避難のプロセス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/18 02:23 UTC 版)
人間が危険を知って避難を行うに至るまでの行動や心理面のプロセスは、資料や研究者により異なるが、一例を示せば以下のようになる。 災害の脅威が発生したあるいは接近していること、または災害の危険性があることを知る段階(危険の察知) 災害の危険性を示す情報が、本当かどうかを確かめる段階(確認) 自分が今いる場所の危険性がどの程度高いのかを判断する段階(危険性の評価) 避難することの有効性や損得を評価する段階(避難の有効性の評価) 避難中の安全性や避難の実現性を評価する段階(避難の実行可能性の評価) 避難することを決断する(避難の決断) 避難先、避難経路、タイミング、手段などを決める段階(避難行動の決定) 実際に避難する 3.の危険性の評価は、住民各自が持っている過去の経験に基づいて主観的に予想するものであり、経験のない人は「自分なら大丈夫」「今回は大丈夫」などと考えて危険性を過小評価する傾向にあるといわれている。これを正常性バイアスという。また、間近に迫っている危険を実際に見聞きしているかどうか、警報や避難情報などが出されているかどうかといった点も、評価に影響を与える。ここで、同じような災害において、警報が出されても大きな被害が出ない(報じられない)事態、つまり空振りと認識される事が続くと、その効果が次第に低下してしまう現象が起きる。 5.の避難の実行可能性の評価は、災害が進展すればするほど可能性を低く評価してしまう。例えば、大雨や暴風雨がすでに激しくなってしまっている状況では、避難時の危険を考えて自宅に留まるというように避難をしない判断に至る場合が多くなる。 3.の災害の危険性と、5.の避難の安全性は、共に避難行動を左右するにも関わらず相反する関係にある。例えば、暴風雨がすでに激しくなっている段階では目前にある災害に対して強い実感を持つが危険性は高い。一方、暴風雨が予想されているがまだ穏やかな状態では、避難の危険性は低いが災害の危険の実感は涌きにくい。警報や避難情報を出すときには、この両者のバランスがとれた「避難のゴールデンタイム(Golden Time)」に出すと最も効果が高くなると考えられている。ただし、避難に時間がかかる要援護者の場合や、避難所までの所要時間が長い地域、周辺より災害が起きやすいところ(例えば浸水しやすい低地など)などでは、避難のゴールデンタイムを他よりも早めにしなければならない。このように、警報や避難情報を出すタイミングは個人差や地域差も考慮する必要がある。
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