近親交配の利用
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/24 15:12 UTC 版)
品種改良において望ましい形質が頻度の低い劣性遺伝子に基づいている場合、その遺伝子のホモ接合によって、形質を顕在化して固定する効果があるために、近親交配が有効な手段となる。競走馬や食用牛の品種改良の際に、親の持つ好ましい形質を簡単に導入する手段として広く用いられている。たとえば望ましい形質を持つ個体が出現した際、その形質を再び出現させるためにその親と交配させるのは戻し交配といって品種改良における手法の一つとされる。 生物学においては、マウスなどの実験動物から遺伝的に均一な集団を得る目的で用いられる。そのようにして得られた系統は、時に近交系と呼ばれる。マウスにおいてはイギリスのキャッスルの元で近交系マウスの樹立が行われ、癌に関する遺伝子研究等において不可欠となった。 ペットの近親交配については野放しに近い状態が続いていたが、先天性異常を持つ個体の増加につながるとの批判があるため、近親交配がおこなわれた場合には血統書を発行しないなどの措置がとられつつある。 他方競走馬も近年は近親交配が避けられる傾向にある。もっとも競走馬の近交係数(親縁係数)は、もともと他の家畜に比べれば低いほうで、コロナティオン(両親の片親が同じ、近交係数約14%)のような近交は例外的である。日本ダービー史上最も近交係数の高い馬は約4%の値を持つフサイチコンコルドだが、この馬にしても2005年に北海道で生まれた雌牛の平均近交係数5.9%よりも低い値に過ぎない。また、かつては逆に8代以内に共通祖先がいないなど自然条件下ではまずありえないであろう配合も試されたがこちらも現在では無意味だと考えられている。 詳細は「インブリード」を参照
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