食品偽装問題
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食品偽装問題(しょくひんぎそうもんだい)とは、食品に対して何らかの偽装を行う行為(食品偽装)によって起こる問題のことである。事件化されたものについては食品偽装事件とも言う。
食料品の小売り・卸売りや飲食店での商品提供において、生産地、原材料、食品添加物、消費期限・賞味期限、食用の適否などについて、本来とは異なった表示を行なった状態で、流通・市販がなされることがある[1][2][3]。販売以外の目的で偽装を行う場合もある(牛肉偽装事件など)[4]。
偽装の種類
- 産地偽装 - 生産地や食肉部位などを偽って表示する[5][6][7]。
- 原材料偽装 - 原材料を偽って表示する[8]。
- 消費期限・賞味期限偽装 - 消費期限および賞味期限を本来より後の日付に偽って表示する[9]。精肉の場合、日付の書かれたラベルの付いたパックを張り替えることからリパックと呼ばれる。通常は風味の衰えが分からないように生肉から味付け肉に作り変えられてリパックされるが、悪質な場合においては生肉のままリパックされる。
- 食用の適否の偽装 - 食用でないとされたものを食用と偽って販売する。
飲食店のメニューに産地や原材料を偽って掲載することはメニュー偽装と呼ばれる[10][11]。
主な食品偽装事件
発覚した時期の順に示す。
- C&Bカレー粉事件(1931年) - 当時最高峰とされていた英国C&B社の純正カレー粉に、日本国産のカレー粉が混入あるいは完全に擦り替えられていた事件。この事件は逆に国産カレー粉の品質の高さを裏付けることとなり、現在のハチ食品などが当時生産していた国産カレー粉の普及につながった。
- 東駒酒造二重ラベル事件(1970年)- 福島県棚倉町にあった東駒酒造が、二級酒の日本酒に特級酒のラベルを貼って販売していた偽装行為が発覚。東駒酒造は東北地方でも生産量で上位に顔を出す大手酒造メーカーであったが、販売先の約90%を占めていた生協組織が一斉に取引を中止したため、信用と販売ルートを一気に失い深刻な経営危機に陥った[12]。
- 牛肉偽装事件(2001年) - BSE対策事業の国産牛肉買い取り事業を悪用し、複数の食肉卸売業者が輸入牛肉を国産牛肉と偽って国に買い取りを要請し、補助金を詐取した事件[13]。
- 飛騨牛偽装事件(2003年) - 岐阜県養老町の丸明が肉質などの偽装表示を行っていた事件。
- ミートホープによる豚肉・鶏肉等の混入挽肉販売(2007年)[18]
- 石屋製菓による「白い恋人」の賞味期限偽装(2007年8月)[19][20]
- 赤福餅の消費期限偽装(2007年10月)[21][22]
- 船場吉兆(2007年) - 産地偽装や賞味期限偽装に加え、食べ残しの再提供など他の問題も発覚した[23][24][25][26]。
- 事故米不正転売事件(2008年9月) - 三笠フーズ(大阪市)・浅井(名古屋市)・太田産業(愛知県宝飯郡小坂井町[注釈 1])による事故米食用偽装転売[27][28][29]
- 大和屋商店による食肉偽装販売(2011年) - 肉の提供を受けた焼肉酒家えびすの不適切な処理もあり、ユッケ集団食中毒事件に発展した[30][31][32]。
- 浪花酒造による大吟醸酒原材料偽装(2013年2月)[33]
- 馬肉混入問題(2013年) - イギリスやアイルランドで牛肉を使用していると謳った食品に馬肉が混入していることが発覚した[34]。
- 食材偽装問題(2013年) - 2013年に大手ホテル・百貨店レストラン等のメニュー表示における、産地や食材の種類に関する虚偽表示・偽装表示が相次いで発覚した[35][36]。
- 木曽路による松阪牛メニュー偽装(2014年)[37]
- 産業廃棄物処理業者による不正転売事件(2016年) - 産業廃棄物処理業者から賞味期限切れ食品を購入した食品卸売業による転売も行われていた[38]。
- 神戸サカヱ屋食肉偽装事件(2019年) - 11月、精肉卸店の神戸サカヱ屋が「和牛」と偽って交雑種の牛肉を販売していたとして、肉を仕入れていた神戸の焼肉店経営会社が[39]不正競争防止法違反の疑いで同社を刑事告発した[40][41]。兵庫県は2020年2月5日までに同容疑と、さらにブランド豚肉「ひょうご雪姫ポーク」でもブランドを偽っていたとして、食肉計約6トンの偽装販売を認定したことを明らかにした(牛肉では0.5トンの不正を確認)[42]。同社は業界団体から改善指導を受けた2019年4月以降も牛肉の偽装を続けていた。
- アサリ産地偽装問題(2022年)
関連する法令
- 刑法(詐欺罪)
- 食品安全基本法
- 食品衛生法
- 農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律(JAS法)
- 不正競争防止法
- 不当景品類及び不当表示防止法(景表法)
- 消費者基本法
脚注
注釈
出典
