GPX750Rとは? わかりやすく解説

カワサキ・GPX750R

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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/17 15:29 UTC 版)

カワサキ・GPX > カワサキ・GPX750R
GPX750R
1986年・国内仕様
基本情報
排気量クラス 大型自動二輪車
メーカー カワサキ
車体型式 ZX750F
エンジン ZX750FE型 748 cm3 4ストローク
内径×行程 / 圧縮比 68.0 mm × 51.5 mm / 11.2:1
最高出力 77PS / 9,000rpm
最大トルク 7.0kgf・m / 6,500rpm
乾燥重量 195 kg
車両重量 220 kg
      詳細情報
製造国 日本
製造期間 1986年-
タイプ スポーツ
設計統括
デザイン
フレーム 鋼管ダブルクレードル
全長×全幅×全高 2,115 mm × 715 mm × 1,185 mm
ホイールベース 1,460 mm
最低地上高 150 mm
シート高 775 mm
燃料供給装置 キャブレター (KeihinCVK34×4)
始動方式 セルスターター
潤滑方式 ウェットサンプ
駆動方式 チェーンドライブ
変速機 常時噛合式6段リターン
サスペンション テレスコピック
スイングアーム(ユニトラック)
キャスター / トレール 27.0° / 97 mm
ブレーキ φ270mm油圧式ダブルディスク
φ230mm油圧式シングルディスク
タイヤサイズ 110/90-16 59H(チューブレス)
140/70-18 66H(チューブレス)
最高速度
乗車定員 2人
燃料タンク容量 21 L
燃費 34 km/L
カラーバリエーション
エボニー/パールコスミックグレー
パールアルペンホワイト/ジェントリーゴールド
本体価格 799,000円
備考 燃費は定地燃費(60km/h、2名乗車時)運輸省届出値
先代 -
後継 ZXR750
姉妹車 / OEM
同クラスの車
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カワサキ・GPX750R (ジーピーエックスななひゃくごじゅうアール)は、1986年から1989年までの間市販された川崎重工業カワサキ)のオートバイである。北米仕様の車名はNinja750R

概要

本モデル発売前、カワサキには排気量750ccスポーツモデルとしてGPZ750Rが存在したが、GPZ900Rを国内販売用に排気量ダウンさせたモデルであるため、車両重量等の面で他メーカーの同カテゴリ車種より不利になることが避けられなかった。当時のレースカテゴリTT-F1のレギュレーションは1984年から排気量は750ccまでとなっており、世界耐久のレギュレーションもこのF1規定に準じていた[1]ため、ベースとなる750cc専用設計の車両が求められていた。

1986年7月、カワサキ初の750cc専用設計モデルとしてGPX750Rが発売された。GPZ750Rから、乾燥重量で33kgの軽量化を果たし[注釈 1]TT-F1をはじめとするレースのベース車両として使用された。

車両開発の方向性としては、レース対応一辺倒ではなく、市販車ロードスポーツとしての実質的な性能を追求したものとなっている。他メーカーの同カテゴリ車種で多く採用されていた、レースイメージに直結する仕様(アルミフレーム、別体型メーター、シングル風シート、等)を採用せず、性能で劣らないスチールフレームを開発、視認性にすぐれた一体型メーター、タンデムのしやすいロングシートとしグラブバーを設置するなど、動力性能を犠牲にせずに公道での使用の快適性を高めた車両となっている。

バックミラーについて、同型が採用されたのは当車種が初となるが、ZX-10GPZ900RA7以降)、GPZ1000RX(後期)、GPZ1100ZZR250などの車種にも採用されている。またメーターパネルはGPX400Rと共通。フロントフェンダーはZX-10と共通である。

カワサキは1989年に、GPX750Rからパワーユニットを引き継いだZXR750を発売した。ZXR750は完全なレーサーレプリカタイプであり、日本国内では併売されることなく、GPX750Rの販売は終了された模様である。

車両解説

カワサキ初の750cc用完全新設計であり、GPZ750Rから16kgの軽量化、全幅も31mm小さくしている。GPZ系で採用していたサイドカムチェーンではなく、センターカムチェーンを採用。同じくGPZ系で採用していたY字ロッカーアームによる2バルブを1ロッカーアームで作動させる方式から1バルブを1ロッカーアームで作動させる方式に換え、カムシャフトの山も1本に付き4個から8個に増やした。カムシャフトは一対の山の中央で保持され、カムシャフトのたわみを抑える効果を狙う。

