鑑定評価の基本的事項(総論第5章)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/09/13 03:11 UTC 版)
「不動産鑑定評価基準」の記事における「鑑定評価の基本的事項(総論第5章)」の解説
不動産の鑑定評価にあたっては、基本的事項として、対象不動産、価格時点及び価格又は賃料の種類を確定しなければならない。 1.対象不動産の確定 Ⅰ 対象確定条件 Ⅱ 地域要因又は個別的要因についての想定上の条件 Ⅲ 調査範囲等条件 2.価格時点の確定 3.価格又は賃料の種類の確定 不動産の鑑定評価によって求める価格は、基本的には正常価格であるが、鑑定評価の依頼目的に対応した条件により限定価格、特定価格又は特殊価格を求める場合がある。 正常価格 市場性を有する不動産について、現実の社会経済情勢の下で合理的と考えられる条件を満たす市場で形成されるであろう市場価値を表示する適正な価格をいう。 現実の社会経済情勢の下で合理的と考えられる条件を満たす市場とは、以下の条件を満たす市場をいう。 (1)市場参加者が自由意思に基づいて市場に参加し、参入、退出が自由であること。 なお、ここでいう市場参加者は、自己の利益を最大化するため次のような要件を満たすとともに、慎重かつ賢明に予測し、行動するものとする。 ① 売り急ぎ、買い進み等をもたらす特別な動機のないこと。 ② 対象不動産及び対象不動産が属する市場について取引を成立させるために必要となる通常の知識や情報を得ていること。 ③ 取引を成立させるために通常必要と認められる労力、費用を費やしていること。 ④ 対象不動産の最有効使用を前提とした価値判断を行うこと。 ⑤ 買主が通常の資金調達能力を有していること。 (2)取引形態が、市場参加者が制約されたり、売り急ぎ、買い進み等を誘引したりするような特別なものではないこと。 (3)対象不動産が相当の期間市場に公開されていること。 限定価格 市場性を有する不動産について、不動産と取得する他の不動産との併合又は不動産の一部を取得する際の分割等に基づき正常価格と同一の市場概念の下で形成されるであろう市場価値と乖離することにより、市場が相対的に限定される場合における取得部分の当該市場限定に基づく市場価値を適正に表示する価格をいう。 限定価格を求める場合を例示すれば、次の売買に関連する場合が挙げられる。 (1)借地権者が底地の併合を目的とする売買 (2)隣接不動産の併合を目的とする売買 (3)経済合理性に反する不動産の分割を前提とする売買 特定価格 市場性を有する不動産について、法令等による社会的要請を背景とする鑑定評価目的のもとで、正常価格の前提となる諸条件を満たさないことにより正常価格と同一の市場概念の下において形成されるであろう市場価値と乖離することとなる場合における不動産の経済価値を適正に表示する価格をいう。 特定価格を求める場合を例示すれば、次の価格を求める場合が挙げられる。 (1)各論第3章第1節に規定する証券化対象不動産に係る鑑定評価目的の下で、投資家に示すための投資採算価値を表す価格 (2)民事再生法に基づく鑑定評価目的の下で、早期売却を前提とした価格 (3)会社更生法又は民事再生法に基づく鑑定評価目的の下で、事業の継続を前提とした価格 特殊価格 文化財等の一般的に市場性を有しない不動産について、その利用現況等を前提とした不動産の経済価値を適正に表示する価格をいう。 不動産の鑑定評価によって求める賃料は、一般的には正常賃料又は継続賃料であるが、鑑定評価の依頼目的に対応した条件により限定賃料を求めることができる場合がある。 正常賃料 正常価格と同一の市場概念の下において新たな賃貸借等(賃借権若しくは地上権又は地役権に基づき、不動産を使用し、又は収益すること)の契約において成立するであろう経済価値を表示する適正な賃料(新規賃料)をいう。 限定賃料 限定価格と同一の市場概念の下において新たな賃貸借等の契約において成立するであろう経済価値を適正に表示する賃料(新規賃料)をいう。 限定賃料を求めることができる場合を例示すれば、次の賃貸借等に関連する場合が挙げられる。 (1)隣接不動産の併合使用を前提とする賃貸借等 (2)経済合理性に反する不動産の分割使用を前提とする賃貸借等 継続賃料 不動産の賃貸借等の継続に係る特定の当事者間において成立するであろう経済価値を適正に表示する賃料をいう。
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