- ^ 「西友の輸入肉偽装 返金、販売額の3.5倍に 札幌 若者殺到、打ち切る」『東京新聞』中日新聞東京本社、2002年9月30日。オリジナルの2002年10月4日時点におけるアーカイブ。2025年9月28日閲覧。
- ^ 「表示に偽りあり、さぬきうどん原料8割が豪州産と判明」『読売新聞』読売新聞社、2004年11月8日。オリジナルの2004年11月9日時点におけるアーカイブ。2025年9月28日閲覧。
- ^ 「熊本の馬刺し偽装立件へ 佐賀県警が販売業者捜索」『朝日新聞』朝日新聞社、2008年11月12日。オリジナルの2022年2月2日時点におけるアーカイブ。2025年9月28日閲覧。
- ^ 「偽装牛肉を学校給食に 容疑の食肉店主ら3人逮捕 香川」『朝日新聞』朝日新聞社、2007年11月2日。オリジナルの2007年11月2日時点におけるアーカイブ。2025年9月28日閲覧。
- ^ 「大阪市3セク産地偽装、カボチャも ミカンなども疑い」『朝日新聞』朝日新聞社、2004年7月24日。オリジナルの2004年7月26日時点におけるアーカイブ。2025年9月28日閲覧。
- ^ 「ゴボウも産地偽装の疑い 中国産、北海道産に詰め替えか」『朝日新聞』朝日新聞社、2004年7月24日。オリジナルの2004年7月27日時点におけるアーカイブ。2025年9月28日閲覧。
- ^ 「ブロッコリー産地偽装、三セク課長ら偽装認める」『読売新聞』読売新聞社、2004年7月26日。オリジナルの2004年7月30日時点におけるアーカイブ。2025年9月28日閲覧。
- ^ 「高島屋も食品虚偽表示 日本橋店など6施設で」『日本経済新聞』日本経済新聞社、2013年11月5日。オリジナルの2025年9月27日時点におけるアーカイブ。2025年9月28日閲覧。
- ^ 「船場吉兆、行政処分へ 農水省、偽装に「常習性」の見方」『朝日新聞』朝日新聞社、2007年11月2日。オリジナルの2007年11月2日時点におけるアーカイブ。2025年9月28日閲覧。
- ^ 「メニュー偽装7年間 阪急阪神ホテルズ、経営に影響必至」『朝日新聞』朝日新聞社、2013年10月23日。オリジナルの2013年10月24日時点におけるアーカイブ。2025年9月28日閲覧。
- ^ 「「鮮魚」表示一時中止も 料理偽装、ホテル業界に波紋」『朝日新聞』朝日新聞社、2013年10月23日。オリジナルの2013年10月24日時点におけるアーカイブ。2025年9月28日閲覧。
- ^ 「東駒、倒産状態に 二重ラベル事件」『朝日新聞』昭和45年(1970年)3月1日朝刊、12版、15面
- ^ 「偽装牛肉事件、羽曳野市長が「浅田来訪日」改ざん指示」『読売新聞』読売新聞社、2004年6月10日。オリジナルの2004年6月10日時点におけるアーカイブ。2025年9月28日閲覧。
- ^ 「大阪府肉連の浅田副会長を逮捕 6億4千万円詐取容疑」『朝日新聞』朝日新聞社、2004年4月17日。オリジナルの2004年4月29日時点におけるアーカイブ。2024年11月9日閲覧。
- ^ 「牛肉不正、フジチク元社長が「農水幹部に偽装を告白」」『読売新聞』読売新聞社、2004年11月9日。オリジナルの2004年11月9日時点におけるアーカイブ。2025年9月28日閲覧。
- ^ 「「フジチク」の牛肉偽装、元社長ら7人を逮捕へ」『読売新聞』読売新聞社、2004年11月2日。オリジナルの2004年11月2日時点におけるアーカイブ。2025年9月28日閲覧。
- ^ 「3県警、日ハムグループ一斉捜索 牛肉偽装で詐欺容疑」『東京新聞』中日新聞東京本社、2002年9月30日。オリジナルの2002年10月4日時点におけるアーカイブ。2025年9月28日閲覧。
- ^ 「ミートホープ社長逮捕へ 虚偽表示容疑 詐欺も立件方針」『朝日新聞』朝日新聞社、2007年10月16日。オリジナルの2007年10月17日時点におけるアーカイブ。2025年9月28日閲覧。
- ^ 「『白い恋人』賞味期限 10年間改ざん 石屋製菓社長も事実把握」『東京新聞』中日新聞東京本社、2007年8月16日。オリジナルの2007年8月19日時点におけるアーカイブ。2025年7月2日閲覧。
- ^ 「来週にも引責辞任 石屋製菓社長 『白い恋人』期限改ざん『まだ問題』示唆」『東京新聞』中日新聞東京本社、2007年8月18日。オリジナルの2007年8月20日時点におけるアーカイブ。2025年7月2日閲覧。
- ^ 「赤福、記号で偽装分類 日付の後に「.」や「―」」『朝日新聞』朝日新聞社、2007年10月24日。オリジナルの2007年11月7日時点におけるアーカイブ。2025年9月28日閲覧。
- ^ 「赤福、事業縮小も示唆 偽装は「現場の知恵」」『朝日新聞』朝日新聞社、2007年11月1日。オリジナルの2007年11月3日時点におけるアーカイブ。2025年9月28日閲覧。
