内密出産
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/08 23:23 UTC 版)
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内密出産(ないみつしゅっさん、Confidential birth)は、母親が自身の身元を当局に開示されることなく行う出産のことである。以前は頻繁に(特に非嫡出子に対し)行われていた嬰児殺しを防止するために、内密出産は多くの国で何世紀にもわたって法制化されてきた。
内密出産においては母親の情報自己決定権が、子供の権利条約にも規定されている子供の「出自を知る権利」を保留させることになり、母親が意思を変えるか、成長のある段階になって子供が開示を要求する時点まで継続する。内密出産を超える考え方としては匿名出産があり、この場合母親は当局に全く身元情報を開示しないか、あるいは身元情報を当局が把握しても絶対に開示しないこととなる。
歴史
内密出産を定める法律の先駆けはスウェーデンに見られ、1778年に定められた嬰児殺防止法が匿名で出産できる権利と手段を認めていた。ただし1856年の法改正で匿名出産には制限が設けられ、助産師が母親の氏名を封印された封筒に保管するよう定められた。
日本国外の例
- 韓国
- 2024年7月、内密出産と同様の「保護出産」を認める特別法が施行された。困難を抱えた妊婦は、全国に16カ所ある「地域相談機関」に相談し、保護出産を選んだ場合、仮名で出産できることとなった[3]。
日本の例
- 2019年
- 2021年
- 12月、慈恵病院において、国内で初めてとなる「内密出産」で赤ちゃんが生まれた[5]。
- 2022年
- 1月4日、慈恵病院は、前年12月に出産した10代女性が退院したことを発表した[6]。
- 2月10日、熊本市長大西一史は、内密出産を控える方針を転換し、慈恵病院で内密出産した女性について、母子の支援に対する協議を始めると発表した。大西市長は、病院が「母の名前を書かずに」出生届を提出した場合、熊本地方法務局の見解を受理を判断し、現行法で解決できない問題は国に協力を求める方針を示した[7]。
- 2月14日、熊本市は、熊本地方法務局からの回答を受け、無戸籍者になる不利益を解消する人道的観点から両親が不明の棄児に準じる形で市長による職権で戸籍が作成できるよう、出生日や出生地を同市に提供するように慈恵病院に求めていくことを発表した[8]。
- 2月25日、蓮田健院長が参院予算委員会に参考人として出席。
- 5月、2例目を発表。
- 6月、3例目を発表。
- 7月、4例目を発表。
- 9月30日、厚生労働省と法務省は、「内密出産」のガイドラインを初めてまとめた[9]。
- 2024年
- 11月28日、慈恵病院は、2021年12月の初事例から3年間で計38例の出産があったと発表した[10]。
- 2025年
- 3月31日、賛育会病院(東京都墨田区)が日本では2例目となる内密出産の受け入れを開始した[11]。同病院は費用は原則、女性側に請求する方針を示した。一般的な出産費用は50万円程度とされる[12]。
- 同日、慈恵病院は、東日本在住の女性から「費用の自己負担ができない」とする相談が寄せられていたことを明らかにした。蓮田健院長は「費用が払えないために、東京での出産を諦めようとしているのであれば、その費用は慈恵病院が負担する」と女性に伝えたと述べた[12]。
脚注
- ^ Gesetz zum Ausbau der Hilfen für Schwangere und zur Regelung der vertraulichen Geburt 2014年5月1日以降から有効とするドイツ連邦共和国の官報(Bundesgesetzblatt_(Deutschland)) 発効日:28.08.2013
- ^ 渡辺冨久子「ドイツにおける秘密出産の制度化」『外国の立法』第260号、国立国会図書館、2014年6月、65-82頁、2023年3月6日閲覧。
- ^ 石原聡美 (2025年3月3日). “「知らなければ、子を殺し死んでいた」 性被害で妊娠、家族に明かせず思い詰め、たどり着いた熊本の病院で内密出産”. 共同通信. 2025年3月11日閲覧。
- ^ “「内密出産、法に触れる恐れ」 熊本市が慈恵病院に実施自粛要請 国は判断示さず”. 毎日新聞. (2020年8月24日) 2020年8月25日閲覧。
- ^ “内密である理由~ひとつだけの命の現場から~”. 熊本朝日放送. 2025年3月11日閲覧。
- ^ 国内初の内密出産か 出産の女性、手紙残し退院 翻意の可能性も:毎日新聞
- ^ 毎日新聞2022年2月10日朝刊26面
- ^ “熊本市、内密出産の子供の戸籍作成へ 国内初、慈恵病院に情報求める”. 毎日新聞 (2022年2月14日). 2022年2月16日閲覧。
- ^ “妊婦がその身元情報を医療機関の一部の者のみに明らかにして出産したときの取扱いについて (法務省民一第2000号、医政発0930第1号、子発0930第1号)”. 法務省民事局、厚生労働省医政局、厚生労働省子ども家庭局 (2022年9月30日). 2023年10月14日閲覧。
- ^ “「内密出産」、3年で38例 慈恵病院「各都道府県に施設を」訴え”. 毎日新聞 (2024年11月28日). 2025年3月11日閲覧。
- ^ “「赤ちゃんポスト」「内密出産」の受け入れ、東京・墨田の賛育会病院で開始…医療機関2例目”. 読売新聞 (2025年3月31日). 2025年4月6日閲覧。
- ^ a b “東京・賛育会病院の原則請求『内密出産』に女性が「自己負担はできない」と熊本・慈恵病院に相談「費用は慈恵病院が負担する」”. FNNプライムオンライン (2025年4月5日). 2025年4月3日閲覧。
関連項目
外部リンク
- 『内密出産』 - コトバンク
- 実親開示(英語: Adoption disclosure)
- 内密出産のページへのリンク