金春家伝来の能面・能装束
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/18 07:07 UTC 版)
明治維新後、困窮した金春家は家伝の能面・能装束類の一部を京都や大阪で売却した。能面や装束がなければ、春日若宮おん祭での演能ができなくなってしまうことから、明治9年(1876年)、春日神社(現・春日大社)は、金春家に残った面・装束類を引き取った。これらの面・装束類は、諦楽舎(ていらくしゃ)という民間団体が管理することとなった。この諦楽舎とは、奈良の実業家今村勤三が中心になり、地元の有志が結成した保存会である。昭和25年(1950年)、これらの面・装束類(能狂言面47面、装束類190件余)は東京国立博物館によって購入された。 東京国立博物館所蔵の金春家伝来品のうち、能狂言面は47面が一括して重要文化財に指定され、装束は能衣装7件(2018年現在)が重要文化財に指定されている。能面は大部分が江戸時代の作品だが、南北朝から室町時代にさかのぼるものもあり、猩々(しょうじょう)、曲見(しゃくみ)などは金春家の本面(後世、多くの写しが作られるもととなったオリジナルの名物面で、多くは室町時代の作)の可能性が高い。そのほか、翁、尉(じょう)、鬼神、男面、女面などの代表的な面種が一通りそろっている。 金春家伝来の能面(東京国立博物館蔵) 翁(白式尉)(おきな・はくしきじょう) 室町時代 15世紀 父尉(ちちのじょう) 南北朝 - 室町時代 14 - 15世紀 延命冠者(えんめいかじゃ) 南北朝 - 室町時代 14 - 15世紀 阿古父尉(あこぶじょう) 安土桃山 - 江戸時代 16 - 17世紀 小尉(こじょう) 江戸時代 18 - 19世紀 猩々(しょうじょう) 室町時代 15 - 16世紀 童子 江戸時代 17 - 18世紀 痩男 江戸時代 17 - 18世紀 「児玉近江」焼印 痩男 江戸時代 18世紀 怪士(あやかし) 江戸時代 17 - 18世紀 「天下一備後」焼印 黒髭 安土桃山時代 16世紀 大天神(おおてんじん) 室町時代 15世紀 長霊癋見(ちょうれいべしみ) 江戸時代 17世紀 「天下一近江」焼印 小癋見(こべしみ) 江戸時代 18世紀 猿飛出(さるとびで) 室町 - 安土桃山時代 16世紀 小面(こおもて) 室町時代 15 - 16世紀 小面 江戸時代 17世紀 「天下一河内」焼印 小面 江戸時代 17 - 18世紀 「出目満昆」焼印 曲見(しゃくみ) 室町時代 15 - 16世紀 曲見 江戸時代 17世紀 増女(ぞうおんな) 江戸時代 17 - 18世紀 姥(うば) 室町 - 安土桃山時代 16世紀 般若 江戸時代 17世紀 ※上の画像の能面はいずれも東京国立博物館所蔵「金春宗家伝来能面」47面(重要文化財)のうち。 ※各能面の名称・制作年代は、東京国立博物館編集・発行『金春家伝来の能面・能装束』、2017、による。
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