近親交配の危険性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/24 15:12 UTC 版)
近親交配の特徴は、両親の血縁が近いため、その両者が共通の劣性遺伝子を持っている可能性が高くなることである(ここで言う優性劣性とは、形質の優劣の意味ではなく、遺伝学の用語である)。有性生殖をする生物の多くは(性染色体などの例外を除き)遺伝因子一つにつき一対(二つ)の遺伝子を持っている。一方は父親から、もう一方は母親から受け継いだものである。どちらか片親からその遺伝子をもらっただけで形質に現れる遺伝子を優性の遺伝子、両親から同一の遺伝子をもらった場合のみにその形質が現れるのを劣性の遺伝子という。 例えばABO式血液型では、A型とB型の遺伝子が優性、O型の遺伝子は劣性である。一般的に血液型と言われる表現型のO型は両方の親からO型の遺伝子を受け継がなければ発現しない(子に引き継がれた遺伝子がAとOならA型が、BとOならB型が発現し、OとOの場合のみO型が発現する。詳しくは、ABO式血液型の項目を参照)。また耳垢は湿性が優性で乾性が劣性である。 遺伝子の中には耳垢のように生存に無関係のものが多いが、有利・不利をもたらすものもある。それらはそれぞれ優性(顕性)の場合もあれば劣性(潜性)の場合もある。集団内で見れば、生存に不利な遺伝子のうち、優性のものは高い頻度で発現する。そのような遺伝子を受け継いだ個体は生存と繁殖上不利であるから自然選択によって取り除かれる。一方、遺伝学における劣性であり、かつ生存に不利な遺伝子は、その発現のしにくさゆえに取り除かれにくい。そのため、現生生物のほとんどの種では生存上不利な遺伝子は、突然変異を除けば、おおむね劣性遺伝子として伝えられている。また、そのような不利な劣性遺伝子を持つ系統は、持たない系統に比べて繁殖上やや不利であり、集団全体から見れば不利な劣性遺伝子の割合も少数派になるのが普通である。 個体について言えば、一般的な交配(血縁関係の遠い個体との交配)ではそのような少数派の劣性遺伝子を両親とも偶然に持っていることは少ない。親の一方から少数派の遺伝子を受け継いでも、もう一方からそれを打ち消すような優性の遺伝子を受け継ぐ可能性が高く、結果としてその形質が子供に現れる可能性は低まる。しかし近親交配の場合には、両親が同じ劣性遺伝子を持つ可能性が高いため、その劣性遺伝子が子に伝わって発現する可能性が高まる。端的に言えば先天性の病気や障害が起きやすくなるのである。[要検証 – ノート]
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