雌橋とは? わかりやすく解説

雄橋

(雌橋 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/06/14 14:02 UTC 版)

雄橋 下流側
上流側
帝釈峡上流部エリアの空中写真(1974年撮影)国土交通省 国土地理院 地図・空中写真閲覧サービスの空中写真を基に作成
地図

雄橋(おんばし)は広島県庄原市東城町帝釈峡にある天然橋比婆道後帝釈国定公園の一角を担う景勝地で、1987年昭和62年)5月12日に国の天然記念物に指定された[1]

ここでは雄橋の下流にある雌橋(めんばし)についても解説する。

雄橋

広島県北東部の帝釈川中流域に広がるカルスト地形(石灰石台地)で、帝釈川の浸食作用によって形成された石灰石の天然橋[2][3]。もともとは鍾乳洞であったものが、地底川の侵食の進行によって洞門が大きくなったことで天井部分が落盤し、一部分だけが橋状に残されたと考えられている[4][5]。従って、雄橋の橋床部分がかつての帝釈川の川底であったところだと考えられている[3]。台地の浸食が始まり橋が形成された時期は資料によってまちまちであるが、最近では第四紀の終わり、数十万年前以降[6][7][8]とされている。

長さ90 m, 幅19 m, 高さ40 mの日本最大規模であり[3][9]、日本記録認定協会の「日本で最も大きい天然橋」の日本記録に認定されている[10]。下を流れる帝釈川の水面からは橋の裏側まで18 mの高さがある。チェコ共和国プレビッシュトアー英語版アメリカ合衆国バージニア州ロックブリッジ郡ナチュラル・ブリッジ英語版とともに世界三大天然橋とされている[3][2]文政8年(1825年)の『芸藩通志』にも、雄橋が「神橋」(こうのはし)として紹介されている[2]。また地域住民にとって雄橋は長く信仰の対象でもあった[9]。橋の上は過去に実際に未渡地区と宇山地区の生活道として使用されていた[9]ことが遺残する古地図や石像から判明しており[2]、馬や馬車も通行していた[5]。周辺の道路整備によって雄橋の上の道は使われなくなり獣道となった[5]。橋の上には円礫層も見つかっており[5]、かつて帝釈川が現在の30-35m上の位置を流れていたとされる[5]

  • 2000年帝釈峡観光協会が雄橋の特別記念物への格上げを目指す活動を始めた[11]
  • 2003年に帝釈観光振興協議会と東城町によってライトアップが開始されたが、「生態系に影響を及ぼす」として広島県が翌年以降の実施にストップをかけた[12]
  • 2011年5月豪雨によって雄橋西側の歩道の反対側の斜面が幅6m、高さ20mにわたり崩落し、一度地中の石灰岩も崩落した。県北部農林水産事務所は、観光客の安全のため調査を行った[13]
鬼の唐門・鬼の窓

付近に「鬼の唐門」という同様の形成行程の天然橋が存在し、下を歩いてくぐることができる。「鬼の唐門」の上側には「鬼の窓」と呼ばれる鍾乳洞跡を望むことができ、ともに帝釈川の支流によって形成されたと考えられている。

雌橋

少し下流には雌橋と呼ばれる天然橋がある[9]。雄橋よりも小型であるが、雄橋と雌橋を題材にして2匹のが橋を造ったとされる伝承民話も伝えられている[9][14][15]1924年に下流に帝釈川ダムが建設されると帝釈川の水位が上昇し[9]、小石などの堆積が進行した。以前は雌橋も下を船で通過できるほどの高さがあったが、貯水池である神竜湖の満水時にはアーチ部分が水没するようになった[3][9][16]

1996年10月、雌橋の手前の遊歩道で石灰岩露頭の崩落が多発したために通行止めとなった。これにより徒歩では観光することができなくなったが、付近には「素麺滝」・「屏風岩」などの観光名所も多いために町議員と付近住民らは遊歩道の復旧を願い、署名活動を行って[17]広島県に働き掛けを行ったが、山岳部を経由する危険個所の迂回路が造られたのみに留まっている[17]。従来ルートの本格的な復旧には12億円が必要とされ、広島県自然環境課では予算調達困難としている[17]。そのため1996年以降は渇水期限定で、カヤックまたは観光船でしか雌橋を見ることはできない[18]

