重要な情報の保存
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/31 22:23 UTC 版)
「日本における地震対策と体制」の記事における「重要な情報の保存」の解説
2014年現在、日本のデータセンターの70%が関東地方にあるという。データセンターは建物を免震または制震構造としているが、首都直下地震が発生し大規模な停電が起きると機能を停止してしまう。停電に備えて自家発電装置もあるが、おおむね72時間で発電機の燃料がなくなると言われている。そうした事態に備えて、データセンターのデータは遠方の別のデータセンターにバックアップされているが、センターによってはバックアップを1日1回しか実施せず、そのため地震発生前の最後のバックアップ分までしか残せない可能性がある。また、データセンターのデータの利用者は、関東地方のデータセンターから遠方のデータセンターに切り替えれば直ちに業務を継続できるが、首都直下地震の影響で電話線や光ケーブルが切断されている地域の利用者はデータセンターに接続できないという問題がある。 東日本大震災では戸籍データが津波で消失・滅失した事例があった。岩手県の陸前高田市と大槌町、宮城県の女川町と南三陸町で、津波による浸水で庁舎内にあった戸籍システムのサーバが水没し、磁気データとして記録されていた戸籍、計38,622件が失われた。震災のあった時点では、戸籍データは磁気テープに記録されたその副本が市区町村から管轄法務局に年1回送付されていた。法務局は副本に基づいて戸籍の再製データを作成して4市町に提供し、4市町において戸籍の再編が行われた。副本データは震災の前年の3月分までしか残っていなかったが、前年4月以降に提出された婚姻届や出生届などで補ったり、住民に自己申告するように告知するなどした。このように東日本大震災では副本データによって戸籍を再編することができたが、データがバックアップされていなかった部分の再編には時間と労力を要した。また、市区町村庁舎と管轄法務局が同時に被災すれば、戸籍データが正本も副本も滅失する事態が考えられた。そのため、法務省は2013年(平成25年)1月に戸籍法施行規則の一部を改正し、市区町村で更新された戸籍の副本データを遠隔地にある戸籍副本サーバに送信することとした。副本データはセキュリティ性の高い総合行政ネットワーク (LGWAN) を利用して毎日送信される。管轄法務局は副本データを保管せず、遠隔地のサーバに保管された市区町村の副本データを管理することとなった。運用は2013年9月から始まった。なお、以上は戸籍がデータ化されている市区町村についての説明であり、戸籍のデータ化を行っていない市区町村では異なる対応となる。 法務省は2013年に、首都直下地震などの大規模災害時にも日本各地にある所管施設(法務局、検察庁など)を相互に結ぶネットワークを維持するべく、通信回線の二重化を図ることとした。情報の暗号化のために、法務省や所管施設間の通信は首都圏にある法務省の特定の施設を必ず経由していたが、大災害で首都圏の特定の施設や通信網が被災すれば、たとえば九州内の異なる施設同士でも通信ができなくなる。そのため、首都圏から離れた関西地方などに、首都圏の施設と同等の機能を備えた施設を併設することで、一方が被災しても一方が稼働して引き続きネットワークを運用できるようにする。
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