5歳未満の18Gy照射による知能低下についての調査
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/25 07:27 UTC 版)
「髄芽腫」の記事における「5歳未満の18Gy照射による知能低下についての調査」の解説
1996年のアメリカの報告。有名なロジャー・パッカーらによる論文。 Updated results of a pilot study of low dose craniospinal irradiation plus chemotherapy for children under five with cerebellar primitive neuroectodermal tumors (medulloblastoma) http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?cmd=Retrieve&db=PubMed&list_uids=8598368&dopt=Abstract 5歳未満の髄芽腫児童の予後は芳しくない。彼らは、全脳全脊髄照射の有害な副作用により影響されやすく、全脳全脊髄照射を単独で減量すると、より高い再発率となる。そこで、大幅に減量された全脳全脊髄照射と補助化学療法の有用性をテストするプロスペクティブなトライアルを始めた。 1988年1月から1990年3月の間、10人の髄芽細胞腫患者が、全脳全脊髄軸への18Gy放射線治療、50.4-55.8 Gyへの後頭蓋窩のブースト、および放射線治療の間にビンクリスチンを含む化学療法を毎週使用することで治療された。その後、ビンクリスチン、シスプラチン、およびロムニスチン(CCNU)、の6週間サイクルの8回の治療を受けた。播種していない18-60カ月の年齢の患者が研究に適格とされた。フォローアップは1994年9月まで行われ、生存患者のフォローアップ期間の中央値は診断から6.3年であった。 6年の全生存率は70%+/- 20%だった。10人の患者のうちの3人は、再発して、死亡した。 1人の患者では、脊髄、後頭蓋窩外の脳に再発が広がり、2人目の患者は、後頭蓋窩、脳、脊髄に同時に再発し、3人目は、脊髄のみに再発した。 1人の生き残っている子供が、診断の4.8年後に脳幹梗塞になり、その後、ほぼ完全に回復している。 少なくとも1年間生き残っている6人の患者の知能指数(IQ)スコアの中央値は103であり、107のベースライングループスコアから変わりがなかった。ベースラインと、治療後2年にテストされた5人の子供のIQスコアは、それぞれ101と102だった。ベースライン時点と、3年後にテストされた6人の子供のIQスコアは、それぞれ106と96だった。脳幹梗塞になった子どもを除く子どもの、ベースライン時点および3年のIQスコアはそれぞれ103と 97だった。7人の長期生存者のうちの5人は追跡している期間、予想された速度より成長レートは有意に低かった。他の者は通常の成長をしたが。3人の患者が成長ホルモン治療を受けた、そして、なにも甲状腺ホルモンの補充療法を必要としなかった。 これらのデータは、髄芽腫患者が化学療法と減量照射で治癒できることを示している。シスプラチンベースの化学療法と減量全脳全脊髄照射の組み合わせは神経認知障害を最低限にすることができる。しかしながら、そのように治療された非常に幼い子供の成長速度は劇的に落ちるので、治療法の比率を改良するより良い手段がまだ必要である。 1.5歳-5歳という低年齢児でも、18Gyという低線量であれば、全脳照射しても知能低下はほとんど見られないということ、および化学療法と組み合わせることにより、この線量でも70パーセントの生存が可能であるという報告である。ただし、身長の低下は避けがたいということである。10人という小規模なパイロット試験であるので、これで結論を出すのは早いが、アメリカでは、この報告を受けて、現在、18Gyの臨床試験が進行中である。
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