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- ^ 「「船場吉兆」、総菜でも偽装 黒豆や胡麻豆腐」『朝日新聞』朝日新聞社、2007年11月1日。オリジナルの2007年11月3日時点におけるアーカイブ。2025年9月28日閲覧。
- ^ 「船場吉兆を家宅捜索 虚偽表示の疑いで大阪府警」『朝日新聞』朝日新聞社、2007年11月16日。オリジナルの2007年11月17日時点におけるアーカイブ。2025年9月28日閲覧。
- ^ 「ヒレ肉みそ漬けも偽装か 仕入れ書類残されず 船場吉兆」『朝日新聞』朝日新聞社、2007年11月17日。オリジナルの2007年11月17日時点におけるアーカイブ。2025年9月28日閲覧。
- ^ 「【事故米不正転売】大阪、京都、和歌山の給食業者にも流通か 被害さらに拡大の恐れ (1/2ページ)」『MSN産経ニュース』産業経済新聞社、2008年9月11日。オリジナルの2008年9月16日時点におけるアーカイブ。2025年9月28日閲覧。
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- ^ 「【事故米不正転売】メタミドホス米「いい米だ。全部買いたい」三笠フーズ社長」『MSN産経ニュース』産業経済新聞社、2008年9月11日。オリジナルの2008年9月16日時点におけるアーカイブ。2025年9月28日閲覧。
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- ^ 「今度はイスラム教徒向け「羊肉」に豚混入」『読売新聞』読売新聞社、2013年3月16日。オリジナルの2013年3月19日時点におけるアーカイブ。2013年3月16日閲覧。
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- ^ 「価格差最大3倍、偽装表示で利益 阪急阪神ホテルズ」『朝日新聞』朝日新聞社、2013年10月24日。オリジナルの2013年10月25日時点におけるアーカイブ。2025年9月28日閲覧。
- ^ 「しゃぶしゃぶの木曽路が偽装表示 安い肉提供」『日本経済新聞』日本経済新聞社、2014年8月15日。オリジナルの2025年9月27日時点におけるアーカイブ。2025年9月28日閲覧。
- ^ 「壱番屋製以外の賞味期限切れ品も転売 みのりフーズ」『中日新聞』中日新聞社、2016年1月18日。オリジナルの2016年1月18日時点におけるアーカイブ。2016年1月20日閲覧。
- ^ 「焼き肉店、交雑種を和牛として提供「卸元が偽装」」『神戸新聞NEXT』2019年8月23日。オリジナルの2019年11月7日時点におけるアーカイブ。2020年2月27日閲覧。
- ^ 「「和牛偽装」で精肉店「神戸サカヱ屋」を刑事告発 虚偽表示容疑で兵庫県警に」『毎日新聞』毎日新聞社、2019年11月22日。2020年2月27日閲覧。
- ^ 「神戸の焼き肉店が卸元の精肉店を告発 交雑種を和牛と偽装したとして」『サンテレビ』サンテレビジョン、2019年11月13日。オリジナルの2020年1月8日時点におけるアーカイブ。2020年2月27日閲覧。
- ^ 「兵庫県が食肉偽装6トン認定 神戸の精肉店」『日本経済新聞』日本経済新聞社、2020年2月5日。オリジナルの2025年9月27日時点におけるアーカイブ。2020年2月27日閲覧。
参考文献
- 『危ない食卓 十九世紀イギリス文学に見る食と毒』横山茂雄編 新人物往来社 2008年
- 『食品偽装の歴史』ビー・ウィルソン/高儀進訳、白水社、2009年7月
- 『食品偽装を科学で見抜く』 リチャード・エバーシェッド、ニコラ・テンプル/ 守 信人 訳 日経BP社 2017年4月
関連項目
食品偽装問題(産地・魚種)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/19 03:18 UTC 版)
「ウナギ」の記事における「食品偽装問題(産地・魚種)」の解説
日本国内において国内産ウナギと称して販売されているウナギの中にも、実際には外国産と表示すべきものがあり(産地偽装)、台湾から輸入したウナギに「愛知三河 一色産ウナギ」ブランドを付して流通させていたという事例があった。これを受け2008年6月18日、農水省はそのようなウナギがJAS法に違反しているとして業界団体等に適正な表示を依頼する文書を発出した。 また、グリーンピース・ジャパンが2017年秋に実施したDNA検査によるとニホンウナギとして販売されていたウナギが別種のアメリカウナギだった例もあったという(ただし問題とされた小売事業者の一部が独自に外部調査機関に依頼した結果ではニホンウナギだったとしている)。
※この「食品偽装問題(産地・魚種)」の解説は、「ウナギ」の解説の一部です。
「食品偽装問題(産地・魚種)」を含む「ウナギ」の記事については、「ウナギ」の概要を参照ください。
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