農業補償
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/14 21:05 UTC 版)
「飛騨川流域一貫開発計画」の記事における「農業補償」の解説
農業に関連する補償としてはダム建設に伴う農地水没に対する補償、特産品栽培に対する補償、慣行水利権に対する補償の3種類が飛騨川流域の水力発電事業では見られた。ここでは後二者について解説する。 特産品補償については朝日ダムと高根第一ダムにおいて見られた。当時朝日村と高根村ではワラビの根からワラビ粉を生産しており、高根村では特産品として多額の収入を上げており生活基盤の一つであった。しかしダム建設に伴い移転する住民の中には、ワラビ粉の生産が不可能になるため収入の途が閉ざされる。このため減収に対する補償が求められ、生活再建の一環として補償が転出住民に行われた。 一方慣行水利権に対する補償は、主に農業用水の取水がダムや発電所の建設によって取水量が減少し、十分な灌漑が行われなくなることに対する補償である。これは戦前・戦後を問わず、発電所建設時に水利権を取得する際に交付される水利使用許可命令書、あるいは水利使用規則においてこれら慣行水利権の使用に支障を来たさないようにしなければならないと定められているためであり、農業保護対策として水利権使用の許認可権を持つ河川管理者が特に注文していた。 飛騨川の水力発電開発の場合、瀬戸第二発電所や朝日発電所、久々野発電所、小坂発電所において頭首工の新設や取水堰からの河川維持放流によって慣行水利権分の流量を維持する対策が取られており、多目的ダムや治水ダムにおける目的の一つ不特定利水が事実上実施されている。馬瀬川第二発電所では発電用水利権により取水される水で農業用水の取水に支障を来たすことから新たに揚水施設を建設した。東上田発電所では流域の旧萩原町が丘陵地に農地が多く営まれているため、ダム建設に伴う取水量減少に不安を持つ土地改良区が反対していた。またダムから発電所へ導水するためのトンネル工事で水脈を掘ったことから、渓流が枯渇したり水が少なくなることで農業用水11件、800戸の水道供給に被害を与えた。このため補償費支払いのほか頭首工の新設、簡易水道整備などの対策を実施している。
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