アプロプリエート‐テクノロジー【appropriate technology】
適正技術
適正技術とは、その技術の受容者であるコミュニティの環境、文化や習慣、社会経済的背景などに配慮した技術をいう。1973年にSchumacherが「small is beautiful」で提唱した中間技術(intermediate technology)の概念は、適正技術の重要性と理論化に大きな役割を果たした。国際協力において、農業、灌漑、水供給、小工業、環境など多くの分野で適正技術の開発と普及が行なわれている。とくに、近年は、地球温暖化や情報化社会の中で、環境に負担をかけず、資源を浪費せずに、低コストで維持できる適正技術の再評価が行われている。
保健医療分野において、適切技術はアルマ・アタ宣言においてプライマリヘルスケアの重要な原則の一つとして位置付けられた。医療費、施設の維持費、電気などの設備の有無、技術を使いこなせる人材の有無、文化や習慣などの種々の要素から、それぞれの保健医療施設やコミュニティに見合った適正技術を考える必要がある。(中村安秀)
参考資料:シューマッハーEF:スモール・イズ・ビューティフル(小島慶三ら訳)、講談社学
術文庫、1986
適正技術
(appropriate technology から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/12/02 21:01 UTC 版)
適正技術(てきせいぎじゅつ、英: appropriate technology)とは、その社会の与えられた環境、条件、ニーズに最も有効である技術、その技術の選択に対する考え方のことである[1]。特に、国際協力の分野では、途上国への技術移転を実施する際に、当該技術が途上国の経済や技術環境などの諸条件と合致した技術やその技術の選択を指す[2]。第二次世界大戦の終結から冷戦の期間に、先進国から途上国へ活発に技術移転が行われたが、その成果が社会全体に波及せず、経済格差の是正も進展しなかった[1]。また先進国と途上国の経済格差も縮小することなくむしろ拡大した[1]。このような多額の資金が必要となる近代技術の開発途上国への移転が失敗してきたという認識から、「途上国の発展や貧困を解消するためにどのような技術が必要か」という問題意識のもとで議論されている事柄である[3]。ただし適正技術の定義は論者によって異なり、また時代の変遷に応じて変化し、確立した厳密な定義は存在していない[4]。
注釈
- ^ エルンスト・フリードリッヒ・シューマッハーは、1963年にインドを訪問しており、この時にマハトマ・ガンディーの思想の影響をうけたと考えられている[5]。
- ^ ラングドン・ウィナーは実際に行うことは極めて困難だと考えており、「(適正技術を導入例として示されるような)小さい町にすむものならばだれでも知っていることだが、小さい共同体というものは他のどんな社会よりも、『技術的問題や社会的問題に対する多様な解決』を実行したがらないものである」と論じた[36]。
- ^ 薪ストーブが広く普及したために、いくつかの地域では深刻な大気汚染が生じたことなどを例として挙げている[36]。コブラ効果も参照。
出典
- ^ a b c 開発経済学事典 (2004, p. 358)
- ^ a b c 国際協力用語集 (2014, p. 209)
- ^ 田中、適正技術と代替社会 (2012, p. 32)
- ^ a b アジアの内発的発展 (2001, p. 176)
- ^ a b c d e 適正技術と経済開発 (1986, p. 5)
- ^ a b 科学技術を人間学から問う (2009, p. 94)
- ^ 中山、科学と社会の現代史 (1981, p. 148)
- ^ a b c d e f g アジアの内発的発展 (2001, p. 180)
- ^ 宇井、加害者からの出発 (2014, p. 56)
- ^ a b 宇井、加害者からの出発 (2014, p. 171)
- ^ 宇井、加害者からの出発 (2014, p. 165)
- ^ a b c 宇井、加害者からの出発 (2014, p. 166)
- ^ a b c 宇井、加害者からの出発 (2014, p. 168)
- ^ 宇井、加害者からの出発 (2014, p. 169)
- ^ アジアの内発的発展 (2001, p. 177)
- ^ スモール イズ ビューティフル (1986, pp. 236–237)
- ^ a b c スモール イズ ビューティフル (1986, p. 231)
- ^ a b c スモール イズ ビューティフル (1986, p. 232)
- ^ スモール イズ ビューティフル (1986, p. 204)
- ^ a b アジアの内発的発展 (2001, p. 178)
- ^ 経済発展と技術選択 (1990, p. 19)
- ^ a b 適正技術と経済開発 (1986, p. 8)
- ^ a b c d 適正技術と経済開発 (1986, p. 9)
- ^ a b c d e f g 適正技術と経済開発 (1986, p. 10)
- ^ a b c d e f 適正技術と経済開発 (1986, p. 11)
- ^ a b 田中、適正技術と代替社会 (2012, p. 33)
- ^ a b c d 適正技術と経済開発 (1986, p. 12)
- ^ 適正技術と経済開発 (1986, p. 29)
- ^ a b c d e f 適正技術と経済開発 (1986, p. 13)
- ^ オルターナティブ・テクノロジー 技術変革の政治学 (1980, p. 39)
- ^ a b c d e f 適正技術と経済開発 (1986, p. 16)
- ^ 中山、科学と社会の現代史 (1981, p. 159)
- ^ a b 適正技術と経済開発 (1986, p. 17)
- ^ a b 鯨と原子炉 (2000, p. 109)
- ^ 鯨と原子炉 (2000, p. 110)
- ^ a b c 鯨と原子炉 (2000, p. 127)
- ^ 鯨と原子炉 (2000, p. 125)
- ^ 鯨と原子炉 (2000, p. 126)
- ^ 鯨と原子炉 (2000, p. 141)
- ^ A.Smith, The Alternative Technology Movement (2005)
- ^ a b 鯨と原子炉 (2000, p. 128)
- ^ a b アジアの内発的発展 (2001, p. 199)
- 1 適正技術とは
- 2 適正技術の概要
- 3 適正技術への批判
- 4 参考文献
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