T9000
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/24 15:47 UTC 版)
インモスはT8シリーズを改良したT9000(開発コード名はH1)を投入した。T9000はT800によく似ているが、いくつかのハードウェアをチップに追加し、スーパースケーラ機構も導入した。初期のモデルとは異なり、T9000は16kBのキャッシュを備えていた。これは従来のようにRAMとしても使用でき、これを制御するためPMIと呼ばれるMMU的な機能も組み込んだ。加えて、高速化のためにT9000はスタックトップの32本分をキャッシュしている(従来は3本)。 T9000は高速化のために5ステージのパイプラインを採用している。特徴的な機能追加として、キャッシュ外のコードのかたまりをグループ化して、それを4バイトの擬似命令にパッケージ化する機能を持っていた。このグループは1サイクルで実行することができた。 リンクシステムもアップグレードされ100MHzとなったが、下位互換性は失われた。この新たなパケットに基づくリンクのプロトコルを DS-Link と呼び、後に IEEE 1355(英語版) として標準化される元になった。T9000にはリンクのルーティング用ハードウェア VCP (Virtual Channel Processor) も追加されており、それまでポイントツーポイントだったリンクを真のネットワークに変え、任意の本数の仮想チャネルを物理的なリンク上に構成できるようになった。そのため、プログラムがトランスピュータ間の接続構成(ネットワークレイアウト)を気にする必要がなくなった。DS-Linkに対応して32ウェイクロスバースイッチ C104 とリンクアダプタ C101 などのサポートチップも開発されている。 T9000の開発が遅れたため、リリースしようという時にはすでに他のRISCプロセッサの性能はその先に行っていた。実際、T9000はT800の10倍という性能目標も達成できず、プロジェクトが中止された時点では50MHzで36MIPSの性能だった。あまりに開発が遅れたため、T9000にとって最高のホスト・アーキテクチャはオーバーヘッドプロジェクタだという皮肉まで言われるほどだった。 インモスにはそれ以上開発を続ける資金力がなかったため、会社ごとSGS-Thomson(現 STマイクロエレクトロニクス)に買収された。同社は組み込み市場に注力していたため、買収後T9000の開発は中止され、32ビット版トランスピュータを元にしたマイクロコントローラST20が製造されることになった。これにはT9000向けに開発されていた技術も導入されている。ST20はセットトップボックス用チップセットやGPSアプリケーションなどで使われた。
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