道路交通法の規定
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/20 06:35 UTC 版)
第72条第1項前段では、「交通事故があったときは、当該交通事故に係る車両等の運転者その他の乗務員 (中略) は、直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない。」と規定されている。 「ひき逃げ(轢き逃げ)」と呼ばれるが、人を轢いた場合に限らず、車同士の衝突事故で相手が負傷した場合など人身事故になっているとき(救護義務が生じるとき)に事故現場から逃走した場合も「あて逃げ」ではなく「ひき逃げ」となる。 また「〜逃げ」となっているが、法律の条文上は「逃げる」事は構成要件には含まれない。すなわち、事故の当事者が運転を直ちに停止しないか、または救護義務、危険防止措置義務を怠ることで、犯罪が成立する。 犯罪の主体は、「車両等の運転者その他の乗務員」であり、「車両等」は自動車だけでなく原動機付自転車、自転車を含む軽車両、トロリーバス、路面電車も対象であり、これらの運転者または乗務員(双方合わせて条文で「運転者等」)が主体になる。主体にならないのは歩行者(道路交通法第2条第3項により歩行者とみなされる車を含む)だけである。ここで「乗務員」とは、バス・路面電車の車掌や添乗員など、車両の運行に補助的に携わっている者であり、単に同乗している者は含まれない。 道路交通法第72条は、交通事故に関係した車両等の運転者等について次のような義務を課している。 直ちに運転を停止する義務(事故発生直後に現場を去らないなど) 負傷者の救護義務(負傷者を安全な場所に移動し、可能な限り迅速に治療を受けさせることなど) 道路上の危険防止の措置義務(二次事故の発生を予防する義務) 警察官に、発生日時、死傷者・物の損壊の状況や事故後の措置、積載物を報告する義務 報告を受けた警察官が必要と認めて発した場合に(通常は必ず発する)警察官が到着するまで現場に留まる命令に従う義務 これらのうち最も罰則が重いのが、人身事故に関係した車両等の運転者等が、直ちに運転を停止せず、または救護義務および危険防止措置義務を果たさない、人身事故に係る救護義務・危険防止措置義務違反である。これが「ひき逃げ」と言われる犯罪である。 ただし、事故と同時に人が明らかに即死していたような場合には、負傷者には該当しないため、負傷者の救護義務違反には問えなくなる。ただし、危険防止措置義務の懈怠により二次事故が発生し、それにより即死死体が損壊したような場合、人身事故に係る危険防止措置義務違反が成立する。 物損事故については、それに関係した車両等の運転者等が、直ちに運転を停止せず、または危険防止措置義務を果たさない、物損事故に係る危険防止措置義務違反が「あて逃げ」と言われる犯罪に当たる。 第72条の救護義務・危険防止措置義務は、第一義的には、事故当事者車両等の運転者等にだけ課せられる。事故当事者車両などに単に同乗していた者や、単に現場に居合わせた者、警察官や救急隊員には、同条による義務は課せられない(ただし警察官・救急隊員には別途、職務上の義務は課せられる場合がある)。 事故当事者車両などの運転者等が、負傷その他の理由で救護義務・危険防止措置を尽くせない場合には、救急車や救急隊員による救護の支援、あるいは警察官により代理で現場の危険防止措置が執られる場合があるが、そうでない場合に当事者の運転者などが措置義務を尽くさない場合は、同条違反の罪に当たる。
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