BCP事例集

内閣府は2005年8月から企業などのBCP策定を手助けするため「事業継続ガイドライン」を作成・公開しています。しかしBCPの基本的な考え方を述べたもので、企業がBCPを策定する際の留意点や運用方法を示したものではありません。新型インフルエンザの大流行を契機にBCP策定に着手した企業が増えていますが、中小企業からは身の丈にあった実用性の高い事例集を求める声が高まっています。
公開する内容は、横軸に大企業、中堅企業、中小企業などの規模別分類、縦軸に製造業、サービス業などの業種別分類を設けます。利用者は縦横のマトリックスにより同規模・同業種の企業を選び出し、目標復旧時間の設定方法や重要業務の選び方、教育訓練の方法などの必要項目をたどれるようにします。
内閣府は業界団体や官庁から推奨企業を紹介してもらい、担当者が企業へ出向いて行う聞き取り調査をもとに事例集を作成します。2010年度から順次ホームページに公開し、3年程度かけて紹介事例を充実させる考えです。政府は地震防災戦略策定から10年後をめどに、大企業はほぼ全て、中堅企業は過半を目標にBCP策定企業を増やす方針を打ち出しており、今回の取り組みはその一環といえます。
経営資源が限られる中小企業では、経営戦略上、優先度の高いテーマから計画作りに着手するのが現実的な選択肢といえます。産業機械用エアーノズルの設計・販売を主力とする大浩研熱(東京都町田市)は今年からBCPを経営戦略の中に位置づけ推進しています。特徴的なのは生命線である設計技術の継承を主眼にしていることです。社長が設計を一手に担っているため社長が倒れてしまうと事業継続に重大な影響がでかねません。そこで流体力学に関する講習会を毎月開き、社員への技術継承に力を入れています。このように中小企業では災害対策を経営戦略と表裏一体でとらえることで実効性を高められます。
中小企業のBCP策定率は大企業に比べ極端に低いのが現状です。政府の事例集で大浩研熱のような中小企業ならではの取り組みが紹介されれば、「ウチでも始めてみよう」という動機づけになるかもしれません。
(掲載日:2009/12/26)
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