設置後の利用状況
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/18 00:50 UTC 版)
慈恵病院では新生児の預け入れを想定していたが、2007年の「こうのとりのゆりかご」設置後に初めて預けられた子供は、3歳の幼児であった。運用初日の2007年5月10日正午の2~3時間後に県外から連れて来られたとみられ「父親に連れて来られて赤ちゃんポストに入れられた」と話したため、熊本県警は保護責任者遺棄罪に当たるかどうか調査した。 2014年1月に行われた同病院の蓮田太二医師による講演によれば、2007年(平成19年)から2013年(平成25年)11月30日までに同病院が相談を受けたケースのうち特別養子縁組に至った190件中、43件が若年層の妊娠によるもので、23%の母親は15歳未満であったという。中には強姦の被害者や小学5年生の出産のケースもあったという。相談を重ねた結果、自分で育てることにしたケースが235件あり、その他も含めて453人の赤ちゃんの命が中絶などから救われた。 慈恵病院は「こうのとりのゆりかご」の活動により、公益財団法人社会貢献支援財団より平成26年度(2014年度)社会貢献者表彰「社会貢献の功績」を受けている。 「こうのとりのゆりかご」では運用開始以降2~3年おきに検証報告が行われており、2017年の報告で4回目になった。2017年9月23日に熊本市の専門部会が公表した報告書では問題点として、自宅出産の保護例の急増、「出自を知る権利」の問題などが挙げられている。自宅出産の割合は1・2回目の検証では3割弱だったが、3回目は60%、4回目は79%と大幅に増加しており、体重1500グラム以下の低体重児や母親が自らへその緒を切ったなど危険な事例もあった。 2017年の熊本市のまとめによれば「ゆりかご」運用開始以降、同年5月時点で預けられた子供130人のうち103人の実親が判明、26名が身元不明で、判明した実親は九州のみならず北海道から全国に居住していた。市専門部会の部会長である関西大学教授の山縣文治は記者会見で「子の命を守ることと出自(を知る権利)を守ることをどう両立するか、国を挙げてしっかり考えてほしい」と発言し、実名化と秘密保持を両立する方法が必要と指摘したが、慈恵病院の蓮田太二院長兼理事長は「知られるくらいなら死ぬという人が現実にいるのだから匿名性は必要」と語る。 また預けられた子供130人のうち28人と約2割が施設養育となった点も指摘された。子供の半数近い48%が養子縁組または里親家庭に託され、29%は乳児院などの施設で養育されていた。実親による引き取りも18%あったがトラブルもあり、里親が預かって2年後に児童相談所から「子供を返してほしいと実親が名乗り出た」と言われたケース、生みの親が引き取った後に支援の手が届かず母子無理心中したなど最悪の結末もあった。熊本市専門部会の報告書では、解決策としてドイツで実施されている内密出産制度に言及し「解決策として国に働き掛けるべきだ」と市に求めた。 「内密出産」も参照
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