酒米の質量と栽培形態
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/16 23:15 UTC 版)
米は1俵=60kgであり、稲作農地(田んぼ)は面積1反を以って基本単位とするが、平均的な食用米が1反につき10俵近く獲れるのに対し、平均的な酒米は4~7俵ぐらいしか獲れない。無理に収量を増やそうとすると、1反あたりの土壌の養分の量は決まっているので、獲れる米の質が落ちる。化学肥料を使って土壌へ人工的に養分補給を行うことは可能だが、獲れる米は有機栽培に比べて脆くなり、やはり質が低下する。そのため、基本的に収量と米質は反比例の関係にあると言ってよい。 それぞれの品種の酒米において、個々にそうした反比例が成り立つため、上級品種だからといって必ずしも下級品種よりも良い米質であるとは限らない。わかりやすい例を出せば「酒米の王様」と呼ばれる山田錦も、どの土地で・どの土壌で・どの農法で・どの篤農家によって栽培されたかによって、品質はピンからキリまである。たとえば雄町は、元来は大変優れた品種であったが、あちこちで収量を増やしたために品質が落ちた。 平均的な酒造好適米の価格は1俵あたり14,500円程度、平均的な山田錦は1俵17,000-18,000円程度、1反で4.5俵しか獲れないような高品質な山田錦になると1俵40,000円程度であるが、もちろん毎年の米の作柄などによっても変動する。 現在は、酒蔵が酒米を作る篤農家と契約栽培を結ぶときには、酒米の質を落とさないために、できた米1俵単位で契約するものではなく、はじめに田の面積1反あたりいくらで契約するのが通例である。その方が、農家にとっても1年の収入が保証されているので安心して酒米作りに専念できるからである。 収穫直前の台風などで稲が倒れた場合は、稲を起こせば何とか収穫できる程度の損害であっても、篤農家は酒米作りの名人としてプライドがあるため米を蔵に売らない。その場合は蔵としても原料調達にコストをかけることになるので、そういう酒造年度は当然酒の値段が上がる。たいていプライス・リーダー的な酒蔵から値段が上がっていく。その年々の気候を思い返しながら、翌年に出回ってくる酒の値段を読むのも興味深いものがある。
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