車両甲板への浸水と機関停止
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/29 17:44 UTC 版)
「洞爺丸」の記事における「車両甲板への浸水と機関停止」の解説
その後も、風は一向におさまらず、波はさらに高くなり、19時30分頃から、大きな縦揺れによって車両甲板船尾開口部から海水をすくい込むようになり、徐々に車両甲板上に海水が滞留していった。機械室では20時05分頃より、左舷後部逃出口から、この車両甲板に滞留した海水の流入が始まり、その後左舷前部逃出口、前部、後部の空気口、右舷出入口からの流入へと拡大した。この頃、船は左舷への5、6度の固定傾斜を中心に最大30度程度の横揺れをしており、21時頃には、この左舷への固定傾斜は、ヒーリングポンプ操作で一時水平に復したが、程なく左舷傾斜に戻ってしまった。21時頃には流入して船底に溜まった海水(ビルジ)は多量となったが、船体動揺激しく十分排水できず、21時30分頃には左舷発電機が停止してしまった。同じ頃、左舷主機械にも異常振動あり直ちに停止させたが、原因不明のまま5分後船位維持のため再起動させた。21時40分頃船体は左舷に20度ほど傾斜し、21時50分頃には左舷復水器循環水・抽気両ポンプの駆動電動機が、ビルジに浸かり短絡して停止、これによって左舷主機械が停止してしまった。22時頃から船体の傾きは右舷側に変わり、22時05分には右舷復水器循環水ポンプ駆動電動機もビルジに浸かり停止し、右舷主機械も停止してしまった。 ボイラー室でも20時15分頃から、左舷後部逃出口周縁からの浸水が始まり、続いて右舷後部逃出口からも浸水があった。20時25分頃船体が左舷に傾斜した時、左舷側の4・6号缶の石炭取り出し口から石炭が海水と共に流出、続いて右舷傾斜時には右舷側の3・5号缶の石炭取り出し口からも同様の流出があり、22時05分の両舷主機械停止時には、焚火可能なボイラーは、1・2号缶のみで、右舷発電機運転継続のため、この2缶の蒸気圧を保持し、機関部船員は退避した。しかし残留蒸気圧で運転中の右舷発電機の程なくの停止は必至なため、2等機関士らは端艇甲板に上がり、非常用ディーゼル発電機の起動を試みた。しかし船体傾斜による燃料油流下不良もあり、結局起動することはできなかった。洞爺丸は左舷主機械停止の頃から推力不足もあり走錨の度を速め、両舷主機械停止により完全に操船不能となり、主として左舷側から風浪を受け、右舷への傾斜を増していった。両舷主機械停止の報は、直ちに運航指令あて打電され、乗客に対しては、「機関故障のため航行不能となり、七重浜に座礁する」むねの船内放送があり、救命胴衣着用の指示も出された。
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