避難を促す教育
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/18 02:23 UTC 版)
片田敏孝らは、岩手県釜石市の小中学校で2003年から津波防災教育に助力した。そこでは、自然災害や避難に対する考え方として、以下の3原則を教えている。なお、子供への防災教育は、親や地域に波及する効果も期待される。一方で、親や地域住民の防災姿勢がその教育と整合していなければ実行性が低下するため、学校と家庭・地域の連携も求められる。また、ここでは「津波の恐ろしさ」を最初に伝えることは避け、海の恵みというメリットを享受している半面、数十年に一度津波というデメリットを受けざるを得ないということを前置きし、常日頃から災害に怯えたり恐れたりするのではなく、「その時」だけしっかりと避難することで地域の自然に誇りを持つことを教えているという。 想定にとらわれるな - ハザードマップには一定の効果がある半面、災害イメージを固定化させる側面がある。ハザードマップは、あるシナリオに基づいて作成された無数の災害パターンの1つに過ぎず、それを超える可能性は十分にありうる。例えば東日本大震災において釜石市では、ハザードマップの想定を大きく超えて内陸まで津波が到達した。そのため、自ら状況判断することの重要性を説いている。 その状況下で最善を尽くせ - 東日本大震災において釜石市の鵜住居小学校・釜石東中学校の児童・生徒は、校内放送を待たず率先して避難を始め、避難場所に指定されていた老人ホームまで避難した。しかし、施設近くの崖が崩れかけていたり津波が防潮堤を超える様子を見て更なる避難を呼びかけ、より高い介護福祉施設まで、更により高い石材店まで避難した。実際の津波は、小学校では校舎の3階まで到達、老人ホームでも3mを超え、介護福祉施設の手前まで到達した。「ここまで来れば大丈夫」ではなく、できる限り最善の行動をとるよう説いている。 率先避難者たれ - 正常性バイアスなどが働くため、人間の心理として、なかなか避難を決断することができない。一方、これも人間の心理として、誰かが率先して避難すれば、同調して周囲の人が避難しやすくなる。
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