アドヴァンスド・エンジン・リサーチとは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > 百科事典 > アドヴァンスド・エンジン・リサーチの意味・解説 

アドヴァンスド・エンジン・リサーチ

(Advanced Engine Research から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/27 01:54 UTC 版)

ナビゲーションに移動 検索に移動

アドヴァンスド・エンジン・リサーチ ( Advanced Engine Research、 「AER」の略語で一般には知られる ) は、イングランドエセックス州バジルドンに本社を置く、レーシングエンジンの製造メーカーである。

概要

1997年の設立後、AERはスポーツカープロトタイプレーシングカーラリーツーリングカーフォーミュラカーなどの知名度の高い国際レースのシリーズで、多くの優れたレーシングエンジンを開発してきた。AERは、ロードカー・プラットフォームの派生エンジンを設計してきたが、設計が白紙の状態(AERが手を加える前)のエンジンに比べて、電子制御式ターボの機能を強化していることをAER製エンジンの持ち味としている。AER製エンジンは、ル・マン24時間レースFIA 世界耐久選手権(WEC)ヨーロピアン・ル・マン・シリーズ(ELMS)ユナイテッド・スポーツカー選手権GP3イギリスツーリングカー選手権(BTCC)ワールドシリーズ・バイ・ニッサンワールドシリーズ・バイ・ルノーダカール・ラリー及びFIAの後援するスポーツカー選手権といったレースで使用されている。マツダフォード現代自動車MG/ローバー日産トヨタといった多くの自動車メーカーの車に搭載されて活躍している。2012年に、AERはF1のターボ・テスト用エンジンを開発製造し、同年7月に、AERは2013年から2016年シーズンまでのGP3シリーズのエンジン・サプライヤーに選ばれている。

製品

AERは、設計と解析、製造、エンジン組立及びテストを含む顧客の為の技術サービスを幅広く提供している。AERはまた、兄弟会社の「ライフレーシング(LifeRacing)」製の電子機器と同様のサポートを、レースの週末に技術者とスタッフの人員のフル・パッケージで提供している。ライフレーシングは、ECU、ドライブ・バイ・ワイアー・コントローラ及び付属電子機器といった自社内製化したハードウェアとソフトウェアを開発しており、レース活動に加えて航空宇宙産業も請け負っている。

AERは、様々なエンジン技術、とりわけターボ化したレーシング・エンジンのノウハウに通じている。CATIA V5を全てのコンポーネントの設計作業に使われており、具体的には5軸加工の社内試作用マシンの部門とエンジン試験用の一時的動力計装置で使用される。

同社は、レースに参戦するマニュファクチャラーに、電子制御の機能を用いた精巧なエンジンを開発して提供することを目指して設立された。 エンジン設計の電気的側面と機械的側面を統合させるという手法は評価されて、1997年のイギリスツーリングカー選手権(BTCC)における日産との最初の契約に繋がった。AERは、6ヶ月でエンジンを作り上げた。1997年以降、AERは多くの異なるエンジン群をカスタマーに開発し続けている。

SR20

ロード・カー用の直列4気筒ガソリンエンジン日産・SRエンジンの進化型としてチューンされ、スーパー・ツーリングのレギュレーションに適合させる形で日産・プリメーラを使用するレイ・マロック有限責任会社のチームの車に搭載されて、1997年から1999年のBTCCに出走し、1998年と1999年のマニュファクチャラー・タイトルを獲得し、ローラン・アイエッロが1999年のドライバーズ・タイトルを獲得している。

そのエンジンは、スウェーデンツーリングカー選手権でクロフォード・レーシング・日産チームにおいても使用され、2000年にトミー・ルスタードがドライバーズ・タイトルを獲得している。

P25

AERの3.5リッターV6のP25エンジンは、「日産・フェアレディZ Z33」に搭載されていたVQ35エンジンのプロダクションモデルをベースとしている。元々はニッサン・ワールドシリーズで使用していたものを広範囲に再設計して手を加えたエンジンである。その変更点は、あつらえのドライサンプの改装、ピストンコネクティングロッドカムシャフト及びバルブギアに至る。P25は、フォーミュラカーやスポーツカーで使用され、500HPの出力を誇る。

P14

AERのP14は、V6日産・VQエンジンのプロダクションモデルをベースに開発された。FIA スポーツカー選手権のSR2カテゴリーに参戦するスポーツカーで使用できるようFIAよりホモロゲーションを受けた。このエンジンは、最大排気量3.0リッターで市販車の部品をベースとするSR2カテゴリーの規定に沿って製造された。

P03/07

2000年に作られたP03は、AERの最初の完全新設計のエンジンで、ル・マン24時間レースに挑戦しようとするMG/ローバーの為に開発された。1年後に彼らがル・マンへの挑戦を考え直した時、AERはカスタマーエンジンとしてP03をP07に改良した。P07は2.0リッターの直列4気筒に1基のギャレット・エアリサーチ製ターボを備え、パワーは初期の時点で500HPを超え、2003年までに550HPに至っている。2007年を通じて、アメリカン・ル・マン・シリーズ(ALMS)ル・マン・シリーズ及びル・マン24時間レースのLMP2クラスをパワフルに走行している。2003年に、ダイソン・レーシングは、AER製エンジンを搭載したローラ・EX257で、ALMSのP2クラスのチームとドライバーズ(クリス・ダイソン)の選手権を獲得した。