点火系のレヴリミッターは12,200rpmで点火をカットする設定だが、レッドゾーンは11,000rpmからであり、実際は14,500rpmまで動弁系が正しく作動する能力を持つ、RPMS(レッドライン・プラス・マキシマム・システム)。エアクリーナーからキャブレターまでのダクト内部形状が、主吸気通路と負圧やジェット通路とを分離し、主吸気通路の吸気流速を高めるH.I.TEC(ハイベロシティ・インダクション・テクノロジー)を採用している。

オートバイでは初となるオルタネーターのベルト駆動DADS(ドライ・オルタネータ・ドライブ・システム)を採用。軽量かつ伝導効率にすぐれ、レース使用時の容量変更が容易であるとのメリットが謳われたが、使用に伴いテンション調整が必要な上、ベルト切れのリスクが存在する。

量産オートバイとしては初の異型2ポットキャリパー、BAC(バランスド・アクチュエーション・キャリパ)を採用。またリアキャリパーはカワサキ量産車として初のフローティングマウントを採用している。

FAST FRAME(フェザーウェイト・アロイ&スチールテクノロジー・フレーム)と称される新設計のフレームは、メインフレームとリアフレームから構成されている。メインフレームはハイテンション鋼管製のダブルクレードルタイプ、リヤフレームはアルミ角パイプ製。スチールフレームの重量は13kgに収められている。

フロントフォークには、それまで使われていたブレーキ油圧感知式アンチダイブシステムのAVDS(オートマチック・バリアブル・ダンピング・システム)に代わり、フロントブレーキスイッチと連動させた電気式応答型アンチダイブシステムのESCS(エレクトリック・サスペンション・コントロール・システム)を装備する。

その他の特徴は

  • チェーン調整機構は、カワサキの大排気量車で多く採用されているエキセントリック式ではなく、一般的なアジャストボルトで調整するタイプである。
  • 燃料計を装備するが、ガソリンタンクフューエルコックにリザーブのポジションがない。ガス欠を防止するためのワーニングランプがメーターパネルに設置されている。ガソリン残量5.5リットルで薄赤く点灯、残量5.0リットルで真っ赤に光る。
  • 方向指示器スイッチが、プッシュキャンセルではない。1987年2月に発売されたGPX400Rではプッシュキャンセルが採用されていたが、GPX750Rは同年11月発売の1987年仕様(F2)においても従前のままであった。
  • ウインカーの灯火自体はビルトインタイプだが、仕向地によってはステーにより車体から離して設置させた仕様も存在する。
  • ライトスイッチ(オン・ポジション・オフ)およびハザードスイッチを備える。
  • 左側サイドカバーにネームホルダを備える。

モデル一覧

F1(1986年-)

  • エンジンナンバー ZX750FE000001~016200
  • フレームナンバー ZX750F-000001~018000
  • 車体カラー
    • エボニー/パールコスミックグレー(赤のラインが入る。ロゴ等は金、銀、赤を使用)
    • パールアルペンホワイト/メタリックジェントリーゴールド(ロゴ等は黒、金、赤を使用)
    • Pearl Alpine White/Sunbeam Red(輸出専用カラー)
  • 「Kawasaki」ロゴと「TWIN CAM 16-VALVE」の文字がフロントカウルに、「GPX」ロゴがシートカウルに入る。

F2(1987年-)

  • エンジンナンバー ZX750FE162001~
  • フレームナンバー ZX750F-018001~
  • 車体カラー
    • エボニー(金とグレーのラインが入る。ロゴ等にはを使用)
    • Firecracker Red(輸出専用カラー)
    • Candy Persimmon Red(輸出専用カラー)
  • 「Kawasaki」ロゴはガソリンタンクに、「GPX」ロゴがフロントカウルに、「TWIN CAM 16-VALVE」の文字がシートカウルに入る。

F3(1989年-)

輸出専用車両

  • 車体カラー
    • Firecracker Red(Red/Black)
    • Candy Persimmon Red
    • Luminous Polaris Blue/Pearl Alpine White
  • 輸出車両は、輸出先にもよるが最高出力106ps/9500rpmを誇った。
  • 輸出車両限定カラーとして、ライムグリーン/ホワイトのカラーリングもあった。

F4(1990年-)

