議長決裁権の判断
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/15 15:27 UTC 版)
議長決裁権については消極に判断すべきとする説と積極・消極のいずれにも自由に判断しうるとの説がある。 会議原則の一つである現状維持の原則によれば議長決裁は消極的・現状維持的に行使されることが基本と考えられている。これは否決しておくことで再度審議の機会を与えることや現状打破の責任を公平の立場にあるべき議長が負うべきでない点に根拠を置いている。ただ、可否同数の場合にはこのような一定の政治的配慮が適当ではあるものの、日本国憲法第56条第2項は議長決裁の消極的・現状維持的な行使を法的にも要求するものではないと解されている。上のように少なくとも日本においては国会の両院の議長は表決に加わらないものとされていることから、議長決裁権とは本質的には通常議長が行使しない表決権が可否同数の場合に議長決裁という形で行使されているものと解されている。このことから議長の決裁権がもともと自らの議員としての表決権であるとすれば、理論上はいずれにも自由に判断しうると解され、可否同数の場合には一定の政治的配慮が適当であるが最終的には議長の判断ないし責任に委ねたものと解されている。 旧憲法下の帝国議会では、慣例として「議長決裁は消極的にする」ことが原則とされていたが、予算案はこの限りではなく、予算案を否決してしまうと年度内に予算が成立しない恐れがある場合などは、混乱を避けるため議長は可決の決裁をするということが申し合わされていた。 新憲法下では決裁は議案に応じて議長や委員長が自由な判断により決するようになっている。国会の本会議で議長決裁が行われたことはこれまでに2例存在する。 帝国議会本会議における議長決裁の例採決議院議長案件可否決裁1891年(明治24年)12月17日 衆議院 津田真道(副議長) 商法及び商法施行条例の一部施行に関する法律案の第三読会開会案 64 64 否決 1897年(明治30年)3月15日 衆議院 鳩山和夫 自家用酒税法改正案の第二読会開会案 54 54 否決 1897年(明治30年)3月24日 衆議院 鳩山和夫 重要輸出品同業組合法案の第二読会開会案 87 87 否決 1907年(明治40年)3月27日 衆議院 杉田定一 第二女子高等師範学校位地に関する建議案 131 131 否決 国会本会議における議長決裁の例採決議院議長案件可否決裁1975年(昭和50年)7月4日 参議院 河野謙三 政治資金規正法改正案 117 117 可決 2011年(平成23年)3月31日 参議院 西岡武夫 国民生活等の混乱を回避するための平成二十二年度における子ども手当の支給に関する法律の一部を改正する法律案 120 120 可決
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