さ数mm程度菌糸の上胞子をつけるので、肉眼でも判別できる

※この「接合菌」の解説は、「線虫捕食菌」の解説の一部です。
「接合菌」を含む「線虫捕食菌」の記事については、「線虫捕食菌」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「接合菌」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ

「接合菌」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「接合菌」の関連用語

接合菌のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



接合菌のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
デジタル大辞泉デジタル大辞泉
(C)Shogakukan Inc.
株式会社 小学館
JabionJabion
Copyright (C) 2025 NII,NIG,TUS. All Rights Reserved.
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの接合菌門 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaの線虫捕食菌 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2025 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2025 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2025 GRAS Group, Inc.RSS