輸出専用車両

  • 車体カラー
    • Ebony/Firecracker Red

レース戦績

基本的には、GPX750Rの車名で参戦していたものについて記載する(ZXR-7として参戦したものについては記載しない)。

1986年 第11戦 日本グランプリ
ライダー 予選順位 決勝順位
多田喜代一 7位
1987年3月8日 開幕戦鈴鹿2&4
ライダー 予選順位 決勝順位
宗和孝宏 6位 R(敗退)
多田喜代一 13位 11位
1987年6月7日 第6戦鈴鹿200km
ライダー 予選順位 決勝順位
多田喜代一


世界耐久選手権シリーズ第5戦”コカ・コーラ”鈴鹿8時間耐久オートバイレース(決勝1987年7月26日)
順位 ゼッケンNo. ライダー 周回数 予選順位 予選タイム チーム名
5 9 Pierre Etienne Samin
Thierry Crime
191 13 2'21.003 TEAM KAWASAKI FRANCE
7 31 Johan Van Vaerenbergh
Paul Ramon
190 44 2'25.157 MOTOR ROAD RT.LEUVEN
55 41 宗和孝宏
多田喜代一
24 10 2'20.016 GOOD LUCK TEAM GREEN[注釈 2]
世界耐久選手権シリーズ第2戦”コカ・コーラ”鈴鹿8時間耐久ロードレース(決勝1988年7月31日)
順位 ゼッケンNo. ライダー 周回数 予選順位 予選タイム チーム名
12 16 Richard Hubin
Michel Simul
194 48 - RAVINE TANIO KAWASAKI
R 15 Johan Van Vaerenbergh
Eric De Doncher
115 56 - RAVINE TANIO KAWASAKI
R 22 Roger Pawl Hurst
中井直道
73 38 - BEET RACING[注釈 3]
FIM 耐久カップシリーズ第2戦”コカ・コーラ”鈴鹿8時間耐久ロードレース(決勝1989年7月30日)
順位 ゼッケンNo. ライダー 周回数 予選順位 予選タイム チーム名
17 16 Johan Van Vaerenbergh
Paul Ramon
191 60 2'25.906 RAVINE RACING[注釈 4]

脚注

注釈

  1. ^ 乾燥重量195kgは、GPZ600Rと同一の数値である。
  2. ^ リザルト上の車名は「KAWASAKI GPX-7」となっている。
  3. ^ リザルト上の車名は「Kawasaki ZX750F」となっている。
  4. ^ リザルト上の車名は「ハリスKAWASAKI GPX」となっている。

出典

  1. ^ 『RACERS』Vol.18 三栄書房 P14
  2. ^ 『RACERS』Vol.18 三栄書房 P19,P71
  3. ^ 鈴鹿サーキット モータースポーツライブラリー 8耐ヒストリー(モビリティランド・鈴鹿サーキット公式サイト内)

参考文献

  • 『RIDERS CLUB』No.98、1986年8月号、枻出版社
  • 『別冊モーターサイクリスト』No.95、1986年8月号、八重洲出版
  • 『別冊モーターサイクリスト』No.107、1987年8月号、八重洲出版、「追跡シリーズ:カワサキGPX750R」
  • 『Bikers Station』No.014、1988年11月号、遊風社
  • 『Bikers Station』No.049、1991年10月号 遊風社
  • 『RACERS』Vol.18、2013年、三栄書房
  • 『カワサキモーターサイクル・ZX750-Fパーツカタログ』
  • 『BIG BIKE CRUISIN'』、NO4、国書刊行会

GPX750R

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/11/04 06:25 UTC 版)

カワサキ・GPX」の記事における「GPX750R」の解説

GPX750R は、1986年から1989年まで販売された。GPZ750Rの後継車種海外仕様では、北米仕様(Ninja750R)が1990年まで、欧州仕様1991年まで販売続けられた。 後継車種は、1989年発売されたレーサーレプリカ・モデルのZXR750である。なお、他の排気量クラスGPXシリーズ後継となっているZZRシリーズでは750ccクラス設定はなかった(同シリーズ初期ラインナップは、250cc / 400cc / 600cc / 1100cc となる)。 詳細は「カワサキ・GPX750R」を参照

※この「GPX750R」の解説は、「カワサキ・GPX」の解説の一部です。
「GPX750R」を含む「カワサキ・GPX」の記事については、「カワサキ・GPX」の概要を参照ください。

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