アクセス

出典

  1. ^ 楠見久・片山貞昭『日本の天然記念物』加藤陸奥雄ほか監修、講談社、1995年、pp. 905,907頁。ISBN 4-06-180589-4 
  2. ^ a b c d 現地設置の案内板(庄原市教育委員会が平成22年3月に設置したもの)に記載
  3. ^ a b c d e 浅井建爾 2001, p. 232.
  4. ^ 浅井建爾 2001, pp. 232–233.
  5. ^ a b c d e 文化財今昔 (11) 雄橋(広島県庄原市) 価値見直される天然橋 2005年9月20日 夕刊-3版 6頁 『山陽新聞』夕刊 写有 (全829字)
  6. ^ 地質学雑誌, vol.75(5), 1969
  7. ^ 天然記念物雄橋緊急調査報告書、庄原市教育委員会, 2007
  8. ^ 大阪経済法科大学科学技術研究所紀要, vol.12(1), 2008
  9. ^ a b c d e f g 「(橋に願いを)雄橋 広島県 水が示した、積年の「力」」『朝日新聞』東京版夕刊3ページ 夕刊be火曜2面、2010年11月30日
  10. ^ 日本で最も大きい天然橋”. 日本記録認定協会. 2023年6月14日閲覧。
  11. ^ 帝釈峡観光協会 「雄橋を特別記念物に」 まず東城町教委へ要請(広島県)中国新聞 2000年05月26日 中国朝刊 北B/総合東 写有 (全542字)
  12. ^ ブランド輝け 第2部 全国区 <3> 帝釈峡 『中国新聞』2009年5月5日 朝刊 連載 県北 (全783字)
  13. ^ 帝釈峡 「雄橋」西側の山肌崩落 雨で地盤緩む 県が安全確保へ調査 2011年5月21日 備後2-15版 25頁 『山陽新聞』朝刊 写有 (全650字)
  14. ^ 「里山 いのちの譜 正本真理子 <8> 帝釈峡」『中国新聞』、2010年1月25日朝刊、連載『洗心』
  15. ^ 「鑪製鉄と民話 小冊子に 東城の渡辺さん」『中国新聞』、2007年3月13日朝刊 県北
  16. ^ 「求む 古い帝釈峡資料 観光協が呼び掛け(広島県)」『中国新聞』、1998年7月11日 中国朝刊 北B
  17. ^ a b c 「「帝釈峡」遊歩道通行止め 復旧へ住民ら署名活動 Bingo現場から」『読売新聞』、2010年10月10日
  18. ^ 「29日に湖水開き 帝釈峡に観光シーズン到来 渓谷美を体感しよう 名所巡る初のスタンプラリー」『山陽新聞』、2013年4月24日朝刊 備後1-15版、30ページ
  19. ^ 「カヤック乗りごみ回収 帝釈峡・神竜湖で清掃作戦 20日、湖岸の散策道も」『山陽新聞』、2013年3月13日朝刊 備後1-15版、26ページ

外部リンク

参考文献

関連項目

座標: 北緯34度51分43.1秒 東経133度12分23.0秒 / 北緯34.861972度 東経133.206389度 / 34.861972; 133.206389


雌橋

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/10 17:21 UTC 版)

雄橋」の記事における「雌橋」の解説

少し下流には雌橋と呼ばれる天然橋がある。雄橋よりも小型であるが、雄橋と雌橋を題材にして2匹の鬼が造ったとされる伝承民話伝えられている。1924年下流帝釈川ダム建設される帝釈川水位上昇し小石などの堆積進行した以前は雌橋も下を船で通過できるほどの高さがあったが、貯水池である神竜湖満水時にはアーチ部分水没するようになった1996年10月、雌橋の手前の遊歩道石灰岩露頭崩落多発したために通行止めとなった。これにより徒歩では観光することができなくなったが、付近には「素麺滝」・「屏風岩」などの観光名所も多いために町議員と付近住民らは遊歩道復旧願い署名活動行って広島県働き掛け行ったが、山岳部経由する危険個所迂回路造られたのみに留まっている。従来ルート本格的な復旧には12億円が必要とされ、広島県自然環境課では予算調達困難としている。そのため1996年以降渇水期限定で、カヤックまたは観光船でしか雌橋を見ることはできない

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