P32T

2006年にリリースした新しいP32Tによって、AERはル・マン・プロトタイプのトップ・カテゴリーに挑むことになった。P32TのV8エンジンは、LMP1クラスに参戦するオーダーメイド型のAERの設計であり、75度のV8ツインターボで、2006年と2007年の初期モデルでは3.6リッターで、2008年に4.0リッターにアップグレードされている。2基のギャレット・エアリサーチ製ターボは650HP以上の出力をアシストしている。自然吸気型の別モデルであるP32は、3.4リッターから4.2リッターまでの排気量に対応して設計され、3.4リッターのモデルに関しては2011年のLMP1のレギュレーションに沿って設計されている。P32Tエンジンの計画は、ダイソン・レーシングとAERとの話し合いから生まれたもので、最初のシーズンでは、多くのポールポジションを獲得しているように、その信頼性が高さと速さを見せている。そのエンジンは、ル・マン24時間レースやELMS、ALMSのレースで戦うLMP1カーに搭載されて走っている。

そのエンジンは、アウディのLMP1カーに3.6リッターのツイン・ターボで積められるように設計され、F1のテクノロジーを用いたサイズと重量の新しい基準から成るその完全新設計は、わずか114kgの重量となっている。

アメリカのダイソン・レーシングとヨーロッパのチェンバレン=シナジー・モータースポーツが初期の2006年の時点でP32Tを使用していただけであったが、2007年にクラージュ・コンペティションはカスタマーとなり、チーム・サイトスポーツがAER製エンジンを搭載したダイソンのプロトタイプレーシングカーの前モデルで走っている。2008年には、インタースポーツ・レーシングがALMSのLMP1エントリーでAER製エンジン搭載車を走らせ、2009年と2010年には、インタースポーツ・レーシングとオートコンの両チームがALMSのP1カーにAER製エンジンを搭載して走っている。

MZR-R

P41はマツダ製エンジンをベースとした最初のAER製エンジンで、マツダと共同開発してLMP2カーに搭載して使用された。直列4気筒に単基のターボが付いた2.0リッターのエンジンであるMZR-Rは、2007年セブリング12時間レースにB-K・モータースポーツでデビューし、2008年もB-K・モータースポーツでの搭載を継続した。2009年にはダイソン・レーシングが2勝してマツダの旗をサーキットに掲げることになった。

2010年に、AER製の3.6リッターのツインターボV8エンジンのP32TをベースとしたP41は、新しいブロックとシリンダー・ヘッドとパワーアップを果たした新型のP70に置き換えられてLMP1カーに搭載された。そのエンジンはターボ付きエンジン技術の芸術的荘厳さを表しており、24時間レースの厳しさにも耐えられるように設計された。それはLMP1カーに搭載されるエンジンで最小であるが、1気筒あたりの基準では、F1のエンジンを上回るパワーを発揮する。

2011年に、ダイソン・レーシングはALMSのP1カテゴリーにおけるドライバーズ、チーム、マニュファクチャラー選手権といったタイトルを総なめにした。ダイソン・レーシングはP70の使用を継続し、2013年に更に馬力とトルクを増したP90と呼ばれるエンジンにアップグレードした。

MZR-Rはインディ・ライツの新しい車両の搭載エンジンに選ばれ、マツダのロゴが入ったエンジンが2015年にデビューした[1]

MZ2.0T

また2016年にはUSCC(ユナイテッド・スポーツカー選手権)向けに市販車用エンジンをベースとしない直4ターボのMZ2.0Tをマツダと共同開発し、マツダのLMP2マシン(ローラ・B08/60)[2]、2017年からはマツダDPi車両(RT-24P)に搭載している[3]。しかし車両・エンジン共にトラブルが多く苦戦を強いられたが、その後ヨースト・レーシングとのジョイントもあり、2019年第6戦ワトキンス・グレンで優勝、チーム初の優勝をワン・ツー・フィニッシュで飾った[4]

主なレースの記録とタイトル

AER製エンジンは、多くの選手権と主要なレースで成績を挙げてきた。

1999年

2000年

  • BTCC:マット・ニールとチーム・ダイナミックスによる独立選手権 (SR20)
  • スウェーデンツーリングカー選手権:トミー・ルスタードとElgh・モータースポーツによるドライバーズタイトル (SR20)
  • FIA スポーツカー選手権:レッドマン・ブライトとSRLチームによるチームタイトル (P14)
  • ル・マン24時間レース:マルティマティック・モータースポーツによるLMP675クラス優勝 (P14)
  • グランダム・ロードレーシング選手権SRIIクラス:アーチエンジェル・モータースポーツによるマニュファクチャラーズ、チーム、ドライバーズタイトル (P14)

