免疫再構築症候群
【概要】 進行したエイズの免疫不全症が、強力な抗HIV薬の併用療法によって回復してきた後、残存している病原体に対し思い出したように免疫反応が起こり、一時的に症状が強くなること。例えば、ニューモシスチス肺炎でエイズ発病した人にニューモシスチス肺炎治療とHIV治療が並行して行われた場合、肺炎が改善したはずの3週間以後に高熱・胸写悪化など症状が盛り返すことがある。
【詳しく】 エイズ発病でHIV感染とわかった人に起こりやすい。ニューモシスチス肺炎、サイトメガロウイルス感染症、結核、非定型抗酸菌症、トキソプラズマ脳症、クリプトコッカス症、進行性多巣性白質脳症などで経験される。B型やC型慢性肝炎の活動化もこのメカニズムかもしれない。いずれにしても感染症を起こす病原体が、免疫回復過程に居残っているということが発症の条件である。
《参照》 免疫、 CTL、 CD4、 ニューモシスチス肺炎、 サイトメガロウイルス、 結核、 非定型抗酸菌症、 トキソプラズマ脳症、 クリプトコッカス症、 進行性多巣性白質脳症
免疫再構築症候群の治療
【概要】 本症は抗HIV療法で免疫回復過程に、病原体が居残っているために発生する炎症反応である。従って対処としては原因となっている病原体への治療継続、他の隠れていた日和見感染症の診断と治療が基本。対症的に非ステロイド系消炎剤の使用、過剰なサイトカイン産生を抑制するために、中等量の副腎皮質ステロイドの併用も多い。結核や非定型抗酸菌症のように病原体の抑制に時間がかかり、かつ免疫反応が強い場合は、長期ステロイド使用の不利益を考え、抗HIV治療の中断をしないといけない場合もある。
【詳しく】 現実に主治医を悩ませるのは、原因となる病原体がみつけにくい場合、使用している薬剤の副作用との区別、副腎皮質ステロイド使用の決断、抗HIV治療中断の決断などである。確実な予防法はない。本症を知っていること。抗HIV療法を開始する前に隠れた日和見感染症はないか検討しておくこと、結核の場合、待つことが可能なら先に結核を治療して、後から抗HIV療法を開始する戦略が考えられる。個別には専門医と相談しながら対処するのが良い。
免疫再構築症候群の診断
【概要】 Shelburneらの定義は次の通り。1)エイズの診断、2)有効な抗HIV治療、3)抗HIV治療開始後に出現した感染症、すでに認識されている感染症の予測されうる臨床経過や治療の副作用では説明できないこと、以上の4点を満たした症例を本症とする。
【詳しく】 発症時期は抗HIV治療開始から数日から100日と広く分布するが、3ヶ月以内を注意すればよいだろう。抗HIV治療開始時のCD4細胞数は50/μL以下と高度な低下がほとんど。ウイルス量は低下の途中で経過良好と思われるときに、発熱と共に発症する。結核の場合でも菌量が増えたという所見はない。
《参照》 CD4
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