2001年

  • ル・マン24時間レース:LMP675クラス:MGローラEX257によりLMP675クラス予選にて、1位2位を占める。リザルトは両車リタイヤ (P07)
  • FIA スポーツカー選手権SR2クラス:スポーツレーシング・チーム・スウェーデンとラリー・オベルト及びテッド・ビョルクによるチーム、ドライバーズタイトル (P14)
  • グランダム・ロードレーシング選手権SRIIクラス:アンディ・ラリーとアーチエンジェル・モータースポーツによるマニュファクチャラーズ、チーム、ドライバーズタイトル (P14)
  • アメリカン・ル・マン・シリーズ(ALMS):マニュファクチャラー・チャンピオン (P14)
  • デイトナ24時間レースSRPIIクラス:アーチエンジェル・モータースポーツによるSRPIIクラス優勝 (P14)

2002年

  • ALMSのLMP675クラス:ジョン・フィールドとナイトホーク・レーシングによるマニュファクチャラーズ、チーム、ドライバーズタイトル (P07)
  • セブリング12時間レースLMP675クラス:インタースポーツ・レーシングによるLMP675クラス優勝 (MGブランドのXP20)
  • プチ・ル・マンLMP675クラス:インタースポーツ・レーシングによるLMP675クラス優勝 (MGブランドのXP20)
  • グランダム・ロードレーシング選手権SRIIクラス:テリー・ボーチェラーとランド・レーシングによるマニュファクチャラーズ、チーム、ドライバーズタイトル (P14)
  • ル・マン24時間レース:予選でAER製エンジン搭載車がLMP675クラスの1位2位3位を占める (P07)
  • テレフォニカ・ワールドシリーズ・バイ・ニッサン:AER製エンジン搭載車が37台を占める (P14)

2003年

  • FIA スポーツカー選手権SR2クラス:ルッチアーニ・エンジニアニングによるチームタイトル (P14)
  • ALMSのLMP675クラス:クリス・ダイソンとダイソン・レーシングによるマニュファクチャラーズ、チームタイトル (P07)
  • デイトナ24時間レースSRPIIクラス:チーム・シアトル/エセックス・レーシングによるクラス優勝 (P14)
  • セブリング12時間レースLMP675クラス:ダイソン・レーシングによるクラス優勝 (P07)
  • スーパーファンド・ワールドシリーズ・バイ・ニッサン:日産3.0リッターV6シリーズへの設計・マニュファクチャラー・トラック・サポート
  • ワールドシリーズ・ライト:2.0リッターシリーズへの設計・マニュファクチャラー・トラック・サポート

2004年

  • ALMSのLMP675クラス:ミラクル・モータースポーツによるチームタイトル (P14とP07)
  • ル・マン耐久シリーズのLMP675クラス:クラージュ・コンペティションによるチームタイトル (P07)
  • スーパーファンド・ワールドシリーズ・バイ・ニッサン:日産3.0リッターV6シリーズへの設計・マニュファクチャラー・トラック・サポート
  • ワールドシリーズ・ライト:2.0リッターシリーズへの設計・マニュファクチャラー・トラック・サポート

2005年

  • ALMSのLMP2クラス:インタースポーツ・レーシングによるマニュファクチャラーズ、チーム、ドライバーズタイトル (P07)
  • ル・マン耐久シリーズのLMP2クラス:ガレス・エヴァンスとチェンバレン=シナジー・モータースポーツによるマニュファクチャラーズ、チームタイトル (P07)

2006年

  • ル・マン・シリーズのLMP2クラス:バラージ-イプシロンによるチームタイトルと、AER製エンジン搭載車による全戦のポールポジション獲得及び全勝(全戦ポール・トゥ・ウィン)
  • ル・マン24時間レースのLMP2クラス:RMLレーシングによるLMP2クラス優勝

2007年

  • ル・マン・シリーズのLMP2クラス:RMLレーシングとマイク・ニュートン及びトーマス・エルドスによるマニュファクチャラーズ、チーム、ドライバーズタイトル (P07)

2009年

2010年

2011年

  • ALMSのLMP1クラス:ダイソン・レーシングによるミシュラン・グリーンX・チャレンジ選手権を含むマニュファクチャラーズ、チーム、ドライバーズタイトル (P70)

2012年

  • ALMSのLMP1クラス:ダイソン・レーシングによるセブリング12時間レースとプチ・ル・マンでの優勝 (P70)

脚注

  1. ^ 2014 INDYCAR ニュース 12月13日 :インディー・ライツのエンジンがマツダに - Jack Amano・2014年12月17日
  2. ^ 2016/01/18 USCC マツダ・プロトタイプ・チーム、2016年の体制を発表 MZ Racing
  3. ^ MZracingさんのツイート
  4. ^ 挑戦6年目でのIMSA初優勝。マツダ代表「最後の30分は無線が入るたびに心配になった」”. autosport web. 2019年7月2日閲覧。

外部リンク




英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「アドヴァンスド・エンジン・リサーチ」の関連用語

アドヴァンスド・エンジン・リサーチのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



アドヴァンスド・エンジン・リサーチのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのアドヴァンスド・エンジン・リサーチ (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS